0216
領主館を案内されて通された部屋は結構な大部屋で、王族兄妹とライブルに辺境伯が居た。それと部屋の隅に昨日渡したインゴットが積まれているんだが、もしかして……。
「呼び出して申し訳ないわね。実は王太子殿下より、アナタが色々な物を作れるとお聞きしたのよ。それで、様々な物を作ってもらおうかと思って」
「ふーん。つまり何か、土砂降りで足止め喰ったから見世物にして楽しむって事か? 人を呼び出して、こんな下らん事をさせるって事は、お前相当俺の事舐めてるよな?」
俺は魔力と闘気と念力を込めて、ピンポイントに殺気と殺意をこのアホに叩き込む。アホの辺境伯は、あっと言う間に顔面蒼白と失禁のコンボに見舞われた。頭が悪い奴だな、全く。
「ぁ……ぅ……ぇ………」
「だから私が言ったでしょうに……。貴族という者を何とも思っていない人達に下らない事をすれば、殺されるに決まっているでしょう」
「王女殿下。まだ死んでおりませんぞ。一応このまま殺されずに済む可能性もありますので、殺される事が決まったような言い方は良くないかと」
「まぁ、そうなのだが……。それ以前に、私も下らない事はせぬようにと言ったのだがな。我が国の建国よりも古くから生きておられる方も居るのだ、敬意を払って当然であろうに」
「アルドさんも前に仰っていましたが、仕事ならば仕事として依頼しなければいけません。呼びつけて”やれ”では筋が通らないのです」
「傭兵は依頼を請けてから仕事をするものだからな。何より傭兵は自由民だ。貴族は傭兵に命令する権利を有していない。出来る者は、精々ヴェスティオンの総長ぐらいだろう」
そろそろ面倒になってきたので威圧を解除する。途端に激しく呼吸をして、顔色がマシになってきた。威圧の最中は呼吸がし辛かったのか、顔色が悪かったからな。どうでもいい事だが。
「ゲホッ! ……ゴホッ! ……ハーッ、ハーッ。酷い目に遭ったわ。筋を通さなかった私が悪いとはいえ、ここまでするのかしら?」
「ん? そんなに殺されたかったのか? ……なら今すぐにころ」
「いえ! これでいいわ! 死にたくなんてないわよっ! なんなのよ、本当に。面倒なら殺すって、いきなり過ぎるでしょう。もうちょっと途中に色々あるでしょうに」
「命があれば、際限なく調子に乗るんだよ貴族って奴はさ。反省するのは僅かな奴だし、まともな奴も僅かだ。誰かさんは貴族をブタと言っていたが、その誰かさんもブタだろ?」
「………」
「最初に会った時に、巷の噂では女傑と言われてるけど、クソ貴族と変わらないって教えてやったのにねぇ。クソ貴族らしく反省もしなかったのかい」
「反省できるなら、クソ貴族ではありませんよ。そんな当たり前の事も分からないから、クズだのゴミだの言われるんです」
「何と言うか、哀れになってくるわね。クズな貴族を見下していたけれど、結局貴女も同じ穴の狢だったのですから」
「こういう者も同じさ。私は650年の人生において、こういう奴を何人も見てきた。頭が悪いのはお前もだ! と何回も思った記憶があるね」
「アルドが前に言っていたな。クズが居たら良く見て、そうならない為の見本にしろと。貴女は見本にする事は出来なかったのだろう」
「さて、辺境伯も理解出来たであろうから横に置いておくとして、少し小耳に挟んだのだが良い農具が作れると聞いた。それは正しい情報なのだろうか?」
王太子が話を変えたんで、辺境伯はメイドに連れられて服を着替える様だ。今の内にコソっと浄化して綺麗にしておこう。臭いのは嫌だし、放置したって誰も得をしないからな。
「石と木で作った農具の事なら、作ったのは俺だな。刃先だけが鉄の農具が多いそうなんだが、アレは壊れやすいから使い難いんだ。その所為で農作業が捗らない」
「石と木なのに捗るのですか? 刃先だけが鉄の物よりは、頑丈なんだとは思いますが……」
「刃先だけだと土を掘って返す際に、受ける部分の木が割れたりするんだよ。土って言ったってそれなりには重いからな。俺が作ったのは、受ける部分も石で被覆してあるんだ」
「それと、アルドは【錬金魔法】や【練成魔法】で作るの。それらの魔法で強力に圧縮してあるから、非常に頑丈なのよ。荒い使い方をしても、まず壊れないわ」
「それに、あの農具で魔物と戦う事も十分出来るだろうね。主様は石と木で新人用の武器を作ってるんだが、それらと本質的には変わらない物だよ」
「石と木で作った武器というのは役に立つんですか? あまり役に立ちそうに思えないのですが……」
「元ギルドマスターのアタシからすれば、あれほどありがたい物もないよ。新人はお金も碌に持ってないし、武器が壊れたら狩りも出来やしないんだ」
「アルドの作った石と木の武器は、青銅の武器より頑丈で錆びないのです。だからこそ、新人にとっては頼りになる武器であり安いので、助かる者が多いのですよ」
「また話が飛んでるぞ。農具の事を聞いてきたって事は、何がしかの農具を作る依頼って事だと思うんだが……それって王太子がする依頼なのか?」
「国内の政治関係ですな。農務卿は王太子殿下に従う方でしてな、この方に少し功を与えたいと思っておられるのです。我が国としても農業は重要ですので……」
「農務卿は幼馴染なのだ。父親の前農務卿の後を継いでまだ2年しか経っていないのだが、目立った功が無いと陰口を叩かれていてな。真面目なだけに何とかしてやりたい」
「農務卿はまともなんだな。それは良かった。あまりにも馬鹿馬鹿しい貴族が多かったんで、この国にはまともな貴族は殆ど居ないんじゃないかと思ってたよ」
「そのように言われるという事は、まともな貴族も居たという事ですか。参考までに聞くのですが、まともな貴族と言うのは、どこの貴族ですかな?」
「北の侯爵家の当主はまともな貴族だったな。妹の方はちょっとアレだったが……。総じてそこまで悪い訳では無かったと思う。妹の方は叔父に騙されていただけだったしな」
「ふむ……。ライブルの実家か。北の侯爵は優秀な人物として知られているからな、それは分かるのだが……。まさか実際に会っているとは思わなかった」
「ゴホンッ! ……兄の話は横に置きまして、何か農業に役立つ事はありませんか? 我が国としても、小麦や大麦の量が増える事は好ましい事なのですが……」
「さっきも言ったが、単純に良い農具に替えるだけでも効率が良くなる。効率が良くなれば、1人が受け持てる田畑の面積も増える。まずはそこからじゃないか?」
話をしている最中に部屋の扉が開き、辺境伯が入って来た。タダでは転ばないつもりなのか、やたらゴージャスなドレスを着てやって来たな。何を考えているんだか……。
「ただいま戻りました。……何でしょうか? そのように見られずとも、流石にもう馬鹿な事は致しませんわ」
「……とりあえず、その効率の良い農具とやらを作って貰う事は可能か? それと石と木の農具という物も見てみたいのだが……」
「まぁ、構わない。採ってくれば済むし、雨が降ってるとはいえ大した手間じゃない。少し行って戻ってくる。折角だから、そこにある銅と錫も使うから置いといてくれ」
俺は領主館を出た後、隠密の3つの技と身体強化を使い一気に外に出た。森の中に入り石を集めて【融合】して【圧縮】する。十分な石を集めたら、次は木を伐る。
王角竜の伐採斧を使い、一撃で木を伐り倒していく。枝と皮を【分離】して【圧縮】してから【変形】し丸太の形にしていく。こちらも十分な量を確保したので、さっさと領都に帰ろう。
相変わらず雨足は強く、叩きつけるように降っている。帰る途中で邪生のビッグディアーを発見したので、浄化して安らかに送ったら処理と解体と【熟成】を済ませておく。心臓は後回しだな。
再び帰り道を急ぎ、領主館までの全てを無視して進む。玄関前で隠密の3つの技を解除したら中に入れて貰う。【乾燥】を使い服などを乾かしたら、皆が居る部屋へと戻った。
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0216終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨70枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨204枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ