0025
<異世界11日目>
おはようございます。今日も一日拠点作りをします。あそこに拠点を作ると、ベテランの傭兵達が森を監視出来るようになる。そうなれば村の安全度はかなり上がるだろう。
浄化しながら考えているのだが、今日はダナが起きない。なので強力に部屋を浄化しようと思う。朝のテンションでバカみたいな事をやり始めてしまった、後の事を考えないまま……。
「チュッ! おはよう、アルド。で……この状況は?」
「おはよう、ダナ。……ちょっと綺麗にしようと思って」
「またかい!? 前にやって分かってるだろ!?」
「そうなんだけど、綺麗な方がいいからさ」
「まぁ……そうだけど……」
「そんな事より、話しておきたい事があるんだ」
「なんだい?」
話を横に逸らして、俺は拠点の事をダナに話す。拠点を作り、それをギルドの物にしてしまう事を説明。ダナも乗り気で拠点の話を進めるが、今は俺だけでやる事を納得してもらう。
「何でアルドだけでやるんだい? 他の奴等も居た方が早いし楽だろう?」
「色々と他人に見せられない技を使うんだ。【魔術】とか【念術】に【錬金術】や【練成術】は、普通の人には絶対に見せられない」
「あぁ……うん……。それは見せられないね」
どうやら納得してくれたらしい。使うかどうかは分からないのだが、他人が居ても邪魔だしね。俺の好きなように作りたい! ……という本音は言えない。
口内を浄化して服を着てから、いつものようにイチャイチャする。部屋を出て2人揃って食堂に行くと、浮かない顔の女将さんが居た。
「おはよう、トーカ。どうしたんだい?」
「おはよう、ダナさん。ウチの旦那が、ちょっとね……」
「何かあったのかい!?」
「いや……元気が無くてね……」
「あの~それって、搾り取り過ぎでは? 前に薬を買ってましたよね?」
「ま、まぁ……。そうなんだけど、ねぇ……」
「トーカ……。流石にそれは擁護出来ない……」
旦那さんは完全にダウンしたらしく、その所為で今日は宿の朝食は無しだ。でも微妙な会話はいつも通りだったな、これは無くならないらしい。なんでだろう?。
部屋で準備を整えて、リヤカーを牽いて宿を出る。まずは朝食と昼食を買いに行き、ナンサンド2つを大銅貨2枚で買う。村を出て一路拠点の場所へ。
拠点の堀に狼が落ちて死んでいたが、それを無視して拠点作りを始める。今日は壁作りからだ。昨日【落穴】で堀の内側に土を出していたので、その土を【土壁】の魔法で壁にする。
【土壁】の魔法も名前通りの魔法で、最大で縦横1メートル、厚さ1メートルの土の壁を作る魔法だ。
魔法に込める魔力量で変化するタイプの魔法だが、この系統は【土魔法】に多い。【落穴】もそうだ、
一度壁を作り、その下からもう2回魔法を使って壁を作る。これで高さ3メートル。それを二重にして厚さ2メートルの壁が出来上がる。
【変形】を使い弓を射つ為の狭間を開け、【融合】を使って【土壁】の1度目と2度目と3度目の境を無くし1つの壁にする。
その後、堀を作る時に出た石を【圧縮】して【変形】し、【融合】して壁に薄く被覆する。
石が全然足りなかったので、リヤカーを使って川と何度も往復した。その甲斐あって壁は無事に終了だ。昼食のナンサンドを食べながら、今日中に終わりそうだと喜ぶ。
食事後は門作りだ。と言っても材料はそこら中にあるので、伐り倒しながら【圧縮】と【変形】と【融合】を使って門を作っていく。木製の普通の門だが圧縮した木なので結構強固だ。
門の高さは3メートルで、門扉の厚さは10センチにして完成だ。やっと終わったと思ったら、昨日と同じく夕方だった。
帰る支度をしてリヤカーを牽いて帰ると、やはり途中で魔物に襲われる運命のようだ。急ぐとコレだな。
「シャーーーーーッ!!!」
イエローボアだ。南の大森林の奴だが、こっちに来たのか。イエローボアは淡い黄色で体長4メートル、胴の直径は10センチある大型の蛇だ。しかしコイツの最大の特徴は、
ドガッ!
この土魔法に似た能力、と言うか【魔術】だ。実はこの世界では、一部の魔物は何故か種族的に【魔術】が使える。正確には魔術に良く似たものらしいんだが……。
魔神いわく、特定のものに偏っているものであり、厳密には【魔術】とは言えないそうだ。コイツも石を飛ばすだけしか出来ない。
それでも結構な威力があり、毒を持つ為に脅威度はそれなりに高い魔物だ。
ザシュッ!!
とはいえ、この様に首を斬ってしまえばいい。身体強化をして戦えばこんなものだ。しっかし、脇差とはいえ斬れるなぁ……。
流石だな日本刀は。なんちゃって日本刀モドキだが、それでもこの切れ味だ。
感心してないで処理しよう。処理と浄化を終え帰路に着くと、今度は村へ帰る事が出来た。
解体所へ行きイエローボアを売る。登録証を渡すと、いつもの2人がやって来た。
「ふ~む、イエローボアか。これが出て来るとはな……」
「大森林から魔物が沢山来るのでしょうか?」
「それはあるまい。そもそもだ、アルドぐらいだぞ、森に頻繁に入るのはな。だから知る事が出来ている」
「知る事……」
「そうだベグ。ワシらは思っているより森の事を知らん。もしかしたら大森林の魔物がこちらの森に来る事は、よくある普通の事かもしれんのだ」
「成る程」
「意味も無く不安になる必要は無い。何より、アルドは狩っておる。それよりも、イエローボアは大銀貨5枚だ」
「そんなにですか?」
「うむ。イエローボアは確かに蛇だが、その肉は滋養強壮に富んでおるのだ。量も多く夜の事で人気のある肉でな、それでその値になる」
「成る程。その金額でお願いします」
夜の事か……宿の旦那さんに必要な肉だな。俺は神様が使う肉体なんで必要は無いし、【房中術】を使えばコントロール出来る。
ギルドへ行き、ミュウさんに登録証と木札を渡す。すると、ダナとベテラン傭兵達がこっちに来た。
「アルド、お帰り。朝の話はどんな感じだい?」
「今日で壁と門まで出来たよ」
「そこまでかい!? 凄いねぇ!」
「後は多くの人が行って、色々整備する段階だよ」
「聞いたねアンタ達、明日から拠点の整備だよ!」
「「「「「応ッ!!」」」」」
相変わらずの連帯感だ。ダナと傭兵達に現在の拠点の広さや道などの必要な事を教える。木札にメモを取ってる様だが、建物の間取りじゃなくてまずは防衛設備だろう?。
見張りの為の櫓とかの方が大事だと思う。それに村と拠点の間の安全をどう担保するんだ? そういった事の方が大事だろう。
ベテランでも危険な事に変わりは無いんだがな。まぁ……いいか。
登録証を返して貰うと新しくなっていた。どうやらランクアップして新しい物に変わったらしい。
ランク3でしかない為、そこまで嬉しいという気持ちは無い。ダナに帰る事を話しギルドを出る。
宿に帰ってリヤカーを裏庭に置かせて貰い、部屋に戻ると一息吐く。全て浄化しボーっとしていると、鉄のインゴットが目に入った。
アレも何かに使わないとなぁ……。放置しておくのは流石に勿体ない。
折角なので、小さめのフライパンと小鍋を作り、雑貨屋で買った物は分解して精錬しておいた。まだまだ余っているので小物を作る事にする。
爪切りやハサミや小さなナイフを作り、薪でお玉やフライ返しを作っていたら、時間が経っていたのかダナが部屋に来た。
「夕食だけど……何やってんだい?」
作った物を説明すると、ダナは一つ持って食堂へ行った。慌てて十手を差し追い駆ける。いつものカウンター席に行き、大銅貨2枚を支払って夕食を食べようとしたらダナが聞いてきた。
「で、これなんだい?」
「それは爪切りだよ」
「ふ~ん。……コレ便利そうだね、後で借りてもいいかい?」
「いいよ」
ダナは爪切りの使い方が直ぐに分かったらしい。この世界、爪を切るのは刃物で切る。わざわざ爪専用の刃物を作ったりはしない。
食事を終えて一緒に部屋に戻ると、ダナは爪切りを使いながら他の物も聞いてきた。俺は浄化しながら一つずつ説明するが、ダナの興味を引いたのはハサミだけだった。
まだ部屋に残っていた熟成されたワインを飲み、良い気分になったらしくそのまま押し倒してくる。
……今日も満足して眠るダナの横で、俺も浄化して寝よう。おやすみなさい。
▽▽▽▽▽
0025終了時点
金貨9枚
大銀貨10枚
銀貨15枚
大銅貨23枚
銅貨9枚
鋼の脇差
鋼の十手
鋼の槍
石斧
オーク革の鎧
革と鉄の肘防具
革と鉄の膝防具
革と鉄のブーツ