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 夕食を食べてさっさと宿に戻った俺達は、宿の部屋でゆっくりとしている。適当な雑談をしているものの、感じの悪い高校生に怒っている蓮とイデア。分からなくもないが若いなぁ……って、まだ子供だった。



 「むー……イヤな奴だよ、アイツ!」


 「まあ、言いたい事は分かるけどな。だがアイツ他の冒険者にも喧嘩を売ってたんでなぁ……ハッキリ言って馬鹿でしかないんだよ。周りの冒険者にも睨んでいる奴は多かったし、立場が悪くなってるぞ、確実に」


 「そうでしたね。お付きなのか目付け役なのか知りませんけど、何人か居る騎士も顔をしかめていました。連携もとれていないみたいですし、もしかしたら現実を突き付ける為に連れて来たのでしょうか?」


 「命のやりとりをさせて、相手を見下すような態度を改めさせる……って事ですか?」


 「そうです。ああいう輩は何度説教をしても無駄でしょう。ならば命の危険性を無理矢理に教えた方が上手くいくと思います。過去の私の記憶をかんがみても、その方法が矯正の方法としては一番良いでしょう」


 「まあ、ああいう奴には一番良い方法かもな。自分が死ぬかもしれない所に放り込まれると自覚すれば態度も変わるだろう。それでも変わらなきゃ何処かで死ぬだけだ。戦いというものは甘くない」


 「確か【聖盾術】とかいうスキルだった筈ですから、案外命を守るには良いんじゃないですか。問題は前に出られるのか、というところでしょうけど」


 「盾関係は最前線で守らなきゃいけないんだが、あの性格だと逃げ出しそうな気がするなぁ……。大丈夫なのか? と思わなくもないが、案外一番厄介なのは女の子の方かもしれん」


 「何も喋ってなかったよ? おかしな感じもしなかったし」


 「ああいうタイプは一歩引いて見てるだけって可能性がある。興味無しって感じならいいが、あの女の子のスキルは【聖弓術】というものだった筈。近付かなくていいからと、高を括ってる可能性はある」


 「ああ、弓系のスキルなら遠距離攻撃ですからね。自分は高みの見物って感じですか。可能性としては無くはありませんね」


 「あの女の子、完全に我関せずって感じだったんだよな。興味なしというか、どうでもいいというか。あそこで冒険者の不評を買うという損を自覚しているのか……、してないだろうなー」


 「いまだに自分達が召喚されたという現実を理解していない可能性もありますね。今から自分達は何の関係も無い人達の為に、命を懸けて殺し合いをしなければいけない。その自覚が無い可能性が」


 「まあな。現実感も自覚も無いなら、ああやって他人を見下すのも分からなくはない。あの阿呆に苦言を呈していた少年も、果たして本当に自覚しているのやら……」



 子供達がウトウトし始めたのでベッドへ連れて行き、寝かせてから【昏睡】を使う。その後に抱きついてきたフィーをさっさと撃沈させ、綺麗にしたら服を着せてベッドへ。


 部屋と体を綺麗にしたら寝るんだが、あの高校生3人組の気配が南東からするぞ? あの区画は金持ちとか大きな屋敷がある区画だが……。もしかして領主か何かの家を使ってるのかね? 贅沢な奴等だ。


 まあ、気にする必要もないな。今日も一日お疲れ様でした。



 <実験惑星15日目>



 おはようございます。今日は新しい仕事をする日です。ワイバーン5頭を納品してからだが、果たしてどんな仕事があるのやら。ランク1~3は一纏めにされるくらいだからなぁ、大した仕事は無いだろう。


 朝の日課を終わらせて、紅茶を淹れて飲みながら考える。配達系か、それとも運搬系か。または解体の手伝いとかか? そんな事を考えていると子供達が起きたので、挨拶した後に見送る。その声でフィーも起きたらしい。


 フィーにも挨拶した後で見送り、俺はゆっくりと紅茶を飲む。帰ってきた3人と紅茶を飲みつつ雑談し、終わったら片付けて酒場へ。小銀貨1枚を支払い、大銅貨6枚のお釣りを貰って朝食を食べたら、ダンジョンへと移動する。



 「おっ、スキル無しじゃん。何でお前らこんなトコに居るんだ? 大人しく今日もドブ掃除してろよ」


 「止めろ、ショウリ。いい加減にしろよ。周りからどういう風に見られてるか分からないのか!」


 「へーへー。どうせスキルの無い奴等の醜い嫉妬だろ、下らねえ」


 「………」



 どうやら女の子は俺の予想通り、一歩引いて周りを見下してる感じだな。堂々と見下す奴と、口には出さないが顔に出てる奴。どっちも碌なもんじゃないが、社会に出てないから隠す術も身につけていない。総じて若いねえ、としか言い様がないな。


 そして信用、信頼というものを甘く見てる。これも若い奴にありがちだし、本当にありきたりな若者ってところだ。自分達がよくいるタイプだって自覚ないのかね?。


 俺達の方が先なのでさっさと入り、北西へと向かって歩く。一旦止まって時間を空けてから入るというマナーすら知らないらしく、間を空けずにダンジョンに入ってきやがった。こいつら襲われても知らんぞ。



 「おいおい、スキル無し野郎が何勝手に逃げてんだ。おい、待てよ! まだこっちの話は終わってねえぞ!!」


 「ショウリ、いい加減にしろ! お前がやってる事は最低な事だぞ!!」


 「うるせえ! オレに指図すんじゃねえよ! 昔からテメェはいけ好かないヤツだったけどよ、いちいちオレに関わってくんな! 鬱陶しいんだよ!!」



 あいつら自分達がどれだけ恥ずかしい事してるか分かってないんだろうなあ。俺達は気にせずさっさと北西の扉へと行き、鍵を開けて入ると閉じた。その後、外からショウリとかいうヤツの声と扉を叩く音がするが、開ける事はできないので無視して31層へ。


 31層に着いたら北の丘へと進み、丘の中の転移紋から61層へと進む。62層でワイバーン5頭を狩ったらダンジョンを脱出。ギルドの解体所でワイバーン5頭を渡し、木札をギルドの受付嬢に渡す。


 小金貨5枚を貰って分けた後、依頼の貼ってある掲示板に行き、どれを請けるかを皆で話す。



 「手紙の配達ってあるけど、これ隣の村とか2つ隣の町だよ? 行って帰ってくるのに時間掛かっちゃうから、これは駄目だね」


 「分からないよ? その分早く上に上げてもらえるかも。だってこのランクの普通の冒険者じゃ乗合馬車なんて使えないし、そんなの使うと赤字だからね。これ徒歩で持ってく基準でしょ? となると4日から5日は配達に掛かるんだから、その分早く上がれるようにしてあるんじゃないかな」


 「でないと割に合わないもんね。もし簡単なのと変わらないなら、排水溝の掃除の方がマシだよ」


 「あれは臭いけど、それを我慢すれば簡単な仕事だからね。何故か誰もやりたがらないみたいだけど」


 「臭いのがヤなんだろうけど、疲れるからじゃない? 半日で1区画。それで小銅貨40枚だもん。お金に余裕があるから良いけど、普通の冒険者は余裕無いから嫌なんじゃないかな?」


 「でも小銅貨40枚って、中銅貨8枚だよ? 1日の宿代とか食事代で言えば生活できるよね? まあ、1人ならだけど」


 「蓮達でさえ4人だから、報酬が合ってないんだろうね」



 周りの傭兵達が「うんうん」と頷いてるって事は、やっぱりあのドブ掃除は報酬が合ってないんだな。領主の側から出してるっていうけど、報酬をケチってる訳か。生活すら難しいってなったら誰も請けないわな。


 もしかして誰かが騙されるまで貼り出し続けてる? いや、ギルドとしては貼り出し続けるしかないのか、領主からの依頼だし。権力側からだから詳細を説明する訳にもいかないし、先輩がコッソリ教えるくらいかね?。


 おっと運搬系の仕事があるぞ? 馬車に荷物を乗せるっていう仕事。これも重労働系だな。まあ、身体強化が出来る俺達からしたら簡単な仕事だ。これを持ってくか。


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