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 「グォォォ、お、おのれぇ……! いったい何者だキサマ。何故これほどの力を……! こうなれば私の全てを使ってでも、キサマを道連れにしてくれるわ!!!」



 <不死王>とやらの体から大量の瘴気が滲み出し、溢れ、それが意思を持つかのように俺に襲い掛かってきた。どうやら自分の持つ瘴気を全て俺にぶつけて倒す、もしくは俺をアンデッドにしようという魂胆のようだ。



 「ああっ!?」


 「何という事だ!!」


 「こんな量の瘴気を受けては……」



 周りの連中が何か言ってるが、そもそも俺は自分の周りを【浄化】しているので、瘴気が俺に届く事は絶対に無い。<不死王>とやらがやっているのは唯の自殺でしかないし、俺は逃がすつもりは無いので【聖浄】を使う。



 「グァァァァァ!! な、何故だ!? 瘴気を受けて何故耐えられる!!!」


 「何故も何も受けてないからに決まってるだろうが。お前はバカだなぁ……とはいえ、先ほども言ったが脳味噌が無いから仕方ないのかね? 何か他にあるのかと思って待ってるんだが、どうやら奥の手も無さそうだな。瘴気をバラ撒いて見えなくし、逃げるとかいう情けない奴だし」


 「な!? ク、クソォ……! 死ねぇ………【ブレイズボール】!!」



 また飛ばしてきたので【念動】で曲げて、森の外へと飛ばしてやった。着弾してから爆発する系統は逸らせばいいだけなので楽なんだよ。こいつは知らないだろうから仕方ないんだが……しかし、それにしても本当に弱いな? 本物か?。



 「一つ聞きたいんだが、お前は本当に<不死王>とやらなのか? 幾らなんでも、あまりにも弱過ぎるんだが……<不死王>を名乗ってる下っ端とかじゃないよな?」


 「お、おのれ……! 最早これまでならば、全ての力を魔力に変換して道連れにしてやるぞ!!」


 「もうそれ飽きたからいいよ。じゃあな」



 俺はそう言って再び【神聖世界】を使い、裏でこっそり【浄化】して滅ぼした。その結果、残っていたアンデッドも全て動きを停止させたらしく、子供達やフィーがそれも含めて浄化してまわっている、俺も行くか。


 <穢れの森>とやら全域を完全に浄化するべく、俺は走って移動しながら【神聖世界】を使い、溜まっていた瘴気を次々に綺麗にしていった。何度か使うだけで全域を掃除できたので、俺は【念話】で子供達とフィーに南の入り口に集合する事を伝えておく。


 全てを浄化して南に行くと、子供達やフィーが何やら話しかけられていた。雰囲気が悪いわけではないので、おかしな事を言われている訳ではないらしい。



 「あっ、終わったー?」


 「お疲れ様です。<穢れの森>とやらの浄化が終わったようですね」


 「お疲れ様。私達の方は特に問題なく、<不死王>とやらが倒れてからはアンデッドの死体? の掃除をしていただけでした」


 「ただいま、それと皆もお疲れ様だ。<穢れの森>とやらの全域を浄化し終わったから、これで多分ではあるが大丈夫だろう。あの浄化した骨が、本当に<不死王>とやらなのかは分からないがな」


 「あの、先ほどは助けていただき、ありがとうございます。私はノルディッシュ辺境伯の娘、ウェルダ・ノルディッシュと申します。ところで皆様は……?」


 「俺達は……適当でいい、名無しでもなんでもな。わざわざ名乗る気もない。ここは終わったから、とっとと逃げるし」


 「そうそう。私達この国から逃げるから、ここで名乗ったりなんてしないよ」


 「ですね。もうこの国はウンザリですし、国境に砦などがあるかどうかは知りませんが、全てを塞ぐなんて事も出来ません。ボク達ならどこからでも行けますし」


 「ええ。ではそろそろ行きましょうか、この者達も帰るだけでしょう。これ以上、ここに居る理由がありません」


 「ちょ、ちょっとお待ちを! 私達をお助けいただき、<不死王>まで倒されたのです! にも関わらず、なにゆえ我が国を出て行くなどと!!」


 「なにゆえとか言われてもな、お前達の国が拉致や誘拐の犯罪国家だからだよ。……何で怒ってるのか知らんが、異界召喚というのは拉致や誘拐と何処が違うんだ?」


 「異界、召喚………まさか!!」


 「ああ、勘違いするな。俺達はスキル無しとして王宮から手切れ金と共に放り出されてる。ついでにその手切れ金も騎士に返してやった。その結果、俺達はこの国とは何の関わりも無い」


 「な、なんてこと……」


 「まあ、そういう訳だ。じゃあな」


 「あ、ちょっと、お待ちを!!」



 俺は【念話】でタイミングを出し、集まっている騎士達などを避けて一気に走り出す。俺達を止めたかったのかもしれないが、身体強化の足にはついてくる事が出来ないようで振り切る事は簡単だった。


 俺達は真っ直ぐ東へと走り、1時間ほど移動したらその場に止まる。そして焼き場やテーブルなどを作り、遅い昼食作りを始めた。流石に時間の掛かる料理は出来ないので、タコスモドキだが、パパッと作って昼食にする。



 「やっと一息吐いた感じだが、あれが<不死王>とやらだったのか気になるな。【神聖世界】一回で瀕死になるようなのが四大アンデッドだと言われても、何か信用できないというか……納得できないな」


 「【神聖世界】は最高位の浄化魔法ですから分からなくもないですけど、それでも一回で瀕死というのはどうなんでしょう? 今までには【神聖世界】で削らないと倒せない相手とか居たんですよね?」


 「ああ。酒呑童子とかが正にそうだな。おそろしい速さで動くから【神聖世界】の範囲が必要だったし、一発や2発では然したる効果も無かった。呪いも含めてとんでもなかったからなぁ……」


 「呪いと比べるから弱く感じるんじゃないの? ただの邪生って考えたら、大して強くないと思うよ?」


 「成る程な。どこまでいっても邪生の強さって事か。邪生としては強いんだろうが、邪生ではなぁ。今さら相手になるかといえば……ならないだろう。俺達も色々なのと戦ってきたから、今さら邪生では苦戦も無いな。まあ、軍勢タイプだったんだけど」


 「軍勢タイプ、ですか?」


 「そうだ。軍勢というか複数で戦うタイプは、大抵が個としての戦闘力は低い。単体として強くないから群れると言った方が正しいかな? だから四大アンデッドの中で一番弱かったのかもしれない」


 「つまり<不死王>と<吸血公主>というのは単体としては強くなく、<六腕骨>と<黒の未亡人>というのが強力な単体であると。あくまでも予想でしょうが」


 「流石に今のところは予想に留まるさ。そもそも本当に強いかを知るには戦って確かめるしかないしな。その時点で出会って戦ってるんだから、予想なんて関係なく倒すだけだ」


 「確かに戦いになってるなら、もう予想の必要はありませんね。それはともかくとして、異界召喚されたって説明して良かったんですか? この国に戻ってくる気は今のところ無いんでしょうけど」


 「俺としては隔意を持たせられれば十分だと思っている。王宮から手切れにされた奴が四大アンデッドを討伐した。嘘か本当かは知らないが、王宮の側は絶対に認めないだろう。だが、市井の間には噂として出回る可能性はある。そして何より異界人達は弱い」


 「あの強さでは四大アンデッドを倒すのは不可能、だとすれば誰が倒したのか……という事ですね。とはいえ辺境伯家が黙っている可能性はありますけど……」


 「それはない。裏から表に出ない形での問い合わせは必ずあるだろう。少なくとも俺達のようなのが居たかという問い合わせはな。辺境伯も娘の言い分を頭ごなしで否定はせんだろう。<穢れの森>が浄化されているという事実がある訳だし、それを否定する事は無理だ」


 「成る程」



 浄化されている事実がある以上、それを見に行く奴も居そうだしな。確認に行って本当に瘴気が無かったら、誰が浄化したんだ? と疑問に思うのは当たり前だ。


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