0253
訓練に戻るんだが、魔力と闘気の循環に関しては1番上手いのはダナとシュラだ。流石にこの中で1番最初から教えてるだけあって、基本部分は1番上手い。2人の次はアルメアだ。
メルはどうしても闘気の扱いが、魔力に比べて難しいようで、そこがネックとなっている。ディルは魔力も闘気も平均的なので、順当に上手くなっていってる。この調子で頑張ってくれ。
ジャンは闘気寄りの種族だが、魔力はそこまで不得意ではないのと苦手意識が無い。その為、順調に上手くなっていくだろう。ミレイアは人間なので、魔力も闘気も器用に扱っている。
第三王女の種族は知らないが、上手く循環出来ている。このまま続けていけば、皆1流に成れる素質とセンスがある。指導者の腕の見せ所だ。……オルニア、お前だけは駄目だな。
今まで熱心に練習してきたんだろうが、その事が足を引っ張っているんだ。間違いとは言えないが正しくもないやり方が、体に染み付いてしまっている。それが物凄く邪魔をしている。
しかも本人の感覚やセンスは普通と言わざるを得ない。その所為で矯正するのは大変だ。本人のやる気はあっても、簡単には切り替わらないだろうな。……うーん、困ったな……どうするか。
「とにかく、オルニアは基礎をずっと練習だな。教えられた事が染み付いている所為で、ハッキリ言って上手くなれない。ならないんじゃなくて、なれないんだ」
「前にアルドが言ってた、一定以上には上がれないって事だね。間違った方法が身についてしまったら、その後に覚えたものも間違ったものになるんだよ」
「最初が肝心なのですね? 最初が間違ってしまうと、正しい道に戻れなくなってしまう……。恐ろしい事ですね。どれだけ努力しても、間違った努力になってしまうなんて……」
「最初から……ですか。まさか基礎から間違っていると言われるとは思ってもみませんでした。私が基礎を教えてもらったのは王軍です。王軍の基礎が間違っているのでしょうか?」
「さてな。それは実際に見たり聞いたりしないと分からないが、王軍を直してやる気は無いぞ? 依頼されてもな。まぁ、王太子もライブルもそんな事は言わないだろうが」
「当然言わないだろうね。知識やコツを寄越せと言うような、恥ずかしいマネは出来ないさ。まぁ、下っ端にやらせるという方法もあるけど、こっちを敵に回したりはしないだろう」
「姉上の仰る通りでしょうね。あの王太子はそこまで愚かではないですし、ライブルも流石に止めるでしょう。アホの貴族どもは、そもそも武力を正しく理解していません」
「大事な事だが、まずは個人の技量を上げないと、軍としては強くなれない。個人の力があっての多数の強さだからな。その辺りをアホ貴族は理解してないって事だ」
「まずは個人の強さ……。その為にも、基本や基礎が大事なんですね! でも、貴族の方々はそれを理解されてないと……。それは、どうなんでしょうか?」
「どう、と言われてもなぁ……。ライブルは分かってるだろうし、おそらく軍務卿や兵務卿は理解してるんじゃないか? ただ、少数じゃ政治的に負けるから、上手くいかないんだろう」
「結局は政治が原因で国家は上手くいかないのか。戦争前にも愚かな貴族が動いていたと聞いたが、今も居るのだろうか。居るとすれば、この国は大丈夫なのか?」
「話がズレてきたんで、練習に集中し直すようにな。話しながら出来る程の余裕があるのは分かるが、綺麗に循環出来てないぞ。澱みなく綺麗に循環させろ。2匹は出来てるぞ!」
「ニャ?」 「グル?」
2匹は皆の近くで遊んでいたんだが、遊びながらも僅かな魔力と闘気を澱みなく綺麗に循環させている。俺ほどではないものの、2匹を混ぜると1番上手いのは相変わらず2匹だ。
綺麗で澱みがないという事は、それだけ安定しているという事であり、自然に出来ているという事だ。この循環が上手くなると、強化量の強弱やバランスを変えられるようになる。
筋力や耐久力を強化したまま、触覚を強化して繊細な武器使いで戦ったり。あるいは筋肉を強化したまま、視力を強化して弓を狙い射ったり。色々な事が出来るようになる。
ちなみに、視覚を強く強化すると周りがスローモーションに見えるアレが可能となる。正式名称は知らないが、ゾーンに入るとか言われるヤツだ。あれって、あんまり意味は無いんだよ。
やったら分かるんだが、あの状態で別に速く動けるワケでもないし、速く動く為には身体強化をしなきゃいけない。そこまでして戦うよりも、もっと効率のいい殺し方は沢山あるんだ。
結局、あのスローモーション的な戦いって、単なるロマン枠なんだよなぁ……。俺も知った時にはガッカリしたよ、マジで。でもなー、無駄が多すぎる事も今なら分かるんだ、悲しい事に。
アレをわざわざするぐらいなら、【空間把握】を使い熟して戦う方が遥かに優秀だ。本気で使い熟せればミリ単位で回避可能になるうえに、周囲の把握は完璧に行える。
目を閉じられるので無駄な情報を処理する必要も無くなり、集中力も長く持続させられる。効率的な戦いを可能とするが、使い熟すのが非常に難しい技でもある。修行は早々終わらない。
そんな事を皆に話して聞かせる。第三王女やオルニアが居るが、知った所で使い方も分からないだろうから問題ない。教える気も無いし、多分だけど完璧に使い熟せるのはディルだけだ。
俺以外はディルだけとか、闘気術だとダナだけとか、そういう事は今後増えると思う。高レベル以上は、才能が無いと流石に無理だ。俺が出来るのは神界で教えてもらったからに過ぎない。
当然肉体など無かったからな、逆に好き勝手出来た。下界では肉体を持つ以上、どうしても肉体に引き摺られる。これは仕方のない事でもあるんだよ。結局、才能って肉体に有るんだよな。
「さて、そろそろ昼飯の時間だ。みんな一箇所に寄ってくれ、纏めて【神聖八重浄化】で綺麗にする。……よし、これで綺麗になったろ。食堂に行こうか」
俺達はぞろぞろ連れ立って、宿の隣にある食堂へと行く。食堂の従業員に大銅貨12枚を払い注文したら、席に座って麦茶を飲む。運動の後の冷えた麦茶は、日本の夏を思い出すなあ。
「何か……アレだね? 運動した後だと美味しく感じるんだけど、アタシだけかい?」
「いえ、私も先ほど飲んだ時よりも美味しいと思いますから、ダナだけではありませんよ。何でしょうね、この変わった感じは? 不思議なんですが、安心する美味しさですね」
「沢山飲めるけど、しつこく無いからじゃない? 味が強くないからこその美味しさと言えばいいのかしらね。そういう美味しさがあるわ」
「この麦の匂い、僕はもっと強くても美味しいと思います。そういう風に作る事って出来るんですか?」
「そりゃあ、出来るがなぁ……。あんまりやると苦いだけになるから、焙煎の加減が難しい。それと、麦茶の香りは煮出す時間が長いと強く出るし、暖かい方が強く感じるんだ」
「なかなか面白い飲み物なんだね。自分の好みの味を研究しても面白いかもしれない。時間は幾らでもあるんだし、材料は大麦の種子だから安い。本当にやってみようかな……」
「姉上って急に研究し出したりしますよね。別に悪い訳ではありませんが、研究の為と称して私を巻き込んだりはしないで下さいよ?」
「それはしないさ……多分。それに、まずはアルドから学んでからだよ。特に難しい感じはしなかったけど、何かコツはあるかもしれないからね」
「食事中に飲むのも悪くはありませんね。城でも出てくるのは水か果実水くらいで、後は偶にお酒を出して頂けるんです。それが凄く楽しみで、お酒の日を心待ちにしてました」
「あんまり飲み過ぎるのは良く無いからな。酒は体に与えるダメージが大きいんで注意しないといけない。幾らドワーフの血を継いでると言っても、限度というものがある」
今の内から正しい知識を教えて牽制しておかないと、儲かったお金を全て酒に注ぎ込みかねない。……そう思うのは俺だけか? いや、ダナもシュラも微妙な顔をしている。
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0253終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨68枚
大銀貨103枚
銀貨54枚
大銅貨245枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ