1942
<実験惑星26日目>
おはようございます。今日は東の王都へと進んで行く日です。それなりに東へと移動すれば王都に着くが、それでも2~3日は掛かるだろう。ま、それでも普通の人よりは早いのだが。
朝の日課を済ませ、紅茶を淹れてティーポットに移し、残った分をコップに注ぐ。鍋は【浄化】してアイテムバッグに戻し、飲みながら今後の予定をつらつら考えていると、子供達が起きてきた。
2人を見送ってから紅茶を一口飲むのとフィーが起きるのは同じタイミングだった。起き上がったフィーに挨拶して見送ると、再び考え事に戻ろうと思うも、子供達が戻ってきたので結局止める事に。
子供達の話に相槌を打っているとフィーも戻ってきたので、その後は賑やかになり今後の予定など考えないままに進んで行く事になった。まあ、いつも通りではあるんだが。
そういえば昨日色々と聞いて回ったが、この国にはアンデッドが出没するような、いわゆる<穢れの森>のような場所は無いらしい。この国にはそんな場所など無いって怒ってる奴も居たぐらいだ。
あのクソ王国も、別に欲しくて<穢れの森>が国土にある訳じゃないだろうにな。あの国は王と王都の貴族と異界召喚に賛成した奴等がクズなだけで、市井の民までクズな訳じゃないからな。
宿に侵入しようとした奴等も居るが、そういう犯罪者は何処にでも居るし、あの国だけが悪い訳じゃない。っと、そろそろ紅茶も飲み終わったし、宿を出て酒場に行くか。
部屋を片付けたら宿を出て、酒場に移動し朝食を頼む。大銅貨4枚を支払ったら席に座り、周りの話を聞くも碌な噂は無かった。なので適当に皆と雑談しつつ、運ばれてきた朝食を食べる。
朝食後は町を出て東へと走って行く。昼にはモイル村を過ぎた所で焼き場を作って料理をし、昼食を食べたら再び東へ。走りながら馬車などを追い越していき、アッディ町に到着した。
登録証を見せて町に入り、宿の場所を聞いて移動。大銅貨5枚で部屋をとり、少し早いが酒場へと行って夕食を食べよう。大銅貨4枚を支払って夕食を注文したら、席に座ってようやくゆっくりと休める。
子供達もフィーも少しゆっくりとしているのを見ていると、気になる話が聞こえてきた。
「今日の朝までいらっしゃった王女様は無事に帰れたのかね? 毎年の視察だけど、盗賊どもとか居るしなぁ……。ちょっと気掛かりだよ。御無事なら良いんだが」
「そういう事を言うのが一番駄目なんじゃねえか? 無事を願うんなら危ない事を言うのは止めようぜ。何も無いのが一番なんだし、妙な噂をしてると良くない事が起きるかもしれねえだろ」
「確かに昔からそう言うし、良くない噂はしないに限る。それに騎士がついているんだから大丈夫だって。盗賊どもも本物の騎士を襲ったりなんてしねえよ。勝てねえんだしな。むしろ尻尾巻いて逃げるだろ」
「そうか。そうだよな。騎士が沢山ついてるんだし、危ない事なんてある訳ないな。オレも何を心配してたんだろうな。危険なんてある訳ないのに! はははははは!」
フラグ乙と言えばいいのだろうか? もしくは余計な会話をしやがって、と言うべきだろうか。蓮もイデアも苦虫を噛み潰したような顔をしている。おそらく俺も同じような顔をしているだろう。
正に「余計な事をしやがって!」といったところだ。フィーは分かってないようだが、俺達としては確定で王女と遭うのが分かってしまった。問題はどんな面倒臭い事になるかだ。
夕食後、宿の部屋に戻ってフィーに説明するも、フィーは半信半疑だった。
「いえ、噂を聞いただけですよね? ならばそうなると決まった訳ではありませんよ?」
「甘いね。絶対にその王女っていうのに遭うよ。どういう風に遭うかは蓮にも分からないけど、出会うのは間違いない」
「そうです、蓮の言う通りですよ。非常に高い確率で遭うでしょう。むしろ遭わなかったら奇跡です。それ程までにああいう噂は馬鹿にならないし怖ろしいんですよ、本当」
「俺達がこれから進む方向に対して、これでもかと爆弾を投下してくれたからなー。高い確率で出会うのは間違い無い。出会わないように意図的に遅れて移動するか? でもなー……」
「そこまでなんですね……」
そこまでなんだよ。子供達も「うんうん」頷いているが、今までの経験で分かっている。ほぼ確定事項として会うと。それはともかく、会うのはどの時点だろう? 次の村を出た後かな?。
今日の朝って言ってたから、次の村には到着してるよな。明日村を出た後だから午後に追いつく可能性が高いな。ならば王都が近いんで、そこまでの騒動にはならなさそうか。何かあっても王都まで護衛すれば済む。
子供達は眠たくなってきたらしく、自分でベッドに寝転がって寝たので【昏睡】を使い、その後に襲ってきたライアを撃沈する。綺麗にして服を着せたら寝かせ、部屋と体を綺麗にしたら俺もベッドに寝転がった。
明日は何とか色々な面倒を回避しよう。それじゃあ、おやすみなさい。
<実験惑星27日目>
おはようございます。今日はこの国の王女に遭遇するでしょうが、適当に流して終わりにしたいです。絶対に面倒臭い事に巻き込まれたくはない……んだけど、こればっかりは何とも言えない。
朝の日課を終わらせて紅茶を淹れたら、ティーポットに入れて残りをコップへ。今日の朝も静かな時間を適当に過ごし、子供達やフィーが起きたら見送る。
戻ってきた皆と雑談をしつつ、紅茶を飲み終わったら部屋を片付けて酒場へ移動。大銅貨4枚を支払って朝食を食べたら、町を出て東へと出発。走って行く。
昼前には村に着いたがスルーして進み、焼き場を作って食事をしようと思っていると、北側にある森の中を何かが走っているのを感知した。明らかに北に向かって遠ざかっている。何だか嫌な予感がするな。
子供達は「仕方ない」と言い、フィーは「気になりますね」と言う。フラグが理解出来ている子供達は昨日の王女の事だと思ったのだろう。俺もそう思っている。
ただし一秒を争う状況の可能性もあるので、北側に走って行った奴等を直接追いかける。空振りであっても問題は無いし、笑い話で済むからな。
俺達は森の中を走って行き、【探知】の範囲から出た奴等を追いかけていく。木々の間を縫うように移動し、それでも走るの止めず身体強化で一気に進む。その甲斐があったのか、【探知】範囲に目的の奴等が入った。
その後も走り続けて森を抜け、草原に出たら目視で見る事も出来た。距離的にはかなり近付いていたらしい。しかし向こうもそれなりには速い。間違いなく人間種の普通の足の速さじゃないぞ。
俺達が追いかけてきているのが分かったのだろう、乗馬服の女性を背負っている奴とは別の奴が振り向き、こちらに正対してくる。
そいつの目が真っ赤なので、もしかしたらと思い【聖浄】を使うと、苦しんだ後で灰になった。これって吸血鬼か? まさか<不死王>のすぐ後に<吸血公主>にもエンカウントするんじゃないだろうな?。
そんな事を考えつつも、乗馬服の女性を背負っている奴にも【聖浄】をお見舞いし、落とさせる事に成功した。落ちた女性を慌てて持ち上げようとしている他の奴等も纏めて浄化していき、全ての吸血鬼らしき連中を灰にしてやる。
その後、女性に【覚醒】を使って起こしたら、こちらを見るや一足飛びに襲ってきた。仕方なく流して事情を説明すると、やっと理解したようだ。
「申し訳ない。私はフェルディブルム・アトス・ロウティス。ロウティス王国第一王女だ」
「俺はアルドゥラム。一応このチームのリーダーをしている。それはともかく、王都への道を進んでいた時、北側に結構な速さで去っていく反応を感知してな。これは何かあったなと思って追いかけた訳だ」
「町の酒場で王女一行がー、っていう話を聞いたもんね? その次の日に東へ行っておかしな反応だから、間違いなく王女様関連だと思うよ」
その蓮の一言で、何故俺達が追いかけたのか納得したらしい。




