0195
2匹が食べ終わったのを確認して、ゆっくり歩きながら戻る。2匹とも気分良さそうについてきているが、遊んではいない。まぁ、お腹がポッコリしてるからしょうがないんだろう。
軍の移動とはいえ、それなりに早い気がするな。軍の移動ってもっと遅いイメージがあったんだけど……輜重隊合わせて2000人ならこんなものなのかね?。それとも輜重隊が速い?。
王国の輜重隊は、馬車のような物をムルーガに引かせている。ムルーガは走れば遅いがパワーは強い魔物だ。もしかしたら、荷物を牽くのは速いのかもしれない。
カエデも最初からそうだったが、走るのが遅いだけで歩くのは遅くなかったからな。輜重隊が軍の中では1番遅いんだから、その輜重隊がそれなりに速いなら全体も速くなるか。
ムルーガがお荷物みたいに言われてたけど、凄く役に立つじゃないか。結局、使い方一つで幾らでも変わるんだろう。俺も妙な先入観を持つのは危険だから止めないとなぁ。
「ただいまー。結局小角鹿とスマッシュボーアしか獲れなかったよ。要らない内蔵は2匹のお腹の中ね」
「おかえり。どうりで2匹のお腹がポッコリしてる筈だよ。美味しかったのかい?」
「ニャ~」 「グル~」
「どうやら美味しかったようですね。しかし、小角鹿とは珍しい。あれはどちらかと言うと草原に居る魔物なのですが……」
「そうだけど、森に居てもそこまで不思議ではないでしょう。結局はそこで生きているのは間違い無いのよ?」
「そうなんですけど。小角鹿がこの辺りに出るとは聞いた事がなくてですね。上手く間引きがされていない気がするんですよ」
「それはちょっとマズいね……。間引きされずに魔物が増えているとなると、戦争中にスタンピード? ……そんなの完全に対処不能だよ」
「それどころか、戦争とスタンピードで邪生が一気に増えるかもしれない。そうなったら、邪生を狩り終わるまでにどれだけ死ぬか」
「「「「………」」」」
こいつら……。今、一瞬だけど、邪生の心臓が増えるとか考えただろう! 流石に不謹慎過ぎるぞ、それは。戦争が行われれば、否応なく邪気は増えてしまうんだからな。
そもそも邪気が増え過ぎているのと、神殿のクズどもの所為で俺が居るって事忘れてるのか? クズどもはともかくとして、あまり邪気が増えるのも良くないんだがな。
それをなるべく浄化する為に、戦争に参加する事を決めたって部分もあるんだよ。邪気を減らす側が、欲で増やす事を考えたら駄目だ。神罰じゃ済まない可能性がある。
神殿に神罰を落とすのは影響が大きくて【世界】が止めるが、俺達個人に対してなら簡単に落ちるかもしれないんだから勘弁してくれ。俺は神罰を受けたくなんてない。
そんな事を考えたり、下らない事を話したりしてる内に、クレの町に到着した。町の近くで軍は滞在するんだが、野晒しで野営をする様だ。テント1つを考えても荷物だからな。
輜重隊だってなるべく荷物を少なくして運ぶし、主な荷物は食料だから兵士も文句は言えない。かといって、自分達は装備と荷物で限界だ。結局は野晒しの野営にならざるを得ない。
それでも【浄化魔法】の【清潔】があるだけ、この世界はマシだと言える。地球の悲惨過ぎる戦争事情に比べれば、こちらの世界の方が余程清潔だ。
風邪や病気でバタバタと人が死んだ、第一次世界大戦なんかに比べれば遥かにマシだろう。【清潔】は汚れを落とすだけだが、それでも十分過ぎる。病気のリスクが減るんだから。
ちなみに【浄化魔法】には、【清潔】の上に【聖潔】という魔法がある。これは人体内部の病原菌や毒などにも効果がある魔法で、中級でも難しい方に分類される魔法だ。
難易度は【聖浄四重浄化】と同じぐらいと言えば分かるだろうか? まぁ、分からなくても良いんだけどさ。そんな事を考えている内にカマクラが完成。一応、軍から更に離れた場所に作っておいた。
バカな事を考える奴が出ないとも限らないし、他の傭兵も同じように離れた場所にテントを張っている。俺達以外の傭兵がそれなりに居るが、仕事内容は多分同じだろうとは思う。
「それなりに傭兵が居るが、近衛からの依頼なのか王軍からの依頼なのか……」
「もしかしたら、どこかの貴族の依頼かもしれないね。自領の優秀な傭兵に依頼をして戦争に参加させる事もあるよ」
「自分の領地をアピールし、自分もアピールする姑息な手です。昔からやってる貴族がいますが、兵や兵糧の供出よりは安く済むんですよ」
「それって、結局ケチだって事がバレるよな? 昔からなら、安く済ませようって魂胆はとっくに知られてるだろうし……」
「それでもやる貴族は居るのさ。建前や面目が整えばそれでいいって奴は、どこにでも居るからね」
「でも、昔から知られてる以上は、建前や面目は整ってないんじゃないかしら?」
「それが分かってる奴等は、そんな恥ずかしい事はしないのさ。それが分かってない奴か、見ないフリをしている奴等がするんだよ」
話をしながら、俺は【土魔法】を使って焼き場や焼き網を作っていく。薪を手に入れる為、近くの木を伐り倒しに行こう。直ぐ近くに森があるので、薪自体は簡単に手に入る。
他の傭兵も伐っているが、伐って直ぐの薪は燃え難いと知らないんだろうか? それとも強引に使うのか? まぁ、俺達じゃないから別にいいんだが、大丈夫なのか心配になるな。
木を2本伐り倒し、枝を落とした後に【分離】で皮を剥ぐ。その後、【乾燥】を使って水分を可能な限り減らし、【分離】を使って薪の形にしたら完成だ。これで薪としては十分使える。
ちなみに炭を作るなら、【土魔法】で石のカマクラを作り炭窯とすればいい。そして、カマクラ内に【灼熱】という、魔力次第では3000度に達する【火魔法】を使えば出来上がりだ。
なんか薪を【錬金魔法】と【練成魔法】で作っていたからか、周りの傭兵がジロジロこっちを見てくる。こっちも観察してるんだが、思っている以上に女性の傭兵が多いな?。
戦争なんて色々危険だろうに、なんで女性が多いんだろう? 見える範囲だけでも8割は女性だぞ。流石にこの数は何かしらの理由が無いとおかしい。
「どうしたのだ。周りの傭兵を見回しているようだが……」
「いや、戦争に参加する傭兵なのに、何故か女性が多いんだよ。ちょっと気になったというか、危ないと思うんだがな……」
「それは簡単な事さ。彼女達は後方の担当なんだよ。水を確保したり、料理であったり、【清潔】を使ったり。偶に体を売ってるのも居るね」
「成る程。後方の仕事も大事だからな。それによって士気が上下するなんて、よく聞く話だ。そういえば、戦場には出張の娼館がある話も聞くが本当なのか? 危険過ぎると思うが」
「出張の娼婦や男娼は兵士達の近くに居るんじゃないかな? あの子達は戦いが始まる前には避難するから、特に危険は無いよ。敵に捕まっても酷い目に遭う事は無いからね」
「それなら良いんだ。どこでもそうだが、弱い者に被害がいくのが世の常だからな。真っ先に被害を受けそうだし、妙なのに狙われそうだからさ」
負けたりなんかすると真っ先に狙われそうだが、この世界では違うのかね? 戦場だと普段の倫理観は全く通用しないって聞くし、戦闘中は兵士全員が暴走してるようなものだからなぁ。
それが戦争って言われたら、それで終わる話でもあるんだが。……下らない事を考えてないで、そろそろ肉でも焼くか。皆のアイテムバッグには硬いパンがあるので、柔らかくしておく。
俺もパンを貰って夕食だ。塩を振って肉を焼く。野菜なども買っていればもっと色々作れると思うが、そんな暇が無かったとも言える。正確には領都グリュウで買う気だったんだよ。
あの街の食料が多少減ったところで別に良いだろうし、多めに買っても文句は言われないだろうと思っていたら、まさかの出来事の所為で碌でもない事になったからなぁ……。
何て言うか、不運な事になってるなー。大丈夫かね?。
▽▽▽▽▽
0195終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨71枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨236枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ