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 <実験惑星23日目>



 おはようございます。今日は海の近くに行って、色々手に入れに行きます。蓮が言っていたタコはともかくとして、塩と魚醤作りはしっかりやっておかないといけない。イデアも言っていたが、流石に塩味のみはそろそろ飽きてきている。


 朝の日課を終え、紅茶を淹れてポットに移し、余った分をコップに入れる。飲みながらボーッとしていると、昨夜の奴等が起き上がり宿の前から去って行った。既に聖人になっているので犯罪は犯さないだろうが、変わった奴等を周りは受け入れるのかね?。


 俺が考える事じゃないが、一夜にして一変してしまっているからなぁ。今までと同じように付き合える奴は、連中の周りには居ないだろう。元々チンピラなんだし、周囲の連中も似たようなものだろうからな。


 子供達やフィーが起きたので下らない思考を止め、戻ってきた皆との雑談に応じる。紅茶を飲み終わったら部屋を片付け、宿を出たら酒場へ。大銅貨4枚を支払って朝食を食べたら、町中の人に話し掛けて情報を得る。


 ここから南東に行けばサウスドムロという村に辿り着くそうだ。かなり遠いと言われたが、俺達の足ならそこまで遠くもないだろう。お礼を言った後で町を出たら、聞いた南東へと走り出す。


 海岸近くの村って聞いたら教えてくれたが、他にも海に近い村とか町はあったのかな? 1人に聞いて行き先を決めたが、もうちょっと多くの人に聞いておけばよかったかも。そう思いながらも走って行く。


 そのままちょっと不安になりながらも走っていると、昼前辺りに村が見えてきた。良かった、流石に【白痴】を使って聞いているので嘘は無いだろうが、どれぐらいの距離かは分からなかったからな。この星も村同士の距離とかが分からないんで困る。


 異界人が長さの単位をもたらしているのは間違いないんだが、村同士の距離が何キロかなんて村や町の人が知っている筈もなく、ましてや国がいちいち計測する筈もない。つまり距離の単位はあるのに、それを活かす為のデータが無いんだ。調べてないから。


 もしかしたら国は知っているのかもしれないが、その情報が民間に下りてくる筈もなく。結局はアバウトな言葉でしか分からない。遠い、かなり遠い、凄く遠い。そんな感じの表現でしかなく、しかも本人にとっての遠さなので尚分からない。


 かなり遠いと言われたが、俺達なら昼前に着いてる訳だしな。そんな事を思いつつ、村に近づき門番に登録証を見せる。この村の名前を聞くとサウスナムロというらしい。



 「俺達は南東に向かえばサウスドムロという村があると聞いて、国境の町からやってきたんだが……。ここはサウスドムロじゃなかったのか」


 「国境……ああ、ハルメル町から来ただか。あっこから南東さ行くと、確かにサウスドムロだ。ここはサウスナムロだが、サウスドムロの東にあるだよ。おめぇさん達はちょいと東に逸れたってこった」


 「そうだったのか」



 そう言って村の中に入る。食堂に行き大銅貨2枚を支払って麦粥を食べたら、適当に雑貨屋などを見て回る。大した物も無いので村を出ると、南へと走って行き海へと近付く。


 南には海岸線と砂浜があり、多くの村人の舟が砂浜に並べられていた。そんな所からは離れ、東へと移動しつつ村人が居ない場所を探す。海岸線が続いている為それなりに移動すると、森のような場所を発見した。


 非常に都合が良かった為、複数の木を間伐して木材を入手。それを大きめの樽に加工して準備は完了。海へと近付く。砂浜が広がるといっても、砂浜がずっと続いているという訳でもなく、一部には岩場っぽい場所もある。


 俺達はそこに陣取り、まずは塩作りから始める。塩とミネラルは残し、それ以外は捨てて塩を集めていく。もはや慣れた作業なので、そこまで苦労する事もなく大きな樽は塩でいっぱいになった。


 続いて魚醤を作っていくのだが、岩場の近くにはあまり居ないので、沖の方を探ると大型の魚に追いかけられているのを発見。その魚を【念動】で持ち上げて此方まで持ってくる。短剣で処理していきつつ、甕に塩と共に詰めていく。


 最後に神水を少量だけ入れて蓋をしたら、【発酵】を使って促進し一気に魚醤にしていく。終わったら中身を【念動】で持ち上げて甕を【浄化】し、魚醤の部分のみを甕に戻し、要らない物は【粉砕】して海に撒く。薄れたら何かの餌になるだろう。



 「魚醤は出来たけど、タコは~?」


 「今のところ近くにタコは居ないな。この星の海にタコが居るかも分かってないから何とも……居た。しかし何だろうな? このタコ珍しい色をしてるぞ」



 俺は見つけたタコを【念動】で持ち上げたものの、そのタコは最初から真っ赤だった。吸盤も何もかもが真っ赤で、どう形容したらいいか分からない程だ。あまりにも赤いので、これでいいのか? と疑問に思うレベルだ。


 タコは体色を変えるが、それは敵に見つからない為の筈。海の中で真っ赤はむしろ目立ち過ぎるだろう。これはアレか? 毒を持っているタイプのタコかもしれない。



 「とりあえず【浄化】っと……おいおい、結構な反応があったぞ。こいつ予想以上の毒を持ってたな? さっさと始末して干物にするか。すまないなイデアとフィーに任せて」


 「別に良いですよ。美味しい物を食べる為ですし、蓮はタコが手に入るまで駄目でしょうから」



 絞めたタコを再度【浄化】した後、【乾燥】させて干物にした。これが大丈夫かはまだ分かってないので、神薬を用意してから蓮にGOサインを出す。


 蓮は早速タコを噛み千切って食べているが、今までのタコより美味しいらしく物凄く喜んでいる。


 どうも噛めば噛むほど味が出てくるらしく、その味も非常に美味しいらしい。蓮に何も起きていないので、どうやら毒などは完全に【浄化】できていたようだ。


 ホッとしつつ、俺も魚を【念動】で揚げては開き、塩水に浸けてから【乾燥】していく。後はアイテムバッグに入れる前に冷凍すれば完了。これだけで長く保つ食料となる。


 干物作りも途中で切り上げ、森の近くで野営の準備を始めていく。感覚的には夕方前なので焼き場やカマクラなどを急いで作り、夕食作りを始める。


 蓮には麦飯を、イデアにはスープを、フィーにはサラダの用意をしてもらい、俺はシルバーブルの塊肉焼きだ。とりあえず塩を少量擦り込んだ後、神水で薄めた魚醤と水飴を混ぜて表面に塗る。後はじっくりと【加熱】していくだけだ。


 じっくり、じーっくり【加熱】していき、なるべく肉汁や脂が外に出ないように熱を加えていく。無駄だと思える程に繊細に微細に熱量をコントロールし、完成したシルバーブルの塊肉焼き。


 ちょうど塊肉を削いでいると麦飯が炊けたらしく、蓮が土鍋を開けてしゃもじで混ぜている。その後は配膳していき、全員分の準備が終わった。皆も席に座ったので、いただきます。



 「ん~~~!! このおにくおいしい! かむとじゅわ~って、じゅわ~っておにくのしるがね、でてくるよ!!」


 「あ、これ美味しい。何といいますか、歯ざわりとか歯応えがしっかりしているのにも関わらず、噛むと肉汁と美味しい脂が流れ出てきます。それに味が……塗ってあるのと関係なく、脂が甘いのかな?」


 「そうですね。塗ってあるタレも美味しいですけど、脂が少々甘い感じがします。でも美味しい脂ですし、それがタレと混ざると味が変化して面白いですね」



 思っているよりも美味しい肉だったな。もちろん竜の肉ほど美味しい訳じゃないんだが、ヘビーブルよりも上……だろうな。シルバーボーアもそうだが、そこまで強くないのに妙に美味しい奴等だな?。


 今までは強さと美味しさが比例してたんだが……実験惑星だからかな、合わないのは。


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