0207
「薄い肉って貧乏臭くてどうなのかと思ってたけど、野菜を巻いたり出来て色々面白いね。それに焼きながら食べるのも初めてだよ」
「この焼きながら食べるって良いですね。焼けたお肉に、香辛料を掛けて食べるのが堪りません」
「塩が振ってあるだけだから、後で色んな香辛料を振り掛けても邪魔しないのね」
「シンプルだから、好きに味を変えて食べられるんだね。私は柑橘類の皮かな? これが気に入ったよ。さっぱりして美味しい」
「私はなんでもいい。香辛料を使える事なんて滅多になかったから、何を食べても美味しいんだ」
「本人の好きに食べればいいさ。色んな味を楽しんでもいいし、自分の好きな味をずーっと楽しんでもいい」
焼いた肉を2匹にあげながら、硬パンを柔らかくして食べたりして過ごした。昼食後、浄水を飲みながら奪った食料を浄化する。徹底的に綺麗にする事で、安全な食べ物にしておく。
浄化が終わったら、領都ファルートに帰る事を伝える。食料を売る為の交渉もあるのだが、それ以上に依頼された仕事の報告をしなければいけない。
皆も異論は無いようなので、一度帰る事にする。洞窟の場所は、国境線付近の建設現場と、領都ファルートの中間辺りに位置している。よって、帰るのも多少の時間が掛かるが仕方ない。
それでも身体強化をした俺達だと、普通よりも早く戻る事が可能だ。更に森の移動に慣れてきたのか、当初よりも皆の速度は上がっている。小一時間もあれば領都に戻れる程だ。
領都の入り口で登録証を見せて領都の中に入り、真っ直ぐ領主の館へと進む。領都の外に軍が居たので、明日出発するのだろう。兵にも休息は必要だからな。
領主館の門番に話そうと思ったら、俺達を門前払いにした奴だった。俺達の顔を見た途端に舌打ちしやがったので、「それも報告しておいてやる」と言うと顔を真っ青にしている。
どうして根性も無いのにイキがるのか理解出来ない。バカが中に連絡をしたらしく、門が開いたら中に年配の人が居た。俺達を丁寧に案内するのでバカの顔が土気色に変わっているが、心底どうでもいい。
中に案内されて中庭に通されると、辺境伯と王族兄妹がお茶をしていた。いや、チャノキは無いんだがティータイムを……って一緒か。……まぁ、お茶をしているで良いか。
「君達が来るという事は、昨日の今日で何かあったのかな?」
「色々な事があったんで、報告する為に戻ってきたんだよ」
「色々な事……ね。アナタ達が有能なのは王太子殿下からお聞きしているけれど、早々に何かあったとは思えないわよ?」
「とにかく、怠慢だった人は黙ってくれるか? まずはな、ここから国境線までの道の半ばの所に洞窟があった」
「た、怠慢ですって……。洞窟? そんな所に洞窟なんてあったかしら?」
「いえ。私どもの調べでは見つかっておりません」
「……だ、そうだけれど?」
「あのな、アンタ等が信じるかどうかに関係なく、洞窟はあるんだよ。アンタ等が信じなきゃ洞窟が無くなるとでも言うのか?」
「そ、それは……」
「話を続けてくれ」
「ああ。その洞窟は斥候が20人以上居る拠点だった。俺達は、気絶させては手枷と足枷を嵌めて捕縛しながら進んでいったんだが、最奥では6人ほど居て、この魔道具で警戒していたんだ」
俺は奴等から奪った、バランスボールの大きさの地球儀みたいな魔道具を取り出す。流石に大きかったのか、ライブルと年配の人がそれぞれの前に出て守りの姿勢を見せる。
「それはいったい何だ? 先程、魔道具と言っていたが……」
「この魔道具な、どうやら気配を見る為の魔道具らしいんだ。その所為でこっちの位置がずっと敵にバレていたんだよ」
「何と!? 仮に君の言う通りなら、とんでもなく希少な魔道具だぞ! 何故そんな物を前線の斥候が持っていたのだろうな?」
「さて、そこまでは俺達にも分からないな。もしかしたら、帝国では複製を作れたのかもしれない。作れるのなら、前線で実験させる事も考えられるが……」
「うーむ……。確かにそうだな。作り出せるのならば、今度は使い方を見つける段階だと言えるか……」
皆はライブルや年配の人に魔道具の使い方を教えている。あの魔道具、使用者が触れている間しか表示してくれないんだよな。神様がワザとそういう風に作ったんだろうけど。
「話を続ける。洞窟で一泊した俺達は、再び森に斥候潰しに出た。そこで挙動不審な3人を見つけて、捕縛してから拷問を行い始末した」
「あっさりと拷問や始末という言葉を使うのね……。いえ、やったんでしょうけれど」
「その3人は帝国の貴族に依頼を強制されたうえ、戦場でシモの世話をさせられた挙句、ケツを掘られた3人だった」
「……何を考えているのだ帝国の貴族は。あろうことか戦場に来てまでする事か?」
「その3人はキレて貴族を殺害した後、アイテムバッグを奪って逃走していた。その為に挙動不審だったんだ。で、そのアイテムバッグに入っていた手紙がこれだ」
「これは……。成る程、迂闊に出す訳にもいかない面倒な手紙という事か。それにしても内務卿は碌な事をしないな。処刑が決まって幽閉されていて良かったよ」
「その後、魔物に追い駆けられている傭兵2人組の来た方向が気になって調べると、国境線付近に砦を建設している現場があった」
「は? 砦……ですかな? そんなものを建設しているのに見付けられていないとは、諜報の者達は何をやっているのか……」
「まぁ、深い森だから見通しも悪いし、帝国もかなり警戒しているだろうしねぇ。アタシ達も進軍させている軍そのものが、砦建設の為の囮かもしれないと思った程さ」
「それで、建設現場にあった建物の一つが食料庫だったんで、中身を奪ってきたんだ。辺境伯か王太子か、どちらかに買ってほしい」
「軍の食料もいるので購入するのは構わないのだが、どれぐらいあるのだ? それと、食料なんて簡単に奪える物なのか……?」
俺は中庭に奪ってきた食料を全て出した。結構な量があるので、この場に居る全員が驚いている。小麦が300キロぐらいと、野菜が50キロぐらいあるから仕方がないとは思うが。
正直に言うとアイテムバッグの邪魔物になってるんで、早めに無くしたいんだよ。荷物ばっかり持っていてもしょうがないからさ。特に敵国の食料だから、腹に入れば分からないし。
「私どもが購入して、軍に供与という形が良いのではないでしょうか? 彼等も手続きで時間が掛かるでしょうから」
「ふむ。そうしてくれると助かる。ライブル、軍の輜重はどうなっている?」
「ハッ! 軍の輜重隊は滞りなく、本日中に積み込みを終わらせております」
「準備は既に終わっているか……。それでは辺境伯、申し訳ないが先程の通りにお願いする」
「畏まりました。アナタ達、この食料を小分けにして食料倉庫へ持っていきなさい。館の者を総動員していいわ」
「「「「「畏まりました!」」」」」
「それで、あの食料の値段だけれど大金貨3枚でどうかしら?」
「うん? 相場がよく分からないが、それでいいんじゃないか? 買い叩いていたら、いつの間にか辺境伯はケチだという噂が流れるだけだしな」
「アナタ……。厭らしい事を考えるわね。この値段では買い叩いてないわよ。何だったら調べればいいわ」
「ヤダよ、面倒臭い」
「アナタねー……。本当にイイ根性してるわね! 私は辺境伯なのよ?」
「アルドにそんな事言っても無駄だよ。”それで?”って言われて、話が終わるだけさ」
「そういえば……アルドさんって、そういう方でしたね」
「確かに、そういう方ですな」
「………」
「アルドは、面倒なら秘密裏に始末すればいいや。そう考えるタイプですよ?」
「はーっ……。別に敵に回す気なんて無いけれど、そこまで割り切ってるなんてね」
「君は勘違いしているね。私達不老長寿も、アルド程の力があればとっくにやってるさ。クソ貴族を何百年見てきたと思ってるんだい?」
「「「「「………」」」」」
どれほど嫌われてるか、貴族本人が1番分かってないんだよなぁ……。
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0207終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨70枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨236枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ