0225
「ところで、そこの少年はいったいどうしたんですか? 確か、傭兵登録したばかりの新人だったと思うのですが……」
「ああ。ジャンはシュラに弟子入りしようとしたんだけど、流石にシュラに弟子入りもおかしいんで俺の弟子にしたんだよ」
「弟子ですか……別に悪い訳ではありませんが、よく弟子にする気になりましたね。傭兵の知識や経験は財産とも言えるので、普通は教えたりしませんよ」
「そんな事言ってるから、いつまで経っても大した実力の無い奴等ばっかりなんじゃないか? 伸びる奴は伸びるし、伸びない奴は伸びないぞ?」
ギルドがどういう風に傭兵を教育しているか知らないが、秘匿したところで強くならないし意味は無いと思うんだがな。結果的に誰もが同じものを学んでいくので、時間の無駄だろうに。
それなら基本はギルドが教えて、後は個人に任せるという形の方が死亡率は減るだろう。大半の傭兵は、新人時代に全てが決まってしまうと言っても過言じゃない。
新人時代に基本が学べなかった奴は、結局上に行ける程の技術が身につかない。理由は基本が碌に無いからだ。基本が碌に出来ないから、その後の応用も碌に出来ない。
だから、大した事のない実力しか持てないんだ。基本は歳をとってから学ぶのは難しい。何故なら正しくない技術が身についた後では、それが邪魔して正しい技術が身につかないからだ。
つまり、正しい基本は若い時に身につけておく必要がある。そんな事をギルド内でゆっくり丁寧に話していく。周りの傭兵連中も、心当たりがあるのか神妙な顔で聞いていた。
「基本を若い時に身につけないと、頑張っても大成しないという事ですか……。言いたい事は分かりますが、ベテランが新人に教えるでしょうか?」
「さあ? コイツ等は俺の弟子なんだぜ! ……と言いたい連中は教えるんじゃないかと思う。風の月にあったのは新人へのシゴキであって、殆ど指導じゃなかったしな」
「アレは昔からそういうものです。……ベテランを1人常駐させて、学びたい者に教えるというぐらいしか無理ですね。予算的にも人員的にもその程度しか出来ません」
「別にいいんじゃないか? いきなり変えるのも難しいし、効果が出ないと認めない奴は多そうだ。それに、こういう取り組みは効果が見え難いものでもある。仕方がないさ」
「それでも死亡率の低下と間引きが上手くいくなら、やる価値はあると思うんだけどね。アタシがギルドマスターの時は、その事で散々悩んだもんさ」
そんな話をした後にギルドを出て宿に戻る。宿に戻り女将さんに1人部屋を10日借りる事を伝え、銀貨1枚と大銅貨10枚を支払う。もう夕方なので部屋に戻って装備を外した。
ジャンも今頃は部屋に戻って一息吐いている頃だろう。皆を浄化したら、十手を持ち食堂へと下りる。ジャンは既にカウンター席に座って待っていたが、5人組と話している。
「不老長寿の皆さんに弟子入りをしたんですか!? 良く許されましたね。怒らせると怖い方々ですが、大丈夫ですか?」
「怒らせる事をする訳がありません。僕は教えて頂くんですから、余計な事はしませんよ。それに、皆さん特に怒ったりしない方だと思うんですが、何をしたんですか?」
「「「「「………」」」」」
「そこに居るルタは伯爵家のお嬢様なんだが、貴族の汚い部分を押し付けてきたんで俺達が怒ったんだよ。散々俺達をコケにしてくれたんでな?」
「それは怒って当然だと思いますけど……。僕は元々サングの町の出身ですが、あそこの子爵様は本当に酷かったんです。皆が恨んでましたし憎んでました」
「「「「「………」」」」」
「まぁ、何も言えなくて当然だな。本来、子爵がバカな事をしているのを調べて罰を与えなきゃいけない伯爵家が、何にもしてなかったし。ま、今さら言ってもしょうがないが……」
俺は目の前の従業員に大銅貨9枚を支払い、夕食を注文して待つ。5人組は暇なのか先程の会話にもめげずに話しかけてくる。そうしていると、女将さんが夕食を運んできた。
「あれ? 新しい子をチームに入れたのかい? ……あぁ、さっきの1人部屋はこの子の部屋なんだね。それにしても、ダナさん達は許可したんだね。驚きだよ」
「まぁ、アタシ達には長い時間があるからねぇ。それに、ずっと一緒って訳でもないさ。多分、長くても1年程度じゃないかい?」
「そうだな。ある程度の戦いの技術と身体強化を使い熟す事。それと【神聖八重浄化】が無理でも、【聖浄四重浄化】は使えるようになってもらう」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
「ジャンはともかく何で5人組が驚くんだよ、お前さん達は関係ないだろうに……。ジャンは闘気寄りの種族だが、魔力関係も鍛えて【浄化魔法】を教える。これは最初から決めていた事だ」
「が、頑張ります……」
「大変ですけど、私や姉上ほどではありませんよ。私と姉上が目指しているのは【神聖八重浄化】を使い熟す事ですからね!」
「ああ。そこまで使えるようにならないと、母を超えた事にならないからね。とはいえ、まずは【浄炎】を使い熟す事から始めないといけないし、【聖潔】も覚えないと……」
「私は初級魔法を使い熟す事を目指しているけれど、まずは7個同時展開を完全に制御できるようにならないといけないのよね……」
「アタシは【気配察知】や【気配消失】に【無音動作】という【闘気術】を鍛錬してるけど、大変なんてもんじゃないよ。アルドは当然のように使い熟してるけど、本当に難しいんだ」
「私は身体強化と感覚強化が先だ。感覚強化を使う【暗視】などを使えるようにならないと、先には進めない。しかし、思っていたより遥かに大変だ」
今日は夕食を食べている間も普通の話だったので良かった。……そう思っていた時期が俺にもありました! いつも通りアクロバティックに猥談になったんで逃げたよ。
なんでこう毎回毎回と思うが、彼女達のストレス解消法なんだろうか? 分からないが、ジャンも逃げられた筈だ。俺が席を立った時に、同じように席を立って部屋に避難していた。
5人組は普通に会話に参加してたな。女性は問題ないんだろうが、男にとっては生々し過ぎて聞いていられないんだよなー。よくもまあ、あそこまで赤裸々に話すもんだと思うよ。
部屋に戻ってダリアとカエデを浄化したら、一緒に遊んでやる。最近使ってなかったボールを出すと、テンションが上がったのか興奮しだした。はいはい、落ち着いて遊ぼうな。
ボールを転がすと猫パンチで弾いてくるので、その繰り返しで遊ぶ。2匹とも不思議と飽きずに楽しそうにしているが、構ってもらえて嬉しいのか、純粋に楽しいのか……。
そんな事を考えながら遊んでいると、一足先にディルが部屋に帰ってきて参加し始めた。2匹も更に気合いを入れて弾き返しているが、競技じゃないんだからさぁ……。
「何だか本気でやり合ってる気がするんだけど、あれは良いのかい? ……あの調子じゃあ、止められそうにないか」
「そうなんだよ。何故か矢鱈に真剣にやりあうんだよなー。そんなもんじゃないし、唯の遊びなんだけど」
「2匹は思いっきり体を動かしたい……いや、それなら狩りの時に思い切り体を動かす筈です。何が2匹の琴線に触れたんでしょうね?」
「別に放っておいて良いんじゃないかしら? 単に今は楽しいってだけかもしれないし、いつかは飽きると思うわ」
「2匹は楽しそうだから、野暮な事は言わなくてもいいさ。それよりも、2匹もディルも極僅かに身体強化をしてるよね? あれってそういう練習でもあるのかな」
「本当だね。言われるまで気付かなかったよ。それにしても、2匹の身体強化は綺麗だねぇ。ディルのはブレるけど、2匹の身体強化は全くブレてない」
「2匹は日頃から身体強化の練習はしてるから、あれぐらいは出来て当然なんだよ。皆もあれぐらいは出来るようになってほしいんだが……」
いきなり出来る訳じゃない。だからこそ、普段の生活で練習するんだよ。
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0225終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨68枚
大銀貨94枚
銀貨66枚
大銅貨121枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ




