0198
「何というか、とても鮮やかな手並みでしたね。それに、あそこまで細かくなっていると判別不能となるのは当然でしょう。……証拠を出せと仰る筈です」
「まあ、あんな小さい粉は証拠にはならないだろう。アルドがよく言う事だけど、証言は証拠にはならない。嘘なんて幾らでも吐く奴が居る以上はね」
「姉上も言われましたが、見ていた事を口にしてもアルドを罪に問う事は不可能です。あの粉が、クソ貴族の成れの果てだと証明しない限りは」
「それ以前に、ここに居る奴の殆どが貴族が死んで喜んでる奴ばかりさ。ここは傭兵達が集まってる後方だからね」
「依頼内容の事なんだが、どうやって侯爵家の者かどうかを判別するんだ? 俺は侯爵家全員の顔を知ってるワケじゃないんだが」
「依頼内容は”侯爵家の者”です。侯爵の一族は、捕縛された侯爵と、王都に母親と次男が居るだけなので領都には居ません」
「あー……。そういう事だったのか、了解だ。侯爵家の奴等の捕縛か殺害。仕事として請けよう。それじゃ、皆。行ってくる」
俺は身体強化を行い、その場を十分に離れる。その後、隠密の3つの技を使い領都に接近したら壁をジャンプして越えた。領都の中に潜入したが、外に出てる人は1人も居ない。
なので素早く侯爵邸まで進む。見張りなども居なくなっていたので簡単に侵入する事が出来た。ここの見張りも兵士として戦場に出てるのか、それとも逃げたのか……ま、どうでもいいな。
侯爵邸の中へ台所から侵入するんだが、閂が掛かってないので普通に入れてしまった。侯爵邸の中を【探知】と【空間把握】で調べると、2人の反応しか無い。幾ら何でも少なすぎる。
2人の反応がする場所に近づい!? 反応が1つ消えたぞ!? 俺は慌てて反応のある部屋の近くまで行き、【空間把握】で目的地である部屋の中の様子を確認する。
「……ふうっ。この期に及んでも、まだ愚かな事をするとは……。早くこの国の王太子に頭を下げて、詫びねばならんと言うのに」
この国って、どういう事だ? 何か王国の国民じゃないかのような言い方だな。そもそもコイツ、辺境伯を攻める事に反対していた家宰だろうに。何で兵士長を殺してるんだ?。
「埋伏の毒にもなれん愚か者が、欲を出しおって。こんな者が栄光ある帝国臣民とはな……まぁ、いい。こんな愚か者の事よりも、この状況をどう治めるかを考えねばガッ!!」
【衝気】を全力で使って気絶させたんだが、まさか戦争に反対していた奴が帝国の間者とはなー。いや、家宰と兵士長の両方だったんだけどさ。驚きだよな、こんな事があるなんて。
つまり、侯爵家はいいように転がされてたって事か。確かクソガキ当主が先代の頃から居るって言ってたから、皇帝派の工作活動って事だな。とりあえず、コイツを運ぶか……。
俺は家宰を肩に担ぎ、侯爵邸の台所から外に出る。前回も拝借したが、薪小屋から薪を貰って手枷と足枷を作って嵌める。その後、再び担いで領都グリュウを脱出した。
戦いは少しずつ王太子軍が押していく形で推移していたようで、領都に近い位置にまで来ていた。俺は前線で指揮を執っている王太子とライブルの前に姿を現す。
「どうもー。お届け者でーす」
「!? ……ふぅっ、アルド殿ですか。驚かせないで頂きたい。ところで、お届けものとは肩に担いでいる者の事ですかな?」
「そう。第三王女からの依頼で領都の侯爵邸に侵入してきたんだけど、家宰であるコイツと兵士長しか居なかったんだよ。その兵士長もコイツに殺されてさ」
「ほう? ……殺すという事は口封じだろう。つまり、この者が黒幕という事になるのだが……その割には相手に動揺が見られないな」
「細かいところまでは分からないが、コイツと兵士長は帝国の間者だった。先代の頃から侯爵家に浸透していたらしい。自分で埋伏の毒って言ってたし、栄光ある帝国臣民とも言ってたな」
「「!!!」」
「ライブル! その男を直ぐに尋問せよ。全ての情報を聞き出す為なら拷問をしても構わぬ!」
「ハッ!!」
「依頼の事だけど、侯爵邸の中にはコイツと兵士長しか居なかったよ。だから仕事は完了だと思うんだが、それでいいか?」
「ああ、構わない。御苦労だった。戦争終結後に纏めて支払う事を、王太子の名で約束する」
「あいよ。じゃあ、また何かあったら依頼してくれ。ただし、出来ない事は断るけどな」
俺は王太子の居る場所から離れ、後方の皆の居る所へと帰って行く。戦争と言っても、戦っていない部隊の連中は暇を持て余しているなー。それが普通と言えば普通なんだろうけど。
前線では必死に戦ってるのに、後方では欠伸している奴が居る。この温度差が、戦争をしている緊張感を無くす原因か。殲滅する訳にもいかないので、こうなってしまうんだろうな。
皆の下に戻ったら、何故か第三王女が居た。王太子の所に戻らなくても良いんだろうか? 王女が戦争に参加する必要は、無いと言えば無いから良いのかね。
楽しそうに話をしているから野暮な事は言わないけども。2匹は既に俺の足元でじゃれあって遊んでいる。早くこの泥仕合終わらないかなー。結局は勝つしかないんだからさー。
相手に打撃を与えないと終わらないんだから、早くしろよ。辺境伯への援軍が遅れたらどうするんだ? その所為で攻め落とされたら誰が責任をとるんだよ。考えれば分かるだろうが。
やっと終わったか……。王太子に責任をとらせる訳にはいかないんだから、早く攻め落とした方が良かっただろうに。余計な時間を掛けて無駄な被害を出してどうすんだよ、全く。
後は領都の中に入ってどうこうがあるんだろうな。この様子じゃ、領都で何かを買うのは無理そうだな……。仕方がない、1人で伯爵領の領都まで買出しに行くか。
まずは昼を過ぎているので、昼食が先だ。皆に一言告げて、全力の身体強化で移動しながら近場の魔物を調べる。碌な魔物が居ないが、ネイルラビットが居たので8羽狩っておく。
皆の下に戻り、焼き場と焼き網を作って昼食の準備を行う。ネイルラビットを解体し、浄化して【熟成】する。8羽の内臓は食べられる物は全て2匹に食べてもらう。
猛烈な勢いで食べる2匹を横目に、塩を振って馴染ませた肉を焼いていく。外で料理するにしても、もうちょっとマシな料理をしたいが碌な物が無い。やっぱり買ってこないとな。
「食べながら聞いてくれ。昼食を食べ終わったら、1度ディムアストまで買出しに行ってこようと思う。本来ならグリュウで買うつもりだったんだが、買えていない所為で色々と足りない」
「まあ。硬パンだってもう無いし、他の物も足りてないね。これから辺境伯の領都へ行っても、アタシ達が食料を買うのは難しいだろう。戦時は軍が優先されるから」
「辺境伯の領都にはそれなりの食料があるでしょうが、私達にまで回って来るかは疑問がありますね。アルドが居てくれれば、肉類の確保は問題ないので助かりますが……」
「お肉だけを食べ続ける訳にもいかないし、遊撃のお仕事をしながら森で食べられる物でも探しましょうか?」
「それが1番良いんじゃないかな。火の季節だから食べられる物は多くはないけど、無い訳じゃないからね。向こうで調達出来るなら、それが1番良いよ」
「私も任務の途中で色々な物を食べたな。虫の魔物でも食べられる物は結構居るんだ。その御蔭で助かった事も多い」
「まあ、虫自体は栄養価も高くて食べ物としては優秀だから良いんだが、妙な病気を持っていたりするんで危険でもある。食べられる物以外は止めた方がいい」
「まあ、訳の分からない虫を食べるのは最悪の場合だね。アルドが言ったように妙な病気になっても困るし、そうなる前に撤退するべきさ」
「問題は国境線の森がどれだけ広いかだ。それによって遊撃の難易度も変わる。場合によっては、1本しかない道を掃除した方が良いかもしれない」
さて、昼食も終わったし、そろそろ買出しに行ってくるか。
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0198終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨71枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨236枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ