0201
辺境伯領の領都ファルートに入り、一息吐く間も無く領主に会いに行く。流石に国境だけあって、領主の館は石垣の上に作られていた。表面が綺麗でないのがどうにも納得がいかない。
あれじゃあ簡単に手が引っ掛かるし足場にもなる。直ぐに登られてしまうと思うが、上から熱した油か糞でも落とすんだろうか? それでも登れるようにしておく必要は無いか。
「止まれ!! お前達は何者だ!」
「俺達は傭兵だ。登録証はここにある。依頼でここに来たんだが、辺境伯に会わせてほしい」
「はぁ!? キサマ如きが会える訳がないだろうが、さっさと失せろ!」
「俺達は依頼で来ている。依頼したのは王太子殿下だ。内容はこの手紙を辺境伯に届けろというものなんだが、邪魔するとどうなるか分かるな?」
「………お前達が王太子殿下に依頼を請けたという証拠は無い! さっさと失せろ!」
「一応言っとくが、首が飛んでも知らんからな? お前の所為で手紙が渡せなかったと報告しておく。皆、帰るぞ」
俺達はその場を後にした。ああいうアホの相手をしても無駄だ。ハッキリ言って侵入した方が早い。皆には領都で買い物を頼んでおく。食料を含めて遊撃に必要な物の買出しだ。
俺は狭い路地に入った後、隠密の3つの技を使って領主館へ行く。門をジャンプで越えて、石垣を登る。侵入して直ぐに館の玄関が開いて中からメイドが出てきた。
俺は開いた玄関に体を滑りこませ、館に侵入する。玄関から侵入するのは初めてだな。【空間把握】で調べると6人程が固まっている部屋があるので、多分そこだろう。
相変わらず咎められる事も無く、辺境伯の居るであろう部屋へと到着したので中を窺う。中に居るのは男2の女4だ。あれ? 執務机の椅子に座ってるのは女性だな。
「それで、森に入った帝国の者の処分はどうなったの?」
「申し訳ありません。今だ全ての把握は出来ておりません。判明している7名は現在調査中です」
「7人もどこに居るか分からないとは、厄介な事になったわね。それと領都に侵入している者は?」
「ハッ! そちらに関しては事前の掃除の効果もあり、奴等の仲間が根城にしていた拠点を囮にして、7名以外は全て捕縛致しております。現在拷問中ですので、しばしお待ち下さい」
「そう。そっちは上手くいっているのね。食料や薬は?」
「はい。食料と薬に関しては、領都の民に限れば十分に確保出来ております。ただ、援軍がどれほど使用するかは不透明ですので、これ以上は憶測にしかなりません」
「まあ、誰が援軍に来るにせよ、領都の民の分が確保してあるなら十分よ。どうせ役に立たないブタが来るんでしょうしね」
「援軍への兵糧と武具に関しては、既に準備が完了しております」
「そう、御苦労様。後は援軍がいつ来るかと、役に立つかどうかね。役に立たないなら、この体を抱かせてでも突撃してもらいましょうか……」
俺はこっそりと執務机の上に、表を上にして王太子からの手紙を置く。まだ誰も俺に気付いてないな、本当に面白い技だと思うよ。
「こちらが援軍からの手紙となります」
「あら、ありがとう。やっと来たの……ね……?」
「「「「「!!!」」」」」
「誰だ、キサマ!? 怪しい奴め!!」
「誰だって言われてもな。怪しい傭兵だよ。援軍の大将から、辺境伯に手紙を届けてくれって依頼を請けて、やって来たのさ」
「ぷっ、怪しい傭兵ね。……で、この手紙は誰から? 帝国のクズ? それとも我が国のクズかしら?」
「その手紙を運んできたのを、門番に言ったんだがな。ここの門番が俺の事を疑いやがって、門前払いを喰らったんだよ」
「当たり前だろうが! キサマのような怪しい者を通す筈がなかろう!!」
「ちょっと待ちなさい。アナタ、ワザと答えないようにしているわね? この手紙はいったい誰からかしら? このまま破いても良いのだけれど?」
「別に破いても良いぞ。その場合、アンタの首が飛ぶけどな。その覚悟を持って破けよ?」
「………ふぅっ。まあ、いいわ。読んであげましょう」
読んであげましょう……ねぇ。本当に首が飛びかねないんだがなぁ。あっ! 顔がみるみる青くなってきたな。裏の印章を見れば王太子からの手紙だって分かるからな。見ない奴が悪い。
「ア、アナタ! どうしてこの手紙が、王太子殿下からだと言わないの!?」
「「「「「王太子殿下!?」」」」」
「俺は言ったぜ? ……門番には」
「門番!? キサマ門番には言ったんだな!?」
「ああ、言ったぞ。首を飛ばされても知らんぞ。そう言ったんだがなー。信用出来なかったみたいで、さっさと失せろと言われたよ」
「何をやっているのだ!? 愚か者め!! せめて、確認ぐらいせんかっ!!」
あーあー。一人年配の人が居たんだが、ブチ切れて部屋を出ていったよ。あの門番どうなるのかね? 興味も無いから、どうでもいいけど。それより手紙も渡したし、そろそろ帰るか。
「じゃあ手紙も渡したし、俺はそろそろこの辺で……」
「帰れると思っているのかしら? 王太子殿下の手紙を運んだ者を、そのまま帰すなんてあり得ないのよ?」
「いやー、そういう面倒臭いのは……」
「いいから、そこの椅子に座りなさい!! 飲み物と食べる物を用意して!」
「「畏まりました」」
何か変な事になったぞ? 仕方がない、皆には【念話】で辺境伯の所に居る事を伝えて、こっちに来てもらおう。門番も王太子殿下の手紙の事を言えば、2回目だし流石に通すだろ。
「俺を接待しても意味は無いと思うんだが? 俺は怪しい傭兵でしかないし、手紙を配達しただけだ」
「本当に怪しい者に、王太子殿下の手紙が預けられる訳がないでしょう。預けられた段階で信用は十分なのよ。そもそも傭兵だと言ってるけれど、誰に依頼されたのかしらね?」
「俺達に依頼してきたのはライブルだよ。村に居たらセルネットに乗って急いでやって来て、そのまま戦争の事を聞いて依頼を請けたんだ」
「近衛騎士団長が急いで依頼しに行く相手という時点で、滅茶苦茶でしょうに。私はそんな相手が居るなんて聞いた事が無いし、そもそもどんな村なのかしらね?」
「ん? どんな村って……。大森林を抑えてる、ルーデル村だけど? それ以外に説明のしようが無いな」
「<大森林の壁>じゃないの……。あそこの傭兵なら国境線でも頼りになるのも頷けるわね。それにしてもそこまで優秀な傭兵が居たかしら?」
「失礼します。女性5人と猫と虎が館に来られまして、そこの方の知り合いだと仰っておられるのですが……」
「ああ、俺のチームメンバーだよ。猫と虎の時点で間違いようが無い。ちなみに猫はツインホワイトで、虎はムルーガだよ」
「……まあ、いいわ。通して頂戴」
「畏まりました」
皆が来たとはいえ、俺達の仕事は斥候潰しだ。こんな所でお茶飲むような仕事じゃないんだが……。ちなみに、飲み物として出てきたのは果実水だ。やっぱり、お茶じゃないのかぁ……。
辺境伯の所だから期待したんだけど、この辺りにはチャノキが無いでファイナルアンサーかな? そう思うと、あの渋いお茶が飲みたくなるんだよな。
元日本人として、米より先にお茶が欲しくなるのはどうなんだろう? でも、沸騰したお湯で入れた渋味に溢れたお茶。俺は結構好きなんだよなー。飲みたくなるから、考えるの止めよ。
【探知】と【空間把握】に反応有り! どうやら皆が通されて来たらしい。それにしても2匹が物凄く速いうえに、迷い無くここに来てるんだけど? 俺の気配を察知してるのか?。
2匹がまた腕を上げてるような気がする。ウチで1番才能のある2匹だから、誰よりも早く上達するんだ。気付いたら俺の技を覚えて使ってる、そんな事があるかもしれない。
「ニャー!!」 「グルゥッ!!」
「おーっ。2匹とも少し離れてただけなのに、物凄く激しいな。……そこまでか!?」
何か2匹の甘え方が物凄く激しい! 困った事に簡単に治まりそうにないぞ。これは【心静】を使うしかないか……。流石にちょっと落ち着いてもらわないと困る。
▽▽▽▽▽
0201終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨70枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨236枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ