0239
「しかし、むしろ危険に晒してしまうというのは、どんな方法なのだ? 普通は護衛が居れば、その分安全になると思うのだが……」
「第三王女の横にずっと引っ付いてるんだよ。御蔭で横の動きが出来なくなって、回避し難くなっていた。踏み込んで近付く時にも邪魔していたしな」
「守ろうというのは分かるんだけど、魔物に近付く度に横から邪魔してる感じさ。あれじゃあ、達人でも殺されかねないよ。それぐらい動きが制限されてたからね」
「実際に邪魔が無くなった後、一人でコボルト6体を始末していました。コボルト程度とはいえ、6体も居れば殺される確率は上がります。ですが、この子の敵ではありませんでしたね」
「上手く捌いて倒していたわね。無駄な動きもあまり無かったし、止めをキチンと刺していたわ。総じて言えば、優秀な新人傭兵というところかしら?」
そろそろ昼なので、サンドイッチを配り昼食にする。アイテムバッグをゴソゴソした時に気付いたんだが、昨日の邪生の肉を持ったままだ。折角なのでここで焼いて食べよう。
フライパンを出して直接過熱する。焼く前に餌皿に生肉を入れてやると、2匹は貪って食べている。やはり生肉への食いつきは良いな。そろそろ塩と胡椒モドキを振って焼くか。
ジュージューという音と、凄く食欲をそそる香りが部屋中に広がる。窓は開けてあるので篭ったりはしない。焼けた肉から皿に盛っていくが、この場に居る全員が食べたい様だ。
第三王女と王太子は既に食べてるな。色々な香辛料を出しておいたからか、勝手に振って食べている。まぁ、好きにしてくれて構わないんだが……ドンドン焼くかね。
「何の肉かは知りませんが、とても美味しいお肉ですね。今までに食べた事の無い味です。皆さんはこんなに美味しいお肉を普段から食べているんですか?」
「肉は小角鹿とスマッシュボーアの邪生の肉だ。邪生の肉はなかなか手に入らないが、スマッシュボーアの肉は割と食べている。後は熊系の肉が多いかな?」
「「「「「邪生の肉……」」」」」
「ん? 邪生の肉だと何かあるのか? キチンと浄化してあるから問題なく食べられるぞ? それに、邪生の肉を浄化する程度、呪いを浄化するより遥かに簡単だ」
「そういえば、アルド殿は【神聖八重浄化】が使えるのでしたな。アレを使えば何の問題も無くなるのは当然ですか……。しかし、邪生の肉というのは美味い物ですなぁ」
「邪生の肉と聞いて身構えてしまったが、食べられるように出来るなら普通の肉より美味いのだな。邪生の肉は流石に城では出ないからな、良い経験をさせてもらった」
「元々スマッシュボーアの肉は高級品なんだよ。……普段から食べてるとありがたみが無くなってしまうのは、しょうがないんだろうねぇ……」
「イエローボアだって狩って食べてますし、レッドパンサーもソードグリズリーも普通に食べますしね。普通ってなんでしたっけ?」
「ルーデル村では近くで普通に出てくる魔物でも、なかなか食べる事は出来なかった筈なんだけれど……。何時の間にか、普通に食べている自分が居るわね」
「主様が狩ってきて、普通に料理してしまうからね。骨から美味しいエキスを出したスープとか、ダンジョンの中の海の物を焼いたのとか。私達、色々な物を食べてるよ」
「私は海の物を食べた事は無いが、アルドが用意している物は塩からして違うのは分かる。他にも、解体にわざわざ【錬金魔法】や【練成魔法】を使っているのも」
折角なら美味い物が食べたいだけだよ。それはいいんだが、近衛の2人が一心不乱に食べてるな。特に偉そうに喚いていたバカの方。子爵家とか言ってた方が、貪るように食ってるぞ。
貴族の家でも邪生の肉が出る事は無いんだろうな。わざわざ浄化するのに金が掛かるし、俺と同じレベルまで浄化するのは不可能だ。それに、邪生が暴れてないから肉の質も良い。
結局、全部の肉が食いつくされた。俺は途中から青豆食べながら焼いてたよ。食べたのは小さいステーキ1枚だけだった。とはいえ、王太子もライブルもそこまでは食べていない。
食べたのは主に女性陣だ。それも王女と護衛2人が猛烈な勢いで食べていた。正直何があそこまで駆り立てるのか分からない、そう思うぐらいに貪っていたなー。……俺達の前で。
「とても美味しかったです! お肉はあまり好きではないのですが、このお肉は何度も食べたくなるぐらいでした。ここまで美味しいと思ったのは、初めての事です」
「もしかしたら、肉類の栄養が足りてなかったのかもな。足りない栄養が含まれている物を食べると、美味しく感じる事があるらしいし」
「ほう。足りない物を補う為に体が美味しいと感じるようになるのか……。何故か美味しく感じるという事があれば、食べておいた方が良いのだな」
「昼食も終わったし、もう一度ダンジョンに行くか。ジャンの練習も殆ど出来てないし、魔法の練習もさせないといけないしな。これからは浄化魔法も教えていくから、気合い入れろよ」
「はい! 頑張ります! 【清潔】の魔法は使えるようになりましたけど、アレは初歩の浄化魔法だそうですし、まだまだ先は長そうです……」
「初歩を正しく使い熟すというのは、結構重要なんだけどな。それが出来てない奴は神殿にゴロゴロ居るぞ? 基本を十分に練習せず、先に進むからそうなるんだ」
「神殿か……。君が【神聖八重浄化】を使える事を喜んでいる一派と、敵視している一派があるらしい。王都の大神殿長は喜んでいるらしいが、神官長が敵視しているそうだ」
「神殿自体、どうでもいいな。そもそも、今の神官連中は完全に修行不足だ。せめて、【聖浄四重浄化】や【聖潔】ぐらいは使えなきゃ駄目だろ。余りに程度が低すぎる」
「アルドが言うには、使うのと使い熟すのは同じじゃないってさ。だからこそ、せめて使うぐらいは出来なきゃ駄目なんだろうね。アタシも修行中だけど大変だよ」
「申し訳ない!! もう一度、もう一度だけチャンスを頂きたい! この通りっ、お願いしますっ!!」
話の最中、急に第五騎士団の女騎士が頭を下げて頼んできた。何か事情でもあるのか? ……とはいえ、また邪魔されると、今度こそ第三王女の命が危ないんだが……。
「何だ、急に? チャンスって言われてもな……。お前さんが理解してるかどうかは別にして、自分の下らんプライドで王族の命を危険に晒した事実は重いぞ?」
「それは……その為にも、もう一度だけチャンスを下さいっ! お願いします!!」
「ふむ……。ライブル、この者はどうなのだ? 本人か? それとも周囲か? 事と次第によっては、もう一度だけチャンスを与えなくもない」
「この者の場合は子爵家の当主、つまりこの者の父親が問題でございます。それと、この者は当主に盲目的に従う者でございましたので、機密に触れさせる訳には参りませぬ」
「うーん……。この子はそういう風に育てられたという事かい? 昔からそうやって育てられて、送り込まれる女は居るからね。他家に嫁がされる貴族の女は、大抵そうだったよ」
「適当な者との縁を欲したのか、近衛に送り込んできましたので第五行きとしたのです。近衛にとって必要なのは実力と国への忠誠であって、自家の利益ではありませぬ」
「私は……その為に父上に……。私は子供の頃から姫騎士様に憧れて育ち、いつか自分もそうなってみせると……。そうやって子供の頃から家で修練し、他家の者にも教えを乞い……なのに……」
「子供の頃から適当な事を教えられてきたんだな。ハッキリ言えば、まともな戦い方を何一つ学んでないんじゃないかと思ったぐらいだ。それぐらい酷い」
「私がやってきた事はいったい……。貴族には貴族の剣術があると、傭兵のような野蛮なものではないと教えられ……」
「ふむ。妹を危険な目に遭わせたのだから、本来実家に戻すか刑罰を与えるべきなのだが……。リンデ、どうするんだい?」
「私が決めてよろしいのでしたら、もう一度だけチャンスを与えても良いと思います。この者は、それでも他の護衛よりはマシでしたので……」
これがマシって、第五騎士団ってどんだけ酷いんだよ……。そりゃ王太子は険しい顔をするし、ライブルは頭を抱えるよ。
▽▽▽▽▽
0239終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨68枚
大銀貨104枚
銀貨56枚
大銅貨309枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ