0019
村に到着した。あの燕以降は襲われる事は無かったので安堵する。門番の犬人族が括り付けている燕を見て驚いていた。
「よくワイルドスワローを倒せたね。そいつは何度も強襲してくる癖に、攻撃されると直ぐに逃げる面倒な奴なんだ」
「強襲して近づいて来た時に石をぶつけてやったら、驚いたのか落ちてきたんだ。どうやら落ちた時に首が折れたらしくてね」
「そりゃまた……。ワイルドスワローは魔法使いが居ないとなかなか倒せないから、高く買い取ってくれるよ」
「それじゃ解体所に持って行くよ」
【念術】がバレない為の嘘だが失敗か? 門番に言われた通り解体所へ持って行く。
登録証を預けて、いつもの熊の獣人を待っていると今日は別の人と一緒に来る。身長が3メートル近いマッシブな男性だった。初めて見たが巨人族だ。
「うん……? 今日はワイルドスワローだけかい?」
「ああ。今日は魔物を狩りに行ったんじゃなく、襲われただけなんだ」
「なるほどなぁ……。どうですか?」
「うーむ、実に綺麗に処理しておる。銀貨2枚が妥当だろうよ」
「ええ私もそう思います。それでいいですか?」
「え……えぇ。構いませんが」
「あぁ……。ワシが来たのは綺麗に処理してくれておる者との面通しの為だ。ではな」
「あ……はい」
「……あの方はこの解体所のトップで、ジャロムさんです。私はベグと言います」
「ご丁寧にどうも。俺はアルドゥラムです、アルドと呼んで下さい。先ほどの金額でお願いします」
なんで解体所のトップが出てきたんだ? いったい何の意味がある? 分からない事を考えても仕方ないか。本当に単なる顔合わせの可能性もあるし。今はさっさとギルドへ行こう。
登録証とお金と木札を受け取りギルドへ行く。訓練場へ行く前にミュウさんの所へ行き、手続きをしてもらった。
その後、訓練場にある倉庫まで荷車を牽き、倉庫に丸太を詰めていく。荷車屋へ行き荷車を返すと夕方だった。
ギルドに戻り、倉庫前の男性職員に今日はもう終わる事を伝え宿屋に戻る。今日は重い石と丸太を運んだだけだったな。
あぁ、デッカイ燕がいたか……アレはどうでもいい。
「ただいま戻りました」
「お客さんお帰り。鍵ココに置いとくからね」
「了解です」
部屋へ戻り椅子に腰掛けて、水筒の水を飲みながらいつもの浄化をする。一人でゆっくりしているからか浄化で思い出した。
現在このルーデル村の浄化率は6割を超えたくらいだ。どうしても家屋の中とかは浄化し辛い。人の住む家だと変化を感じ取られやすく、気付かれる危険性がある。
その為に建物の中までは難しい。逆に、外は近くに行かなくても浄化できるので既に終わっている。畑の作物なども邪気の影響を受けるが、そもそも作物には病気という問題が付き纏う。
だが【浄化】の権能は、当然作物の病気も浄化出来るので元気に育っているのは俺の御蔭なのだ。誰にも言えないけどね。
ダナには言えるが、言った所でサラッと流されるだろう。……ここで下らない事を考え続けてもしょうがないので食堂へ行こうか。
「今日の夕食二人分ね」
「まいど。今日は大銅貨1枚と銅貨2枚だよ」
「うん? ……今日のメニューは何?」
「疑問なのは値段かい? ダッシュボーアの肉が入ったからさ」
「あの猪か。今日の夕食は特に期待できるな」
「猪肉は美味しいからね、気持ちは分かるよ」
俺が狩ってきた魔物が宿の料理で出てくる。それ自体は普通なんだが確率が高くないか? こんなもんか? あんまり考えても自意識過剰なだけか。
ゆっくり待っているとダナが来た。今日はいつもと違い小さな樽を持ってきたようだ。
樽をカウンターに置いて隣に座ったダナは、女将さんからコップを借り中身を機嫌良く飲んでいる。どうやら酒らしい。
「ダナさん、態々酒場から持ってきたのかい?」
「ああ。今日のワインはいいワインでねぇ、せっかくだから持って来たのさ」
「いいワインを入荷したのかい? ウチには話しが来てないよ!」
「夕方前に届いたばかりなんだってさ」
「ダナ、そのワイン一口もらえないか?」
「構わないよ。一緒に飲む為に持って来たんだからね」
ダナからワインの入った木のコップを受け取る。洒落たガラスのグラスなんて、この世界じゃ非常に高価な物だ。
俺なら簡単に作れるが、碌な事にならないだろうから作らない。そんな事より、成功するか分からないが【錬金術】の【熟成】を使ってみようと思う。
成功したらちょっとヤバい気もするが、自分だけなら大丈夫。まずは一口……なんか尖った味だな。これが若いって事なのか? お酒は全くと言っていいほど分からないが、美味しくない。
それじゃ【熟成】っと、そして一口……昔飲まされたワインの味に似てるな。高いワインだからお前でも分かると、そう言われて飲んだワインによく似ている。
どうせダナが部屋に持って来るだろうから、その時ダナにも飲んでもらって感想を聞こう。酒を飲まない俺では、良いのか悪いのかイマイチ判断がつかない。
「今日の猪肉のステーキは美味しかったねぇ!」
「そうだな。肉厚で柔らかくて、凄く美味かった」
「解体所の奴等が言うには、最近腕のいい傭兵が綺麗な獲物を持って来てくれて助かるんだそうだよ」
「最近ねぇ………」
ダナ、こっちを見て言わないでくれ……。って女将さんまでこっちを見てる!? つまり間違いなく俺ってことか。
【浄化】の権能を含めて色々してるからなぁ……普通の傭兵の獲物とは違うだろうな。とりあえず部屋に戻ろう。
部屋に戻り、ダナからワインを貰って【熟成】した後ダナに渡す。
「うん? どうしたんだい」
「ダナ、このワインを少し飲んでみてくれ」
「……まぁ、いいけど」
口に入れた瞬間にダナの表情が変わる。一気に飲んで、興奮した様に「美味しい! 美味しい!」と言ってくるので、説明したらジト目で見てきた。
「美味しいけど……これ表に出せないね?」
「表に出す気はそもそも無いよ。こういうのは個人で黙って楽しむもんだろ?」
「そうだね、それがいい。残りのワインも頼むよ」
ダナはいい酒だったからか終始ご機嫌で、イロイロ満足して眠るまでずっと機嫌が良かった。全ての浄化を終わらせて俺も寝る。おやすみなさい。
<異世界8日目>
おはようございます。今日はギルドに行って武器を作る日です。使いやすい物と言われているが、せっかくだから色々な武器を作ろう。浄化しながら何を作ろうか考えていたらダナの目が開いた。
「チュッ! ……おはよう、アルド。また何か考え事かい?」
「おはよう、ダナ。今日作る武器の事を考えてたんだよ」
「奇抜な使い難いのとかは作らない様にね」
「流石に使い難い物は作らないよ。作る意味もないし」
少し読まれてる気がする。とはいえ無駄な物を作る気は本当に無い。地球でも使われていた物を作る事は最初から決めている。
口内を浄化し服を着て、長いキスをしてから部屋を出る。女将さんに注文をして二人分の金額である大銅貨2枚を支払う。
いつも通り二人の微妙な会話を聞きながら朝食を待っていると、女将さんは朝食を持って来たついでに話し掛けてきた。
「今日は雨だけどお客さんはどうするんだい?」
「今日はギルドで仕事があるからギルドへ行くよ」
「なんだい、今日は雨かい。低ランクが大人しくしてればいいけど。雨の日は助けて貰えないからね」
「雨の中の狩り……危険すぎるけど、低ランクは生活が厳しいから行く奴は居そうだ」
「毎年無理して死ぬ低ランクは居るんだよ。多少なら先輩連中が助けたりするんだけど、限度があるしねぇ」
「だから低ランク向け武器が必要なんだ?」
「そうなんだよ」
食事を終えて外へ出る。雨足はそこまで強くないので二人で走ってギルドへ行く事に。多少雨に濡れたがギルドに到着したので、入る前に【乾燥】を使って乾かしついでに浄化する。
ダナは倉庫を開ける指示を出してから二階に行ったので、昨日と同じ男性職員と共に訓練場に行き倉庫を一緒に開けた。倉庫に入り昨日の石と木を使いやすい位置に並べる。
さて、武器作りの始まりだ。
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0019終了時点
金貨6枚
大銀貨1枚
銀貨9枚
大銅貨5枚
銅貨9枚
鋼の短刀
鋼の鉈
鋼の槍
オーク革の鎧
革と鉄の肘防具
革と鉄の膝防具
革と鉄のブーツ