0254
昼食後、宿の庭に戻って再び訓練を始める。昼からは、魔力と闘気の循環と体操を行う。これも基本と言えるものだから、しっかりと各自の体に叩き込んでいく。重点的にやらないとな。
今回はラジオ体操ではなく、闘神にやらされた太極拳っぽい動きのものだ。戦いに必要な足運びや足捌き、体運びや体捌きなどが覚えられる。とはいえ、この体操の難易度は高い。
1つずつ動き方を教え、体重移動などが間違っていたら指摘するのを繰り返す。ウチのメンバーも初めてだからか、若干苦戦しているな。それでもダナとシュラは熟せている様だ。
体を連動させる体捌きや体重移動を以前教えたからだろう、それでも2人と然して変わらなくなってきたアルメアやディルは流石としか言い様がない。メルも上手くは出来ている。
それ以外は、まあ頑張れとしか言えない。初めての事だし、正しい動きというのは簡単じゃないからな。意識して体の各所を連動させるというのは大変で、一朝一夕に身に付くものでもない。
今日から毎日練習して、少しずつ体に覚えこませていく作業だ。自然に当たり前に出来るようになって、初めて一人前と言われる。そこから先は、それぞれの動きを使い熟す領域となっていく。
「これが、いつか自然に出来るように……なるんですね。実際にアルドさんがやっておられる以上は、出来る事なんでしょうけど……」
「これらの動きが自然に出来る……ここまでは誰でも出来るんだ。この先にある、状況によって適切な動きを選択するという事は、センスや才能が要求される事なんだよ」
「この動きを覚え自然に使う事は出来ても、一瞬で正しい行動を選択するというのは、センスや才能があっても可能な事なんだろうか?」
「出来るのでしょうね。アルドさんがそう仰るという事は、少なくとも出来る方が御一人はいらっしゃるという事です。とんでもない方だとは思いますが……」
そりゃ、闘いの神だからね。とんでもない方なのは間違いないよ。……うん。ダナは誰の事か分かったらしく、何とも言えない表情をしてる。まあ、自分の祖先と言える方でもあるからな。
「無駄口を叩かず練習に集中しろー。お前さん達はまだ、余裕を出せる程には出来てないからな。しっかり集中して、正しい動きを体に叩き込め。そうじゃないとズレたままになるぞ」
ウチのメンバーは無駄口叩かずに集中してるからな。流石にマズいと思ったのかジャンやミレイア、第三王女やオルニアも集中し始めた。よしよし、上手く集中出来ている様だな。
折角だからこの場の全員に、【心静】と【集中】を使っておく。人数が多くて大変だが、やってやれない事はない。2匹まで加わると無理だから、案外ギリギリなんだけどね。
皆は集中して訓練していて、さっきまでと違い急に静かになった。けど、代わりに上手く出来ている。それが体に叩き込まれているかは別だが、この調子だと大丈夫そうだな。
夕方まで集中したまま訓練し、時間がきたので終了とした。【神聖八重浄化】と【浄化】の権能をコッソリ使い綺麗にしたら、第三王女を連れて貴族街の門まで一緒に行く。
第三王女とオルニアと別れたら、食堂へと行き大銅貨10枚を支払い夕食を注文する。麦茶はもう無いので、浄水を飲みながら皆に今日の訓練の手応えを聞く。
「そうだねぇ……。今日の訓練は、午後からは集中して出来たんじゃないかな? でもさ、やっぱり正しい動きは大変だっていうのと、体に覚えこませるのは難しいものだよ」
「何と言うか、本当に体に叩き込めているのか、疑問を持ってしまいますね。果たして本当に身に付いているのか、イマイチ信じきれない部分はどうしてもあります」
「私は闘気の扱いが上達したわ。流石にあれだけ訓練してきたし、やっと体が闘気の扱いに慣れた感じね。闘気の量は多くはないけど、ようやく上手く使っていけそうよ」
「私は基本をゆっくりと再確認していたよ。思い出してみるとズレていたり、おかしかった部分があってね、その修正をずっとやってたんだ」
「私は体の動かし方を重点的に学んでいた。特に体捌きと足捌きに関しては、早めに身につけておかないと困ると思ってな。本当に里の教えは碌なものでは無かったと、改めて理解した」
「僕は……よく分かりません。とにかく言われた通りに、繰り返していました。朝よりも上手く出来るようになったとは思います」
「私もジャンと同じだ。よく分からないが、頑張って繰り返していた。少しは言われた通りに動けるようになったとは思う」
「成る程な。ジャンとミレイアは理解出来なくていい。どのみち、強くならないと理解出来ないものだ。俺だってそうだったからな。だから今は、覚えるだけでいい」
皆が多少でも手応えを感じているならそれでいい。何もわからないまま繰り返すのは、苦痛と混乱しか生まないからな。手応えでもあれば、やる気は出るしモチベーションも維持出来る。
それすら無いと暗闇の中みたいなものなんだ。アレは辛い。本当に何をやっているのか分からなくなる。だからこそ、分かりやすい目標が要るんだが、それが手本であり俺だ。
夕食も終わったし、そろそろ部屋に戻るか。宿の1階でジャンとミレイアと別れて、俺達は部屋へと戻る。送風機を起動すると、直ぐに2匹は送風機の前を陣取った。
カエデはともかくダリアは小さいので、送風機を広げた方が良いのかもしれない。俺はダリアが使っている送風機を【変形】で広げる。すると、風が広がるようになった。
これにダリアは大喜びし、更に送風機の前から動かなくなってしまった。ついでにカエデの方の送風機も広げておき、風が部屋に広がるようにした。これで、もう少し涼しくなるだろう。
「あの魔道具は結構涼しくなるから助かるよ。アタシは暑いのが苦手なんだ。簡単な魔道具だとは言っていたけど、何で今まで誰も作ろうとしなかったんだろうね?」
「魔道具というものが凄いものと思っているのと、作るのが簡単ではないという思い込みじゃないですか? 私は作れないので、どれほど簡単かは分かりませんが……」
「アルドに少し聞いたけど、作り方を知っていれば私でも作れるほど簡単みたい。ただ、素材を変形したりするのは無理だから、そこは大変ね」
【錬金術】や【練成術】も覚えたいなら教えるんだけど、どっちも一朝一夕どころじゃなく修行が大変だからなぁ。最初は小さな物でも苦労するし、集中が切れると失敗するんだ。
その癖、素材が魔力の所為で劣化するという面倒臭さ。素材を完璧に劣化させず【変形】させられるようになるまで、どれだけの苦労をしたか! ……思い出したくもない。
あれ? 気付いたら2匹は送風機の前で寝ていた。よっぽど涼しくて良い気分だったんだろう。俺は寝ている2匹を送風機の前から離す。その時に気付いたのだが、毛の感触が違う。
これってもしかして生え変わってる? ああ……そういう事か。【浄化】の権能を使うから、抜け毛を見る事が無いんだ。その所為で生え変わりが分からなかったんだろう。
納得しているとベッドに引きずり込まれたので【房中術】と【至天】で駄目にしておいた。綺麗に丁寧に浄化したので、そろそろ寝よう。今日も1日お疲れ様でした。
<異世界116日目>
おはようございます。昨日基本からやり直したので、今日はダンジョンで実戦です。できれば繰り返して体に覚えこませたいところだが、1度村に帰った方が良いかな?。
王女が傭兵になるし、ジャンやミレイアの事もある。お金を稼ぐなら、魔物の多い村の方が稼げるだろう。それに、気分的にも村の方が楽だと思う。
俺が想像するだけでも面倒そうな関わりとか山ほどありそうだしな。王女ともなれば仕方がないのだろうが、そういう人間関係に俺達が巻き込まれるのも御免被る。
だから、村である程度の期間は、お金稼ぎと修行をさせるべきだろう。自分一人で色々出来るようになってもらわないと困るんだよな。
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0254終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨68枚
大銀貨103枚
銀貨54枚
大銅貨235枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ