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 強引に昼食を終わらせた俺は、焼き場などを壊して更地にしていく。それを見て驚いている3人を尻目に俺達は準備を整える。別にこいつらに付き合う必要も無いしな。



 「そういえば貴方達は何故この層に来たの? ワイバーンが狩れる貴方達が来る必要は無いわよね?」


 「ランクが4になったんでダンジョンの獲物を納品する仕事が請けられるようになったんだよ。で、色々確認した結果、42層から出てくるジャイアントスパイダーの糸袋が手っ取り早いんじゃないかと決まった訳だ」


 「まあ、そちらの実力であれば手っ取り早かろうな。普通はかなり念入りに準備などをするのだぞ? 糸で絡めとられてしまえば身動きがとれんし、顎の力は極めて強い、噛みつかれれば間違いなく死ぬような相手なのだが……」


 「それでもワイバーンに比べれば圧倒的に弱い訳ですし、アレを簡単に狩るような人なら苦戦はしないでしょう。余裕を見せて……というのも考え難いですし」



 そんな助言ともつかない事を言われたが、俺達は曖昧に返事をしてさっさと先へと進む。あいつらに付き合ってたらダラダラと過ごす羽目になる。そう思った俺は転移紋で42層へと進み、森の中を【探知】と【空間把握】で調べていく。


 蜘蛛の姿は簡単に見つかるし、蛇の姿も簡単に見つかる。この層の蛇は依頼に無かったので、殺したら【粉砕】して放置し、蜘蛛を倒したら解体して糸袋を取り出す。袋は【融合】を使って漏れないようにくっ付けてしまい、そのままアイテムバッグの中へ。


 死体の残りは【粉砕】して処分。それらを続け、ある程度倒したら次の層へ。それらを繰り返し、十分な個数を集めたら脱出してギルドへ。


 受付嬢の所へ行き納品する店を聞いたのだが、一旦糸袋の品質を見なきゃいけないらしいので、アイテムバッグから取り出して受付に置く。俺がどんどんと取り出すので途中で止められ、一つ一つ品質をチェックしていく事に。



 「あの……ここまで傷も無く完璧ですと、どうやって? という疑問が湧いてくるのですが……」


 「どうやっても何も、蜘蛛をぶった切った後で糸袋を取り出し、傷付かないように口の部分を縛っただけだ。それ以外に何もしてないが? 何処に疑問を持つ場所があるんだ?」


 「いえ、糸袋が全く傷付いてもいないので……普通は多少傷付いたり漏れたりするものなのですが、そういった物は一つも確認出来ませんでしたから」


 「そりゃ無いんだから確認のしようも無いだろう。そんな金にもならなさそうな物を持ち帰ったりしないし、金にもならない殺し方をする訳が無いだろう」


 「えーっと、まあ、はい、分かりました。ジャイアントスパイダーの糸袋61個、問題ありませんでしたので、北東区のアモイトという店に納品をお願いします。終わったらサインを受け取ってきて下さい」


 「了解」



 俺達はギルドを出て北東区へと行き、アモイトという名の店に入る。そこの店員にジャイアントスパイダーの糸袋の納品に来た事を言うと、奥へと通された。奥では店の職人が待ち構えていたが、俺はその職人の前で糸袋を出していく。


 全ての糸袋を丁寧に調べた職人は、61個全てが問題無い事を言い、紙にサインを書く。やたらに喜んでいるので不思議に思っていると、どうも糸袋が入荷する事は多くないらしい。理由は知らないそうだ。


 だが高級な衣服には必要な糸であり、同時にこの糸で反物を作ると最高級品として売れるんだそうな。それも大量の糸袋が必要なのだそうだが、61個もあればドレスの一着は作れるらしい。


 逆を言えば、61個もあってドレス一着分にしかならないのかとも思うが、そのドレスは大金貨で取り引きされるドレスに化けるんだと。そりゃ職人が大騒ぎする筈だと納得。ちなみに王が式典で着用しているのも、同じ反物から作れられてるんだそうだ。


 見栄を張らなきゃいけないって大変だねえ、と思いつつ店を出た俺達は、さっさとギルドへと戻っていく。その道上でチンピラ高校生を含めた異界人達とばったり出会った。何故か異界人の女性に肩を貸して歩かせているが、チンピラ高校生が顔を真っ青にしている。


 気になって見ていると、足が抉れて血だらけになっていた。止血はされているのか血は止まっているようだが、脛の横の肉が抉れていて歩けないらしい。チンピラ高校生が真っ青になっているという事は、おそらくアイツの所為なんだろう。


 俺達はそれを見つつスルーしてギルドへ。受付嬢にサインが書かれた依頼の紙を提出し、報酬の大銀貨30枚をもらう。1個は俺達が押し付けた分だから含まれていない。俺とフィーが7枚で子供達が8枚に分け、ランク5と書き換えられた登録証を受け取る。


 その後、俺達がギルドを出ようとすると異界人達が入ってきた。



 「すまない、誰でもいい! 誰か彼女を治療できる者はいないか!? 3層でネズミに齧られてしまったのだ。仲間を庇った結果、足を噛まれてしまい肉が抉られてしまった。誰か治療できる者はいないか!?」


 「そもそも浅層の石壁迷宮は、下から攻撃してくる奴しかいねえ。何で脛当て含めて防具を着けてねえんだ? お前らダンジョンを舐めすぎなんだよ。自業自得じゃねえか、バカどもが」


 「そうそう。騎士達はともかく、そこの奴等は殺し合いの自覚がねえのかよ。自覚があったら情報ぐらい仕入れるだろうが。それもせずに突っ走ったバカが悪いんだよ」



 周りからそう言われ、高校生リーダーを含め数人は周りを睨んでいるが、チンピラ高校生は真っ青な顔をしている。女子高生は未だに我関せずって感じだな。面倒臭いが仕方ない。チンピラなら絶対に助けないんだが、被害者っぽいしな。


 俺はコップに多少の神薬を入れて女性に近付き、有無を言わせずに強引に飲ませた。周りの異界人が俺を睨んでくるが、女性は悲鳴を上げた後に足を押さえる。肉が膨れ上がってきたから痒いんだろう、たぶん。


 俺はコップを仕舞い、とっととギルドを出ようとすると、流石に高校生リーダー君が文句を言ってきた。



 「怪我をしている女性に何をするんです! スキル無しで王宮から出されたからって、こんな事をしていいと思っているんですか!?」


 「ほー、ほー、成る程な。良い子のフリして、君も同じだったか。そこのチンピラ高校生、そして捻くれ女子高生の性格がクソなのは分かっていたが、君もそうだったと分かって何よりだ。あと、俺が女性に飲ませたのは薬だ。今は急速に治っているから痒くてたまらないだけだな」


 「「「「「えっ!?」」」」」



 女性は声をあげていたが、ようやく治まったようだ。女性のズボンを上げると、抉れていた肉が盛り上がっており、色は変わっているが完璧に治っていた。それが分かったんだろう、慌ててギルド内の全員が俺を見てくる。



 「何で俺を見てくるのか知らんが、あの女性は比較的まともそうだったから助けてやっただけだ。お前らクズ高校生なんぞ助ける気も無いんで、勘違いするなよ。お前らは他人を見下しながら死んでいけ」



 俺はそう言ってギルドを出た。さて、彼らは俺が<高校生>と呼んだ意味を理解してるのかね? 制服を見て高校生だと分かるという事は、それを知っていないといけない。つまり、制服を見て高校生だと分かる知識があるという事だ。


 理解出来るのかは難しいところだが、彼等が理解できようがどうでもいい。所詮は他者を見下す恥ずかしい連中、という部分は変わらないしな。気付いたところで悶絶するか、それとも逆恨みをしてくるか。


 仮に裏でコソコソするなら聖人にしてしまえばいい。それこそ高校生3人は変えず、その周りだけ聖人にしてやろうかな? 周りが善に狂うって、なかなかの恐怖だろう。


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