0228
皆はお腹いっぱいでゆっくりしているので、俺はジャンの武具作りをする。まずはフォレストベアの皮を革に変えて、革鎧を作ろうと思う。俺達の物と同じ形の物なので、もう慣れたものだ。
さっさと作り、前側と背中側の表面にフォレストベアの骨を被覆する。ジャンに着てもらい調整したら完成なので、そのまま着せておく。次は剣帯だが、これは簡単なので直ぐに終わった。
その後、ウィンドディアーの骨を芯に使って角を被覆したグラディウスを作り交換しておく。余ったフォレストベアの骨で十手を作り、余ったウィンドディアーの骨と角でダガーを作り渡しておく。これで装備は完成だ。
新しい武具だからかジャンのニヤニヤが凄い事になってるな。まだ休憩中だから好きなだけ喜んでるといい。装備が整った以上、これから使い熟す為の練習がずっと続くからなー。
「それにしても、ジャンは筋が良いんじゃないかい? 魔力や闘気はまだまだだけど、あれは一朝一夕には身につかないからね。そこを無視すると結構優秀だと思うよ」
「確かにセンスは感じますね。本能で正しい戦い方を理解していると言いますか、選び取っているようです。ある程度戦えるようになったら、身体強化ですか?」
「そうだな。今日1日戦わせたら、明日は身体強化の訓練をさせる事になる。どっちかじゃなくて、両方というか全部させる事になるだろう」
「全部……かしら? 魔力と闘気と浄化魔法というところね。大変だろうけど、新人の頃から正しい知識と技術を学べたら、いったいどうなるのか楽しみだわ」
「せめて竜殺しぐらいには成ってほしいね。そこまでいけば、アルドが教えた意味もあるってものだろう? もしくはダンジョン踏破もいいかもしれない」
「ダンジョン踏破……。ああ、浄化魔法を教わるからか。ダンジョンの魔物は浄化されると弱くなるから、浄化魔法を使える者は有利に戦える」
「そうなんですか? ダンジョンは浄化魔法を使えた方がいいのか。……って、浄化魔法って魔法の中でも特に難しいんじゃありませんでしたか!?」
「それは、そう言われてるだけだな。それぞれの魔法に個性があるから、一概にどれが難しいとは言えないんだよ。全部同じぐらいだと思ってればいいさ」
休憩も終えてそろそろ出発するか。流石にこれ以上進むと身体強化が出来ないジャンでは、今日中に村に帰れなくなる。なので昼からは来た道を戻る事になった。どうせ魔物は出てくる。
「左後方からレッドパンサー1頭、これはジャンが戦え。右前方からスマッシュボーアが3頭、これは皆で対処してくれ」
「「「「「「了解」」」」」」 「ニャ」 「ガウ」
俺はジャンのサポートをするんだが、速さもあり力強さもあるレッドパンサーは大変だぞ? ウィンドディアーのように角だけじゃない。爪で斬り裂いてきたり、押し倒して噛み付いてきたりする。
そういう意味では非常に厄介だと言えるだろう。ウィンドディアーよりも弱いと言われているが、俺は然程変わらないと思う。人によってはレッドパンサーの方が強いと感じるだろう。どちらも強い事に変わりは無い。
やはり及び腰になるか……。特に噛み付きが怖い様だが、そこはチャンスでもある。首を差し出してくれてるんだ、槍じゃなく短い物で対処しろ。そうそう、ダガーでいいんだ。
左手に十手は持ってないが、ダガーを持ってカウンターを狙うつもりだ。レッドパンサーもそれを察したのか、慎重に動いている。唸っているだけで、ジャンの方に踏み込んで来ない。
逆にジャンは少しずつレッドパンサーに、にじり寄ってるぐらいだ。レッドパンサーの方が気圧されてい……動いた! レッドパンサーが一気に迫って噛み付……決まったな。寸前で避けて、下から首に刺し込んだ。
綺麗に入ったからな、あれはもう終わりだ。内側から浄化しているので、邪生になる事もない。……良し、死んだな。スマッシュボーアも含めて、全て処理したら収納して帰り道を進む。
途中で穴を掘ったら要らないゴミを捨てて、【粉砕】したら埋めておく。そのまま帰り道を進んでいると、邪生を発見した。どうしたもんかな……まあ喋らないように言い含めておくか。
「左前方からスマッシュボーアの邪生が来る、皆は手を出さないでくれ」
「「「「「「了解」」」」」」 「ニャ」 「ガウ」
俺は邪生に対して【浄化】の権能を使って安らかに送った。ジャンにはいきなり倒れたようにしか見えなかったのだろう、若干パニックになっている。宥めて落ち着かせる。
その後、心臓を取り出し3分の一ずつディルとジャンに食べさせる。ジャンは相当嫌がったが、無理矢理に捻じ込んで食べさせた。残りの3分の一を7等分して分ける。
ジャンの魔力も闘気も結構増えている。どうやら不老長寿でなくとも効果はあるようだ。ただし、どこまでの効果があるかは分からない。それは、これからジャンを見ていくしかないな。
皆は邪生の心臓の効果と、それを黙っておかないと家族に何があるか分からないと脅している。脅すと言うか、バレたら必ずそうなるだろう。全貴族から狙われると思えば分かりやすい。
そういう風に説明したら顔が真っ青になっていた。とはいえ、間違いじゃないんだよなぁ。ゆっくりと丁寧に解説してやったら正しく理解できたらしく、絶対に喋らないと言っていた。
なので、さっき食べた分で魔力と闘気がそれなりに増えている事も教えておいた。事実だと思ったんだろう唖然としている。そんな事でもなければ、邪生の心臓を生で食べたりしない。
帰り道でそんな話をしながら歩く。結局その後は魔物が出てくる事もなく、キャンプ地まで戻れた。少し休憩してから村へと帰り、門番に登録証を見せて中へと入る。
夕方前だがそれなりに客の居る解体所へ行くと、ベグさんとジャロムさんがやってきた。アイテムバッグから獲物を取り出して、ジャンの物と俺達の物で分けておく。
「こちらはレッドパンサーですね。今は安くなっているので、大銀貨10枚というところです」
「だ、大銀貨……しかも10枚……」
「こっちはアースゴブリン4、フォレストベア、スマッシュボーアが3とその邪生。全部で金貨2枚と大銀貨13枚と大銅貨12枚だ」
「それでいいよ」
解体所の受付で登録証を返してもらい、木札と売却金を貰う。未だに呆然としているジャンを正気に戻し、お金を6等分する。俺は大銀貨13枚と大銅貨12枚だった。
傭兵ギルドに行く前に、ジャンは実家に行ってお金を渡しておく様だ。俺達もついて行くが、妙な奴に奪われない為の護衛でもある。ジャンが母親にお金を渡したので、ギルドへ行く。
中に入ったら、ミュウさんのところの列に並ぶ。流石に喧嘩を売ってくるバカは居なくなった様だ。鬱陶しい奴の相手なんて誰もしたくはないからな。おっと……俺達の順番が来た。
「登録証をお預かりします。……新人の子に何て事をさせるんですか。レッドパンサーって……」
「ミュウ。アタシやアルドがサポートしてるんだ、死なせる訳がない。それぐらいミュウだって分かってるだろうに」
「それは、そうですが……。新人が戦っていい相手ではないですし、勘違い……は、ありませんね」
「無いですね。そんな事をしようものなら、私達がジャンをボッコボコにして身の程を教えてあげるだけですよ」
「言いたい事は分かるけれど、それは言っては駄目よ? ジャンの顔が青くなってるわ」
「新人に正しい知識と技術を教えたら、どこまで優秀な傭兵になるのか。そういう実験をしていると思えばいいのさ」
「実際に、今日フォレストベアとウィンドディアーとレッドパンサーをソロで狩っている。私達が戦闘中にアドバイスしたり1対1で戦えるようにしたが、実力で倒している事は事実だ」
「それは、それは。普通に優秀な新人ですね。皆さんが目をかけるだけの理由があるという事ですか……」
運が良いとか悪いとか、才能が有るとか無いとか。そんな事は関係なく、最初から優秀な傭兵にするつもりだよ。じゃないと、いちいちこんな事はしないさ。
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0228終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨68枚
大銀貨107枚
銀貨66枚
大銅貨124枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ