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0021




 5人組は縮こまっているが、ダナは淡々と一つずつ確認していく。5人組の中で騎士の子だけが、顔を上げてダナの方をしっかり見ている。



 「で、アンタ達はお金が無くて飛び出したって事かい?」


 「はい。仰る通りです」


 「は~~……。伯爵家のお嬢さんが危ない事すんじゃないよ」


 「確かに危険ですが、私達としても無策ではありませんでした」


 「それで助けて貰ってりゃ、世話ないんだよ! いい加減にしな!」



 まぁ、ダナの言う事が正論だよなぁ……。お金は少ないが直ぐに生活できなくなる訳じゃない。彼女達もそれなりにお金を貯めてるみたいだし。あれ? 何故こんな危険な事をしたんだ?。



 「……で? 本当の所はどうなんだい?」


 「………あ、あの! アタイの武器が昨日壊れて、それで……」


 「なるほど……新人にとって武器は死活問題だからねぇ。しかしお嬢さん、借りを作りたくないからって危険な事するんじゃないよ」


 「私は一人の傭兵であって、伯爵家の娘ではありません!」


 「そういう事は一人前になってから言いな! アンタが死んだら皆に余計な迷惑が掛かるんだよ。分かってるんだろ!?」


 「それは……」


 「傭兵になるな、とは言わない。だけどね、貴族出身でも優秀な傭兵は居るんだ。そう成ろうとしな」


 「はい……分かりました」



 これでお説教は終わりの様だ。後に響く様な説教をして萎縮させても仕方がないしなぁ。そんな事を考えていたら、魔法使いの子が妙な事を言い出した。



 「じゃあー、アルドさんに教えて貰おうよ」


 「あ、それイイね。アタイは身体強化を教えて欲しい」


 「私は浄化魔法を」


 「アンタ達……自分に合った仲間と居な! 寄生すんじゃないよ!」


 「教えて貰うだけです!」


 「夜は教えてあげますよー? 私サキュバス族なので。イイ男なのもわかってますしー」



 サキュバス族ねぇ……。この世界に居たんだな、初めて見た。魔法使いの子だが、ちょこちょこ俺の方をじっと見てたのは何か種族固有能力で調べてたのか。



 「色仕掛けは止めときな。そういう話は一気に広まる。当人が口を噤んでいてもね」


 「でも、付き合ってる女性は居ませんよねー?」



 何かさっきから妙な方向に話が進んでるぞ? 俺にまで飛び火してきた。……ここは正しい対処をするべき所だ、流石に間違ったりはしない。



 「いや、彼女はいるよ?」


 「あれー? 居るんですかー? ……ホントに?」



 随分失礼な子だな? まぁ元の世界ではモテなかったが。ただ……こうなると名前を聞かなかったのは正解だった。煩わしくならないように、あえて聞かなかったんだよな。


 しかし、この子かなりアレな性格してるぞ。他の子は違うが、この子は他人を利用するタイプだ。面倒な子だな……。


 そう思った俺は、横に居るダナの肩を抱き寄せてハッキリと言い切った。



 「ここに居るだろう? ”俺の女”が」



 そう言った瞬間、時間が止まった。ダナでさえ固まってしまっている。周りを見ると、数人の傭兵も受付嬢も5人組も固まっていた。……俺、何か変な事言ったか?。


 ちょっと困った。こういう空気は作る側じゃなかったんだ、どうして良いかが分からない。内心焦っているとダナが再起動してくれて助かった。



 「ぅ///ぇ//ぁ///。な、何を言い出すんだい急に!?」


 「何って、ただの事実? 毎日一緒に寝てるだろう?」


 「~~っ!!////」



 ダナは意外に初心なんだが、そういう所が可愛いんだ。前もって覚悟を決めていたから出来たが、普通には無理だなコレ。俺はそういうキャラじゃない。


 絶対あとで思い出して悶絶する。とにかく今は澄ました顔で居よう。ようやく周りも再起動したらしく、一斉に俺をジト目で見てくる。すると魔法使いの子が口を開いたのだが……。



 「はぁ………。ギルドマスターが相手では勝てませんね。流石にコレは予想できません」



 ……この子キャラ作ってたのか!? あっぶねぇ、コレが”サキュバス”か! ホントに厄介な子だ! 俺が内心で慄いているとダナが話を打ち切ってくれた。



 「ゴホンッ! ……取りあえずコレで終わりだよ。受付で登録証受け取ってきな!」


 「え、あ……はい!」



 5人組が受付に行くのを見送り、俺もミュウさんの所へ行く。ミュウさんはジト目を向けながら、登録証と銀貨3枚を渡してくれた。どうやら手続きはもう終わっていたらしい。


 5人組を残し宿に帰ろうと振り向くと、ダナが居て突然キスされた。結構長めでディープだったが全て受け入れる。ダナは唇を離すと、一言。



 「覚悟しておきな! 今夜は寝かさないよ!」



 そう言って5人組の方へ行った。その姿を見送ってからギルドを出て体と服を【乾燥】させる。雨は上がり、夕日が水溜りに反射している景色の中、ゆっくりと宿に戻った。



 「お帰り、お客さん。助ける事はできたのかい?」


 「ただいま。無事に助けられたよ」


 「そうかい、良かった……。ダナさんから女の子達だと聞いててね、心配してたんだよ」


 「昨日メンバーの武器が壊れたらしくて、それで無理をしたらしい」


 「それで……。本当に無事で良かったよ」



 そんな話しの後、女将さんから鍵を受け取り部屋へ戻った。部屋に着き浄化を済ませ、夕食まで武具の手入れをしながらゆっくりする。


 防具に傷は無いが革なので多少の手入れが要るが、それでも多少で済むのは【浄化】の権能の御蔭だ。


 ふと、ダナは新人に俺が作った武器を貸し出す、と言っていた事を思い出した。あの戦士は昨日武器が壊れたと言っていたが、知らなかったのか? 後でダナに聞いとこう。


 手入れを終えてボーっとしていると、女将さんが夕食が出来た事を伝えに来た。とにかく食事に行こうと部屋を出て食堂へ行くと、既にダナが来ていたのでダナの横のいつもの席に座る。


 2人分の大銅貨2枚を払い、一緒に食事をする。ダナは今日もワインの小樽を持って来ていたが後で飲むらしい。楽しく食事を終え部屋に戻って直ぐ、【熟成】を頼まれた。


 椅子に座りワインを【熟成】すると、ダナは機嫌良く飲みながら話しを始めた。



 「アルド、今日は本当にご苦労だったね」


 「大変だったけど、助けられて良かったよ」


 「あのチームに武器の貸し出しの事が伝わってなかったようなんだ」


 「なるほど、それで無茶したのか……」


 「あの5人組にアルドの作った武器を見せたんだよ。そしたら最初は落胆してたくせに、良い物だと分かった途端手の平返して喜んでねぇ」


 「ふ~ん。まぁ喜んでたなら、作った甲斐はあったよ」


 「でもねアルド、何か農具と農具っぽいのとあったんだけど?」


 「俺の故郷では、農具で戦う事も戦い方もあったんだよ」


 「農具の戦い”方”?」


 「穴を掘って塹壕を作ったり、スコップで接近戦をしたりね」


 「スコップ? あの幅が広いのはスコップと言うんだね」



 この世界スコップが無いのか。そういえば、鍬や鎌は村人が持ってたのを見た事があるが、スコップは見なかったな。それに備中鍬なんかも見てない。


 いつの時代から在るのか知らないが、人力の農具なら作っても問題ないだろう。流石に神様も怒るまい。



 「ところで塹壕ってなんだい?」



 やっぱり食いつくか……。仕方がないので説明するが、銃火器の部分は弓やスリングで説明する。



 「へぇー。アルドの故郷にはそんな戦い方があったんだね」


 「まぁ色々とね。石なら安くて済むから、よく使われるんだよ」


 「お金が掛からない、良い武器ってないかい?」


 「安いなら杖か棒。刃の部分が欲しいなら槍か矛だな」


 「長柄の武器……。リーチがあった方が新人は安全か」


 「安全だし、穂先が欠けても棒の様に使えるからなぁ」



 ダナは随分と悩んでいるみたいだ。ギルマスをやってるんだ、若い連中に死んで欲しくはないんだろう。それに辞めるつもりだから、何か残したいのかもしれない。


 ダナは木のコップに残っていたワインを一気に飲み干した。それで心を切り替えたのか、俺の腕を取ってベッドへ誘う。


 今夜は寝かさないと言っていたが、俺は肉体的に問題なくてもダナは明日辛いだろう。そう思い、大満足させた後に【房中術】を利用して、気絶するように眠らせておいた。


 俺も寝よう。今日も一日濃い日だったな。おやすみなさい。



 ▽▽▽▽▽


 0021終了時点


 金貨6枚

 大銀貨6枚

 銀貨13枚

 大銅貨7枚

 銅貨9枚


 鋼の短刀

 鋼の鉈

 鋼の槍

 オーク革の鎧

 革と鉄の肘防具

 革と鉄の膝防具

 革と鉄のブーツ


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