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 <実験惑星17日目>



 おはようございます。今日はワイバーンを売った後、依頼を見てから獲物を決めます。朝の日課を終わらせて、紅茶を淹れて飲みつつ考える。それはあのチンピラ高校生についてだ。いちいち突っかかってきて面倒臭いが、未だに納得はしていない様子だった。


 戦いも何もかもが素人なのに、何故あそこまで調子に乗れるのか理解出来ないが、何処かで一度叩く事になるだろう。あれ系は叩かれないと理解しない、それ程までに頭が悪いからな。そのタイミングが来たら迷わず叩き潰そう。


 子供達とフィーが戻ってきたので思考を切り替え、皆と雑談を行う。飲み終わったら部屋を片付けて酒場へと移動し、小銀貨1枚を支払い大銅貨6枚をお釣りで貰って朝食を注文する。席について待っている間に噂を聞いても、異界人のものばかりだった。


 俺は聞くのを止めて雑談し、運ばれてきた朝食を食べる。終わったら一路ダンジョンへ。時間が似ているのか再び異界人一行と会ったが、いちいち突っ掛かって来る事は無かった。チンピラ高校生はずっと睨んで来ていたが。


 俺達は当たり前のようにスルーし、1層の北西へと進む。そこから31層へと移動したら、北の丘から61層へ。そこから進み62層、ワイバーンを5頭狩ったらさっさと戻り、ギルドの解体所で出したら木札を貰う。


 それを受付嬢に渡して小金貨5枚を貰ったら、魔物の納品依頼を見に行く。貼り出してある紙をジッと見ていくと、42~45層の森に住むジャイアントスパイダーの糸袋があった。あそこならそこまで遠くないので楽だし、行ってこよう。


 そう決めた俺は再びダンジョンへと行き、今度は31層から進んでいく転移紋に乗る。身体強化を使いつつ一気に走って行き、41層の野営層についたら昼食作りを始める。何故か今日はここに<紅の旋風>が居た。


 俺達は会釈した後、川近くに焼き場などを作り、蓮には麦飯を炊いてもらい、イデアにはスープを作ってもらう。俺はワイバーンの肉を取り出して山形の鉄板、正しい形状はジンギスカン用の鉄板を作り準備をしていく。


 肉を切って準備をし、野菜も適度な大きさで準備をしたら、イデアの手伝いを行う。それも終わり、後は蓮の麦飯が炊ければ食べられるというタイミングで、<紅の旋風>のティーリマと知らない奴等2人がやってきた。



 「まさか61層まで行ける貴方達が、ここ41層に来るとは思わなかったけど、今の内に紹介してほしいらしいから紹介しておくわ。こっちが<栄光の頂>のゴルデラッソ。で、こっちが<影の墓標>のデラント。見た目は子供だけど注意した方がいいわよ」


 「私が<栄光の頂>のゴルデラッソだ。よろしく」


 「僕は<影の墓標>のデラント。こう見えて<影の墓標>のリーダーをしています」


 「俺はアルドゥラム。皆からはアルドと呼ばれてるのと、一応はリーダーという事になる。チーム名とかそういったものは無いがな。ところで紹介というのは分からなくもないが、何の為に?」


 「それは、あの若い3人組の1人が面倒だからよ。騎士がついてるし、間違いなく異界人なんでしょうけど、スキルを持っている事を鼻に掛けているわ。スキル持ちにありがちだけど、国が後ろについているというのは鬱陶しいのよ」


 「そうだ。アンデッドとの戦いにおいて、おそらく有利となれるスキル持ちなのだろうが……それだけでアレコレと指図されたり巻き込まれる恐れもある。我等にとっては甚だ迷惑でしかない」


 「正直に言ってアンデッドとの戦いなんて国の仕事です。僕達がやるべき仕事でも何でも無いんですよね。そもそも冒険者は自由業ですし、国から依頼があっても引き受けるかどうかは別です。ですが軍を使われると……」


 「力で強制される可能性が高いってわけ。いつもなら冒険者が逃げる可能性があるから使わないけど、アンデッドに有利なスキルを持つ異界人に協力しろと言われたら断るのは難しいわ。それに、幾らクランでも軍の圧力に対抗するのはね……」


 「……すまん、それで何が言いたいんだ? 俺達は冒険者になって日が浅い。ハッキリ言ってくれないと分からないんだが……それとも愚痴を零したいだけなのか?」


 「ああ、いえ、ごめんなさい。私達が言いたかったのは、何か国が言ってきた場合に協力しないかという事よ。貴方達に組織力は無いかもしれないけど、代わりに実力があるでしょう? そもそも毎日ワイバーンを納品するなんて信じられない事をしているんだし」


 「まあ、協力するのは構わないんだが……俺達の方に何か言ってくる事は無いと思うぞ? たった4人だし、うち半分は子供達だしな。それに有名でもな「炊けた!」いし無視、お疲れさん」



 蓮が炊けたというので茶碗を出し、塩を振っただけのワイバーン肉を早速とばかりに焼いていくイデア。上に乗せて焼いていき、縁の部分には野菜を置いていく。説明しておいたので使い方はしっかり分かっている様だ。


 ジンギスカン鍋を見てティーリマとゴルデラッソは不思議な物を見る顔になっているが、デラントは驚いても不思議がってもいない。やはりコイツは……。



 「デラント少年は桜が好きか?」


 「えっ? 別に僕はそこまで桜は……!?」


 「ふむ。桜を知っているとういう事はそういう事か。蓮は当たってたな、予想通りだぞ」


 「んー……? あ、転生者!! お肉の焼け具合を見てたから、何の事か分からなかった。転生者っていうのはねー。死んだ人が知識とか記憶を持って、別の星で生まれる事を転生っていうの。だから別の星の記憶を持ってるんだよ」


 「別の星……?」


 「そうだな。空を飛ぶ乗り物があったり、高速で動く乗り物があったり、魔物の居ない星だったりする訳だ。な、デラント少年」


 「………ふぅ。貴方もそうなんですか?」


 「俺はちょっと違うが、似た者ではあるかな? この星で異界人と呼ばれてる転移者。あれと同じ時に召喚されたのが俺達だ。ただ俺達は水晶を触った時にスキル無しと判明して放り出された」


 「……王宮も碌な事をしないわね。貴方も異界人だったというのは予想の範疇にあったけど、ワイバーンを軽く討伐出来る者を放り出すなんて頭が悪過ぎる……あ、どうも」


 「すまん…………この肉は美味いな。いったい何の肉なのだ?」


 「これはワイバーンの肉だ。俺達の着けている鎧を作る為に狩ったワイバーンの肉だな。無駄に捨てるのも勿体ないし、かといって皮と翼膜以外はそこまで必要も無かったんで、冷凍して保存してあるんだよ」


 「「「ワイバーン………」」」



 ワイバーンの肉に驚いているようだが、俺達からしたらヘビーブルやデスボーアにも負けている肉でしかない。それでも他の肉よりはマシだがな。飛ぶ魔物だからか牛肉と鶏肉の間みたいな感じなんだよ、肉質が。


 噛むと美味いんだけど、肉汁が大量に滴る肉じゃない。それでも美味い肉汁は溜まってるので、それで野菜が煮られていて美味い。ジンギスカンを楽しんでいると、デラント少年が麦飯を見て何とも言い難い顔をしていた。



 「それって麦飯ってやつですよね? 古い時代の食糧難の時に食べてたって聞きますけど、美味しくないらしくて食べた事ないんですよ。もしかして、本当は美味しいんですか?」


 「いや、米に比べたら美味しくないぞ? ただし大麦は栄養価が高いんだよ。体に良く太り難いうえ、各種ビタミン類も多い。小麦よりも体に良いんでな、それで俺達は食べている」


 「あー……久しぶりにビタミンという言葉を聞きましたよ。確かにビタミン系を含めた栄養価を考えると、小麦よりは大麦の方が体に良いのか……。しかも炊けるし」


 「炊くには押し麦にしなきゃいけないから、結局やらないんじゃないか? それこそ大麦を売る商売をするか、一大産業にでもしない限り値段は下がらない気がするぞ?」


 「押し麦……?」



 どうやらデラント少年は、あまり詳しくないらしいな。ティーリマとゴルデラッソはワイバーン肉をたらふく食ってるだけだが。


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