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 「とりあえず歩きながら話そうか、どっちの方角に歩けば良いのか分からんが……。村と王都の間から北に来ている筈だが、南に戻って森を越えるのはなー」


 「ここから東に行けば、おそらく街道ぐらいはあるだろう。そこから南に向かえばいい。おそらくは王都の北にあるグルダ村に辿り着く筈だ」



 俺達は王女の言に従って東に歩き始める……が、お昼を食べてなかったからか、誰かのお腹が鳴った。その音を聞き、そういえば昼食にする前だったのを思い出す。



 「歩くと言っておいてすまないが、俺達は昼食を食べてないんだ。ここで昼食を食べてから出発したい。構わないか?」


 「それは構わないが……いったいどうするというのだ?」



 俺は焼き場やテーブルなどを作りだし、昼食の用意をしていく。蓮には米と麦が半々の麦飯を、イデアにはスープを、フィーにはサラダとドレッシングを頼み、俺は干物にした魚を焼いていく。


 王女は俺達の行動に唖然としていたが、食べるか聞くと「頂けるなら助かる」と答えた。王女も昼を食べてなかったのかね?。



 「ところで、王女を攫った奴等に心当たりはあるかい? 浄化魔法を使ったら灰になったんだが……」


 「奴等はおそらくだが<吸血公主>の下っ端だろう。<吸血公主>は美しい女性を好むというからな……ゴホン! 半分は冗談だ。ただ奴等が吸血鬼である事は間違いあるまい」


 「何で吸血鬼が王女を誘拐するの? 別にそんな事する必要ないよね?」


 「吸血鬼は様々な所で暗躍している。その一番の理由は血を集める為だと言われているな。奴等は血を飲まないと体がひび割れていくそうなのだ。昔、下っ端の弱い吸血鬼を捕まえて実験をした国があったらしい」


 「その実験結果が放っておくとひび割れるという事ですか……。それぞれの星に様々な吸血鬼が居るんですね。この星では何か悪い奴等って感じですけど、そういえばアンデッドでした」


 「まるでアンデッドではない吸血鬼が居るような言い方だな?」


 「居ますよ? 最初の星では吸血鬼族という種族が居ましたし、その人達は普通に暮らしてました。別に悪い事もしてませんし……」


 「おそらくだが増え方が違う筈だ。最初の星の吸血鬼族は普通に産まれてくるのに対し、こちらの吸血鬼は儀式か血を吸う形で増える筈。吸血鬼といっても根本的に別の者だと考えた方が良い」


 「……星という言い方をするという事は、そなた達は異界人か。王国が異界召喚などという馬鹿な事を行った事は知っているが……4人組なのだな?」


 「どういう事でしょう? 私達はどう見ても4人ですが……もしかして少年達3人組と勘違いしているのですか?」


 「王国からはアンデッドを打ち倒せる聖なるスキルを持った3人を召喚できたと、大々的に広めるような書簡が来たと聞いている。私は信用ならんと思っていたのだが、陛下は多少の期待をしておられたな」


 「まあ、この星では猛威をふるっているのが四大アンデッドだから仕方ないんじゃないか? 頭を悩ませている側からすれば、少しでも可能性があれば期待するだろう。俺達からすれば、アレに期待しても無駄だとしか思わんが」


 「ふむ、その少年達3人に期待しても無駄か。……何故だ?」


 「優秀なスキルを持つのかもしれんが、戦いは完全に素人だ。そんな者が戦いに出たところで役に立つ事は無い。更に言えば、脅威と見られたら命を狙われるぞ? アンデッドだって馬鹿じゃないだろう」


 「成る程な、育つ前に殺す……か。可能性としては十分あるし、王国がその辺りをどう考えているのかは知らないが、入り込まれると難しかろうな。<黒の未亡人>など止めようがない」



 話をしながら料理をしていたが、出来たのでそれぞれの前に配膳していく。王女には申し訳無いが木製のカトラリーで我慢してもらって、温かいうちに食べ始めよう。それじゃあ、いただきます。



 「この干物はどこの物か知らないが美味しいな。干物なのに脂が出てくるなど初めてだ。本来の干物はもっとカチカチで食べる所など多くないし、塩漬けは塩抜きせねば食べられた物ではないのだが」


 「これは一夜干しと言われる多少の水分を抜いた物で、味が濃くなる程度に乾燥させた物だ。当然、長く日保ちするような物じゃない。俺達は一夜干しを更に凍らせてアイテムバッグに入れてるから長保ちするがな」


 「成る程、長保ちさせるにも色々せねばならぬのか。それにしても、海の近くの村で食べた魚より美味しいかもしれない干物があるとは……」


 「そういえば王族の方なのに麦を普通に食べるんですね。ボクはパンしか食べないんだと思ってましたよ、それも白いパン」


 「白いパンな。とても手間がかかる面倒な物だし、私は別にあれが美味しいと思った事もないのだ。陛下はあれを食しておられるが、どうもあれが体に良くない原因ではないかと思う」


 「またここでも脚気かそれに近い病気になってる権力者が居るのか。その病気は庶民には無いんだから、その時点で権力者特有の病気だと分かるだろうに。歯茎から血が止まらなくなったりする病気だろ?」


 「うむ。陛下はまだそこまで酷くないのだが、歴代の陛下も似たような亡くなり方をしているのだ。私としては何とか体調を良くしてほしいのだが」


 「大麦を食え、大麦を。脚気という病気は別名で、贅沢病とも言うんだ。麦を食ってれば脚気にはならない、もしくは生野菜を食べろ。茹でたりすると駄目な事もあるんで、浄化魔法を使って綺麗にした生野菜を食べるのが良いだろう」


 「大麦、はコレか。それはいいのだが、この白いのは何だ? 見た事がないのだが……」


 「それはご飯だよ、つまりお米。何故か家畜の餌として売ってたけど、この国の人は食べ方を知らないみたい」


 「家畜の……ああ、アレか。私も視察で見た事があるが、アレは普通に食べられる物だったのだな? 確かに家畜が食べ散らかしていた中には白い物があったが、あの白い部分がこれという事か」



 俺はアイテムバッグから米というか、籾の状態の物を取り出して見せてやる。すると王女は納得したようだ。



 「そうそう、それだ。私が見たのもそれなのだが、成る程、中を見れば確かに粒が入っているな。何故か茶色であって白くないが」


 「茶色の部分は糠といい、それも体に良い部分だ。俺達は取り除いているが、それは大麦と一緒に食うからであり、米だけで食べるなら糠ごと炊いた方がいいんだよ」


 「ふーむ、色々あるのだな。とにかく歴代の陛下の患っていた病が治るのであれば進言しておこう。かつてから異界の者の知識は有用であったと言われている。我々には分からない事も多かったらしいがな」


 「それは仕方ないんじゃないか? そもそも星によって知識の量が違うだろう。場合によっては子供でも、この星の大人以上の知識を持っている場合もある。迂闊に見下すと鼻で笑われるだろうな」


 「そういう事もあったと聞くが……ふぅ、美味しかった。私も昼を食す前に攫われてしまったのでな。食事が出来て助かった、感謝する」



 俺達も食事を終え、カマクラのトイレだけを作って用を足していく。王女が首を傾げたのでトイレだと説明すると赤面していた。とはいえ、背に腹は変えられないし、ずっと我慢も出来ない。何処かで出しておく必要がある。


 王女は乗馬服みたいな服だが、1人で大丈夫との事なので蓮に行ってもらった。1人で用を足せても綺麗には出来ないからな。蓮には浄化魔法を使ってやってもらった。


 俺達が後片付けなどをしていると出てきたが、いちいち俺達が何かを言ったりする事は無い。最後には俺達も用を足し、全てを壊したら東へと出発した。


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