0227
ジャンのニヤニヤは未だ続いている。良い装備が手に入れば喜ぶのは当然だが、自分の手で倒した魔物から作られた装備である事も大きいんだと思う。そろそろ気を引き締めろよー。
あーあー、ディルに頭を叩かれたか……。ちゃんと前を向いて歩かないと、いきなり奇襲を受けたりするんだからな。皆も気持ちは分かるので、注意し辛い部分はある様だ。
皆も昔を思い出しているらしく、微妙な表情をしている者も居れば、微笑ましいものを見るような者もいる。ちなみに微妙な表情はダナで、微笑ましい顔なのはメルだ。
他の皆は少し目を逸らしているくらいだ。懐かしいが、恥ずかしいので思い出したくないというところか。色々あったんだろうし、ここは黙っていた方が良いだろう。
「左からフォレストベアが2頭、右前方からアースゴブリン4体。メルはフォレストベアを抑えて、ジャンは1頭ずつ戦え。残りは速攻!」
「「「「「「了解」」」」」」 「ニャー」 「ガウッ」
メルが2頭のフォレストベアを抑えている間にアースゴブリンを始末する。……とは言っても、圧倒的な速さで殲滅されたので既に終わっている。メルは1頭離したいのだが、難しいかもしれない。
2頭のフォレストベアが思ってるよりも上手く連携していて、1頭だけを切り離す事が出来ないみたいだ。仕方なく1頭に近付いたら、腕を振ってきたので掴んでジャンの方向に投げ捨てる。
コソっと【念動】を使ったので、意外と簡単に投げ飛ばす事が出来た。ジャンは装備があるからか張り切って戦闘を始めるが、今までと違うパワーと威圧感に直ぐに及び腰になった。
ソードグリズリーとは違うが、それでも熊タイプの魔物なので、腕を振る度に”ゴウッ!”という音がする。今までもそうだがビビッていても殺されるだけなので、動くしかない。
「でやぁーっ!!」
そうそう、何度も言うが動かないと何も始まらない。踏み込めていないので攻撃は効いちゃいないが、攻撃する事が重要だ。よく見て隙を狙い、踏み込んで攻撃するんだぞ。……そこだ!。
「グルルァーッ!!」 「五月蝿いっ!!」
メルから引き継いだもう1頭のフォレストベアが鬱陶しいので、蹴りを喰らわせて悶絶させておいた。身体強化を使用して、衝撃が体内に残るように蹴ればいい。内臓に衝撃を受けて大変だな。
これに懲りたら大人しくしておけよ、いちいち面倒臭い事をしやがって。結局はジャンの為の教材でしかないんだ。大人しくしていれば殺される出番はやってくるから、黙ってろ。
ジャンの方は大きなダメージを与えられず四苦八苦している。唯でさえ熊の皮膚は硬いのに毛も堅い為、滑ってしまい上手く斬れない。その為、浅い傷にしかならないんだ。
後ろ足を攻撃する事は難しく、前足を攻撃しても大したダメージにならない。皆もアドバイスしているが、焦ってもしょうがない。少しずつ着実に傷を与え続けていけば勝てる。
大事なのは逸らない忍耐力だ。こういう戦いは初めてかもしれないが、経験しておくべき戦いでもある。自分が失敗すれば死ぬという綱渡りのような戦いは、集中力が要求される。
これ、慣れていないと非常に失敗しやすい。なので、このタイミングでジャンに経験させられたのはラッキーだった。……どうやら右前足が使えなくなったらしい。
もうちょっとだ、焦るなよ。良しっ、体重を乗せて首を突き刺した! 後は、待っていれば死ぬだろう。流石に1頭で集中力が切れたようなので、こっちの奴は始末しておくか。
さっさと首を落とし処理を始め、収納する頃にはジャンが倒したフォレストベアも死亡していた。浄化した後で血抜き等の処理を行ったら解体していく。解体が終わったら、武器の作成に入る。
今回作るのは槍だ。そろそろ剣だけではなく、長物の使い方も学ばせたいと思う。断面が菱形の素槍にするのだが、芯を骨で作り牙を被覆する形になる。穂先の長さは40センチ。
柄は直径5センチで長さ160センチ。全体では丁度2メートルの槍となる。石突は球形の物を取り付けて完成だ。
ジャンに渡して振ったり突いたりと、色々試させる。ある程度、体力も精神力も回復したらしい。
「これが槍ですか? 突くのは分かるんですが、叩いたりして壊れたりしませんか?」
「そうそう簡単に壊れたりはしないさ。槍とはいえ、使い方は様々だ。棒のように使ったり、穂先を剣のように使ったりな。重要なのは扱い方と長さを生かす戦い方の2つだ」
ジャンに色々言っても覚えられないだろう。だから2つだけに絞り、突き方と叩き方を教えておいた。槍と剣が使えるようになれば、当面はその2つの練習をさせればいい。
長柄の槍と近接の剣。この2つを使い分けて戦えるようになると、格段に戦いが楽になる。近付くと危険な魔物もいるので、リーチがある武器は持っておいた方が良い。
だが、懐に入り込まれると長柄の武器は一気に不利になってしまう。その為、剣の使い方も覚えておく必要がある。最終的にはジャンの戦い方を、近接は短剣、中距離は剣、遠距離は槍にする予定だ。
そんな事を槍を振っているジャンに伝えておく。本人は槍を振るのに夢中っぽいので、半分も聞いてないだろうが構わない。俺も将来の話をしているだけだしな。さて、進んで行くか。
またジャンはディルに頭を叩かれていたが、今は周りを警戒している。流石にさっきのフォレストベアとの戦いもあり、気を抜くと死ぬと理解してきた様だ。まずは警戒する事を覚えさせる。
最後には警戒しながら半分リラックス出来るようにするのだが、今はこれで十分だ。未だ新人だという事を忘れちゃいけない。あー……、コレは大丈夫かな? まぁ、やらせてみるか。
「前方からウィンドディアーが1頭来る。ジャンは1対1で戦闘、残りはサポート!」
「「「「「「了解」」」」」」 「ニャー」 「グルッ」
ウィンドディアーは一気にジャンに突進してきた。この中でジャンが1番弱い事を理解してるんだろう。ジャンは槍を構えて牽制している。ウィンドディアーは足がとても速く、角がナイフのように鋭利だ。
これの直撃を受ければ、ほぼ間違いなく死ぬ。今までは、そこまで早く動く相手とは戦わせていない。ただし、今回は明らかに敵の方が速いので、これをどう凌ぐかに掛かっている。
槍に拘ると死にかねないぞ? 突進してきた時が最大のチャンスだと、ちゃんと気付けよ? 相手が速い場合はカウンターを狙うしかないからな。そこに気付けば十分合格だ。
おっ! 槍を捨てたな。使い慣れてないからか? それとも理解したからか? ……ああ、ちゃんと気付いてる。ジャンはこういうセンスはあるんだよな。結構、不思議なんだけど。
何と言うか、正解を選ぶ感覚というかセンスがあるんだ。不思議と最適解を選ぶんだよな。まあ、選べても実力がなくちゃ勝てないんだけど、選べてる時点で優秀なのは間違いない。
おっと、予想外に早く勝ったな。ウィンドディアーの振り向き様に、剣を首に叩きつけたか。ウィンドディアーの方もジャンを舐めてたのか、ジャンの近くで振り向こうとしてたから上手くいった。
敵の失敗でも勝ちは勝ちだ。浄化して処理し解体したら、昼食にする。今いる場所は見晴らしが良く、不意打ちを受け難い場所なのでゆっくりできる。皆に伝えて昼食の用意をしよう。
焼き場と焼き網を【土魔法】で作り、解体した時にでた内臓を2匹の餌皿に出す。2匹が内臓を貪ってる横で、鍋に浄水を入れ骨から出汁を【抽出】してスープを作る。
前に買っていた野菜類も全部入れて煮込んでしまう。浄化しているのでお腹を壊す事はないが、早めに食べてしまわないとな。硬パンを柔らかくして、肉を用意したら昼食の完成だ。
いつも通り肉を焼きながらの昼食だが、皆慣れたものでドンドン焼きながら食べていく。俺の横でジャンも焼いているが、生焼けだったり焦がしたりと必死に肉を焼いている。
こういう食事の仕方は初めてらしく、ちょっと楽しそうだ。香辛料も豊富にあるので好きに使って食べるといい。2匹はおかわりか? 分かった、分かった。
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0227終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨68枚
大銀貨94枚
銀貨66枚
大銅貨112枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ