0208
「まぁ、貴族がクソなのは横に置いておこう。20人以上の斥候を潰したが、まだ斥候潰しを続けるのか? それとも別の仕事か? 決まってないなら斥候潰しを続けるが……」
「そう……だな。明日ファルートを出発して、昼前には敵軍にぶつかる事になるのだが、我が軍の近くを警戒出来るだろうか?」
「軍が通る道ってどうなってるんだ? 俺達は森の中を移動し続けていたんで、森の中にある道を一度も見ていないんだ」
「それはそれで、とんでもない事をしているのだけれど……アナタは自覚が無さそうね?」
「自覚以前に、アルドさん達はソードグリズリーが群れていても、簡単に倒してしまうくらいですから。森の中を進んでいても、平地を進むような感覚なんでしょう」
「ソードグリズリーの群れ……。流石にそれは、ちょっと……」
「別に嘘でもなんでもないさ。そもそもアタシ等の鎧は王角竜の革鎧だし、アルメアのは大飛竜の革鎧だ。王角竜や大飛竜に比べれば、大した相手じゃないね」
「お、王角竜に大飛竜……。アナタ達、滅茶苦茶過ぎるわよ……。そもそも全員が不老長寿のチームなんて、もっと有名じゃなければ、おかしいでしょうに」
「私達は名前を売る気など無いのですよ。さっきの話にもあったクソ貴族が面倒なので。有名になるという事はクズが群れて押し寄せるという事です」
「何か話がズレてるんだが? 俺が聞こうとした道の話がどっかへ飛んでったな……」
「ああ、御免なさいね。道は森の中にあって、西から東へと続いているわ。北と南は深い森で見通しが悪く奇襲を受けやすい。蛇行した道が帝国の辺境伯の領都まで続いているのよ」
「ふーん……。という事は、2チームに分かれて軍について行くのが1番良いか。どちらかが俺で、もう片方がそれ以外の全員だな。それで警戒は十分出来る筈だ」
「私とディルで警戒すれば多分大丈夫だとは思うけど、場合によっては警戒している事が向こうにバレそうだ。軍の移動について行く形だから、バレても問題は無いけどね」
「うむ。軍が奇襲を受けなければ十分だ。結局のところ、奇襲を受けて敗れるというのが敗北の大きな理由になっているからな。我が国も帝国も、それは変わらない」
その後、必要な事を2つ3つ話してから、大金貨3枚を受け取った。領主館を後にした俺達は、領都の外に出て傭兵達が固まっている場所に行く。装備が違うので分かりやすい。
邪魔にならない所に土のカマクラを作ると、もう夕日が出ていた。丁度良いので焼き場と焼き網を作ってから、身体強化をして近くの森へと入る。獲物を探しているとビッグディアーを発見した。
2頭居たので首を落とし、血抜きなどの処理を行う。浄化と解体を済ませてアイテムバッグに収納したら、カマクラに戻って料理をしよう。……と、その前に肉類の【熟成】をしておく。
骨で出汁をとったら野菜を投入。肉をある程度の大きさに切り分けたら、綺麗に浄化してスープと野菜と共に煮込む。一部の肉は焼き場で焼いて食べる用に切っておく。
皆が集まってきた時に丁度煮込み終わったので、硬パンに水分を【合成】して柔らかくしたら食事を始める。今日は鹿だが、なかなか良い味が出ていて美味い。鹿肉も悪くないな。
「鹿肉は普通あっさりしているものだけど、今日の鹿肉はなんだか味が濃いね。御蔭で凄く美味しいよ」
「そうですね。アルドはビッグディアーだと言ってましたが、こんなに美味しいお肉でしたっけ? なんかもっと大雑把な味だった気がするんですが……」
「ビッグディアーは小角鹿や槍鹿と比べても、肉が多いだけで美味しくないと言われてるわね。ウィンドディアーなんかとは比べものにならない程、美味しくない筈よ」
「私は何度も食べた事があるけど、こんなに美味しくはないよ。投石リスなんかのリス肉に比べたらマシだけど、美味しい肉ではないね」
「ビッグディアーの肉は、よく食べていた筈なんだが……私が食べていたものとは全く違うな。肉の見た目と味が記憶と合わないので、なんだか不思議な感じだ」
「素早く血抜きした後に浄化したり熟成したりと、色々しているからな。それだけしているのに美味しくなってなかったら詐欺だよ」
「アタシ達は美味しいものが食べられるから何でも良いんだけどね。色々普通じゃない事をしているのは知ってるけど、ここまで変わるんだから毎回驚きさ」
「本当にそうだよ。主様はあのリス肉ですら、美味しい肉に変えてしまうからね。私達からすればあり得ない事をやっているんだけど、あんまり理解されてないみたいだ」
そう言われてもな。美味い方が良いから、美味くなるようにしてるだけだ。それに殺して直ぐに血抜きをしてるが、【錬金術】や【練成術】でやってるんだ。
あれ以上に綺麗に血を抜くなんて地球でも無理だ。そのうえ臭くならないように【浄化】の権能も直ぐに使ってる。美味しくなるというより、マズくならないようにしてるんだよな。
獲物を倒して直ぐにそこまでしなきゃ、美味しい肉は手に入らないとも言える。美味しい肉一つ手に入れるだけでも大変なんだが、そういう部分はいちいち言わない。説明も面倒だしな。
「皆さんの食べている料理、とても美味しそうですね?」
「またアンタかい? いったいどうしたんだい、こんなところまでゾロゾロ連れて来て。流石に周りの迷惑は考えな」
「申し訳ありません。実はライブルと共に来るつもりだったのですが、途中で王太子殿下との明日の打ち合わせが始まりまして……」
「代わりに面倒な者どもを連れて来る事になったという事ですか……。前に連れていた近衛はどうしたんです。あの者どもであれば、そんなバカな事はしないのですがね?」
「お嬢ちゃん達が睨んでいても、何の意味も無いのだけれど……そんな事も分からないのかしら? そもそも威圧にもなってないわね」
「「「「「!!!」」」」」
近衛の護衛どもが剣に手を掛けたので、即座に殺気と殺意を乗せた威圧を叩き込む。当然だが魔力と闘気と念力を込めたものだ。危うく気絶させるところだったが、上手くいった。
弱めから始めたにも関わらず、気絶するところだった。幾らなんでも弱過ぎるだろう! ……っと、ここで怒ると気絶させてしまうかもしれない。ちゃんと制御しないとな。
第三王女は、顔面蒼白と失禁のコンボを喰らってる近衛を見て微妙な表情をしてる。自分が喰らった時の事を思い出したのかもしれない。でも、若干嬉しそうなのは何故だろうな?。
「とりあえず、食うならこの余っている椀を使えばいい。王女が食う分で、丁度スープは空になったな」
「頂きます。それにしても、良い香りがしますね。サンドイッチだけだったので助かります」
「兵士の食事と同じだというのは前に聞いたが、大丈夫なのか兵士は? そんな食事で満足に戦えるのか疑問なんだが……」
「そんなものだと思うよ。昔から兵士がとるのは簡易な食事ばかりだ。戦場で煮炊きする訳にもいかないさ、そんな事をしていたら輜重がいくらあっても足りないよ」
「それは諜報とか斥候の連中であって、軍全体じゃないと思うんだが……。軍なら煮炊きしても……って、もしかして燃料の問題か?」
「えっ……当然そうだよ? 兵士が適当に伐り倒して薪にする訳にもいかないさ。伐って直ぐの薪なんて、碌に使えやしないからね」
「まぁ、それはそうだが……。つまり、直ぐに食べられる食事が軍の基本なのか。暖かい食事をとらないと力が出ないんだが、それが当たり前になってしまってるんだなぁ」
「言いたい事は分かるけど、2000人分の燃料だからね。それだけで莫大な金額が掛かってくる。流石に国としては、そこまでの金額は出せないよ」
「成る程。仕方がない事か……。思っている程に食事が悪い訳じゃなかったんだな」
日本の古い合戦だと戦場で煮炊きしてたんで、この世界もそうだと思ってた。興味が無かったんで調べなかったし、傭兵は煮炊きしてたんだよ。自分の金でやってただけか……。
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0208終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨17枚
金貨70枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨236枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ