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 <実験惑星19日目>



 おはようございます。今日はダンジョンを最奥まで攻略する日です。なのでワイバーンを狩って戻るのは止めよう。朝の日課を終わらせて、紅茶を淹れて飲みつつ静かな時間を楽しむ。昨日は1日休んでいたからか、子供達も早く起きてきた。


 その後のフィーも早かったので、昨日の暇な休みが影響しているのだろう。戻ってきた皆と雑談しつつ片付け、飲み終わったら皆も布団を片付けた。酒場に移動して朝食を注文し、大銅貨4枚を支払ったら席に座って待つ。


 運ばれてきた朝食を食べたら、一路ダンジョンへ。61層まで一気に進み、そこから62層へ。ワイバーンを無視しつつ襲ってくるものだけ倒し、死体は【粉砕】して捨てていく。転移紋を見つけたらさっさと次の層へ。


 どんどんと進んでいき66層、そこは火山となっていた。真っ赤なトカゲが居るのと、空に大きな赤い鳥が見える。噴火はしていないものの熱く、あまり長居したくない場所だ。俺達は適度に魔物を倒しつつ、死体は【粉砕】して進む。


 超魔鉄の武器であっさり殺せるなら、その程度の魔物としか言えないので、無理に素材を持ち帰る必要もない。冒険者ギルドもアレだし、持ち込んだところで面倒な事になるだけだ。どうにも信用が出来ないんだよ、あそこ。


 さっさと倒しながら進み70層。一気にボス部屋の中に入ると、中には黒いオーラを纏う腸の出たゾンビが居た。即座に【浄化】し、あっさりと朽ちて粉になったゾンビ。俺にとっては普通の魔物よりも弱いな。権能のおかげではあるんだけど。


 71層に到達すると、そこは野営層だった。ここまで来て野営をする奴が居るのかは謎だが、まだ野営層があるとは驚きだ。特に休憩をする事もなく俺達は72層へ。


 そこは草原であり、牛と猪が見える。ただしどちらも毛が銀色という訳の分からない牛と猪だが……。俺達は進路上の牛と猪を倒すと、一応血抜きをして収納していく。仮称シルバーブルとシルバーボーアでいいか。どうせここまで来れる奴なんていないんだから、名前なんて適当でいい。


 美味しい可能性が高いので、倒しては血抜きをしてゲットしつつ先へと進んで行く。そして76層、そこは黒い色の荒地だった。出てくるのは黒いスケルトンと黒いゾンビ。ちょっと前にボスだった奴等だが、俺は【神聖世界】を使って浄化していく。


 使ってみて分かったが、【聖浄世界】でも一撃で浄化される程度のようであり、そこまで強い奴等じゃなかった。子供達もフィーも【聖浄四重浄化】や【神聖八重浄化】で倒している。


 それはいいのだが、ボロボロ崩れるだけで何も残さない為、一番金にならない層だ。しかも地形が黒くて汚染されているらしく、浄化して綺麗にしながら進む必要があるという面倒臭さ。急に厄介な環境になってるんだけど、どうなってるんだ?。


 そんなことを愚痴りつつ80層。ボス部屋前で少し休憩し、体力などを回復。そのついでに猪を取り出し、旨味の詰まった干し肉にする。いつも通りに作ったが、シルバーボーアの干し肉もなかなか美味そうだ。



 「なかなかじゃなくて、美味しいよ? なんかね、美味しい味が染み出してくる。噛むと美味しいのが続くから、ずっと噛んでたい」


 「さすがに小さくなったら飲み込もうよ。でも美味しいから気持ちは分かる。なんだか急にお肉の味が上がってるよね? デスボーア以上に美味しいかもしれない、デスボーアより強くないのに」


 「デスボーアという怖い名前の猪を知りませんが、強さに比例して美味しくなるのなら、シルバーボーアもかなり強い魔物なのでは? だからこそ、これ程に美味しいのだと思いますけど……」


 「まあ、俺達にとっては大して強くない魔物でも、普通の冒険者にとっては決死の覚悟で戦わなきゃいけないか、殺されるしかない相手の可能性もある。超魔鉄が効いたが、そもそも普通の冒険者の武器じゃ切れない可能性もあるしな」



 適度に休憩してリフレッシュしたら、緊張感を持ち直してボス部屋へ。中に入るとそこは黒い空間で、中には何も……いや、居る!!。


 俺は即座に【神聖世界】を使い、部屋の中の黒い部分を白く変える。すると、目の前には空中に浮く黒い剣と盾があった。その剣と盾は素早く空中を回転すると、切っ先を俺達に向け、貫かんと突っ込んできた。



 「皆、逃げ続けろ!! その間に浄化して倒すから、とにかく武器を使って流して凌げ!! 直撃するんじゃないぞ!!」


 「「「了解!」」」



 特に剣がヤバいがそうも言っていられない。結構な速さで真っ直ぐ突っ込んで来る剣なんて、ふざけるなとしか言えない存在だ。俺は逃げられないように【神聖世界】を連発する。流石に2キロもの大範囲の魔法は避けられず、剣と盾の動きは明らかに遅くなってきた。


 それでも慎重に浄化魔法を連発し、最後は一気に全力で【浄化】。剣と盾を完全に停止させる事ができた。やれやれ、まさかボスが無機物とか、どうなってんだよ、まったく。



 「おつかれー。まさかボスが勝手に動く剣と盾とはな。想像もしていなかったが、攻撃と回避を同時に行う面倒臭い奴等だった。皆は無事か?」


 「大丈夫」


 「こっちも大丈夫です」


 「私も問題ありません。それよりもこの剣と盾はどうしますか?」


 「どうって言われてもな? それなりに良さ気な物っぽいんだよなー……。剣と盾でちょうどいいし、バラバラに持つよりフィーが持ったら良いんじゃないか? 片手剣と盾なんだし」


 「………持っても大丈夫そうですし、普通に剣と盾ですね? 先ほどのように勝手に飛んだりはしないようです」


 「普通に使えそうならそのまま使えばいいし、駄目ならアイテムバッグで死蔵だな。それじゃあ先に進むか、って言いたいんだが……アレってどう考えても脱出紋だよな? あれしかないって事は……」


 「ここで終わりー?」


 「だと思うけど……」


 「とりあえず行ってみましょう。入ってきた方は閉まってますし」



 俺達は開いた通路の先の、脱出紋らしき地面の紋様に乗る。すると紋様は輝き、俺達はダンジョンの外に出された。やはりこのダンジョンはあそこで終わりらしい。それにしても全部で80層のダンジョンかー……長かったなぁ。


 疲れた俺達は食堂に行き、大銅貨2枚を支払って麦粥を注文する。どうせ美味しくないなら麦粥の中に肉と野菜を入れて煮込めばいいのに。そんな事を思ってはいても口には出さず、黙々と食事をして、さっさと宿へと戻る。


 昼は過ぎていたみたいだが、中途半端な時間に戻ってきたなと思いつつ、皆でゆっくりと休む。ダンジョンの奥は妙に黒いのが多かったが、あれは邪気というか瘴気のような物だったんだろう。それに塗れていた剣と盾が分からないが。


 フィーはその剣と盾を出して、色々と確認しているようだ。剣は幅広で真っ直ぐ、全長は80センチほど。グラディウスと言うのがしっくりくる見た目の、頑丈そうな剣だ。盾の方はラウンドシールドとしか言えない丸い形状をしている。


 直径60センチほどの大きさで、扱いやすそうな盾だ。盾の前面には装飾が施されているというか、紋章が描かれている。とても分かりやすい紋章で、描かれているのは翼のある蛇だ。3対6枚の翼を持つ蛇。


 この紋章が大きな意味を持つ可能性もあるので、人前では出さない方が良いのか? 何かそんな気がしてくるが、かといってそこまでの物なのかも分からない。単にそういう装飾なだけとも見えるし……。


 でもなー、80層にあった剣と盾なんだよ。気にするくらいで丁度良いとも思う。


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