0233
昼食後、再び中庭に行き練習を始める。王都からの使者は急いで来たらしく、一眠りしてから来るそうだ。おそらく夕方頃に来るだろうという事なので、練習を再開する事にした。
「ほらほら、昼食を挟んだらズレてるぞ。食事をとったのはいいが、緊張感が薄れてる。集中して、魔力と闘気を感じるところからやり直せ! 駄目なら最初からだ」
「最初から……これが魔力で、これが闘気。そして、これを小さく僅かな量だけ動かす。ゆっくり循環させながら、体を動かして……」
「少しずつ着実に、焦らず丁寧に。ゆっくりでいいから、確実に途切れる事なく動かし続ける。……あーっ、失敗したーっ! くぅ、なんで上手くいかないのよ!?」
昼食を挟んでるから気が抜けているのは仕方がないんだが、それにしても集中力が戻ってないな、5人組は。ディルとジャンがちゃんと集中出来ている以上は、単なる甘えでしかないんだが。
とはいえ、自分も経験があるから何とも言い辛い部分ではあるんだよなー。1度落ちた集中力って、なかなか戻ってきてくれない。どうしても、集中できなくて腹立たしいからなぁ。
「あーっ! 上手くいかないーっ! なんでこんなに集中できないのよ。ここまで出来ないものなの!?」
「エルは五月蝿いですよ、少し静かにして下さい。……ゆっくり集中して、全身に循環させて」
「サリーは上手くいってるみたいだね。アタイは焦らず集中力が戻ってくるまでゆっくりする事にしたよ。最初の循環だけをやってた方が、まだ練習になりそうだし」
「そうですね。上手く集中できているのは、ルタとサリーだけです。私も集中力が戻ってこなくて、午前中のように上手く身体強化ができません」
「喋ってる暇があるなら、やれる事をやれ。無理して集中しようとすると、余計に上手くいかないという事もあるからなー」
とにかく時間が経てば集中力も戻ってくるだろう。魔力と闘気を感じて動かす。これだけでもキチンとした練習だ。今やらせているのは複数の事を1度にやらせる事なんだが、だからなかなか上手くいかないのだろう。
1つずつ体に覚えこませていくのも、正しいやり方と言えるんだけどな。とはいえ、結局正しいやり方で練習している以上は、無駄な練習などは無い。だから出来る練習を少しずつやればいいだけだ。
俺はズレたり間違ったりしている部分を指摘しながら、皆の練習の監督をする。ある程度の時間が経ち全員が集中して練習していると、部屋に居た筈の皆がやってきた。
「ジャンもディルもなかなか上手くできてるようだね。アルド、アタシ達も同じ練習をしたいんだけど構わないかい? どうにも闘気術が上手くいかなくてさ」
「別に構わないよ。皆もまだ完全に身体強化を使い熟せてる訳じゃないし、前にも言ったけどこれが基本だ。これが自在に出来てからじゃないと、魔法も闘気術も上手くならない」
「【聖潔】や【聖浄四重浄化】の練習をしていたんですけど、やっぱり上手くいかないんですよね。基本が上手く出来てないからだと思って、こっちに来たんですよ」
「どのみち、上手く出来ているかどうかをアルドに確認してもらわないと、私達だと分からないのよ。私は【微風】で練習していたけど、1人じゃどうにもならなくて……」
「私もさ。どうにも魔力が乱れるというか、【清潔】や【清浄】の魔法と違って上手く魔力が制御出来ないんだ。だからこそ、基本が足りてないんじゃないかと思ったんだけどね」
「色々な技や魔法を覚えて使えるようになっても、基本の練習は何度もやり直す事になるんだ。色んな事をしていると、基本がブレてきたりするのはしょうがない」
これから何度も基本に立ち戻る事になる以上は、自分のズレを修正出来るように教えておくべきだな。とはいえ、この辺も感覚的な部分が大きいから、なかなか大変なんだけども。
しかし10人以上となると狭いな……。中庭というか裏庭というか、この場所で雨の入ってこない場所は広くない。皆が集まると本当にギリギリの広さしかないから、ぶつかりそうだ。
それでも集中して練習できているのは、慣れてきたからか。ダナ、シュラ、メル、アルメア。この4人の身体強化は殆ど問題は無い。後は細かい部分を練り上げるしかない。
まぁ、練り上げるのに長い時間が掛かるんだが……。何度も繰り返し練習して、目の前の見本と比べて違う所を修正していく。そうやって少しずつ練磨していくレベルに入っている。
2匹も同じ領域に居るので、4人もようやく2匹と変わらないレベルになったという事だ。感慨深いと言うか、これからが長いんだと言うべきか。基本が終わっただけだしなぁ。
基本が終わっても、直ぐに応用にいく訳じゃない。次の基本である感覚強化を覚えないといけないが、これはそんなに苦労をしないだろう。基本の大元である身体強化が出来ていれば簡単だ。
4人とも感覚強化も既に練磨するレベルなので、本当に基本を終えたと言える。それでも上手くいっていないのは、多分慣れていないからだろう。それと、ちょっと飽きたんだろうな。
「皆は特に問題ない。それぞれの技や魔法の練習をする段階だから、ここでするといい。繰り返しの練習はどうしても飽きてくるからな」
「あらら……。やっぱりアルドにはバレてたか。アタシ達だけで練習してても、楽しくないんだよ。一緒に居たいっていうのもあるし、見ててほしいって思うのさ」
「まあ、上手くいっていないというのも、事実としてあるんですけどね。それ以上に味気ないというか、気合いが入らないというか……」
「コツも教えてほしいし、間違っているなら指摘してほしいのよね。せっかく一緒に居るのに、教えてもらえないのも悲しいわ」
「集中してやっていても上手くいかないし、魔力の消費が大きいから大変なんだ。その辺りのコツを教えてほしいんだけど……」
アルメアの質問を切っ掛けにして、皆が質問をしてくる。何だかんだと上手くいっていなかった理由があったので、コツというか改善方法を教えておく。
皆にとっては初めての技であったり魔力の消費量であったりするようで、大きな魔力や闘気を扱った事が殆ど無いようだ。結局は練習して慣れるぐらいしか方法は無い。
ただし、コツなどは多少あるので、それを幾つか教えておいた。
ダナは【気配察知】と【気配消失】を練習している。【気配察知】は問題ないが【気配消失】が難しいらしい。
自分の気配は掴めているが、気配を消していく感覚が分かり辛いんだそうだ。そこは繰り返しの練習と、自分の気配の細かい所まで把握すればいい。
シュラとアルメアは【浄炎】と【聖浄四重浄化】を主に練習している。2人とも邪生の心臓の御蔭で魔力量は大丈夫なんだが、制御が上手くいっていない。とはいえ、これは仕方がない。
魔力は食べて増えたものの、制御は当然だが技術だ。練習しないと上手くならない分野なんだからしょうがない。2人にも説明したが、繰り返し練習をしていくだけだ。
まずは魔力の制御そのものを練習して、その後に魔法の練習という形にする。身体強化の時には魔力と闘気の複合だったが、魔力のみの制御に慣れればいい。直ぐに慣れるだろう。
メルの場合は同時展開の制御だが、これは本当に繰り返し練習する以外に無い。それ以外に上達する方法が一切無いのでどうしようもない。そんな顔をされても、コツは無いんだよ。
皆の練習の指導をしていると、夕方になっていたので宿の部屋に戻った。皆を浄化した後で、少しゆっくり話をする。練習の手応えを聞いておいて、間違っていたら指摘しておこう。
「今日の練習はどうだった? 自分なりに上手くなったとか、ここが駄目だったとかあるかな?」
「アタシは、アルドから聞いたコツの御蔭で、多少は気配というものが分かるようになったよ。最後の方は少しだけど、気配を薄く出来るようになったしね」
「私は魔力の制御でしたが、今日は特に上手くなった感じはありませんね。魔力のみの制御は難しくないんですが、どうしても魔力消費の多い魔法は制御が難しいです」
そこはなぁ……繰り返して慣れるしかない部分だ。もっと魔力消費の多い魔法もあるんだから、頑張ってほしい。
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0233終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
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銀貨66枚
大銅貨97枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ