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「何か色々なクラン? の話をしてたね。その中でも、大人顔負けの子供っていうのが怪しいかな。何だか転生者な感じがする」
「本当にそうかは分からないよ? ただ、大人顔負けなくらいに戦うのが上手いだけかもしれないし。転生者の話をしてたからって、必ずそうとは限らない。実は大した事無いって可能性もあるし」
「私としては<地図連合>というのが引っ掛かりました。色々な所にクラン員というメンバーが常駐している。そのうえ地図を作る事をしているとなれば、私達に関わってきそうな気がします」
「確かに。その可能性も十分にあるな。しかも地図の為に俺達に連れて行けとか言ってきそうでもある。当然、断るが」
「断るの? ……あー、お荷物だからかぁ」
「そういう事だ、蓮。荷物を抱えてダンジョンを行く。正しくは詳しく調べるなんて自殺行為でしかない。足手纏いなんて死亡確率を引き上げる存在でしかないからな。そんな者は不要だし、押し付けてくる連中の事など断るに決まっている」
「当たり前ですね。こちらの命を危険に晒してまでする事ではありません。本当に地図を作りたいなら自分達の実力を引き上げればいいだけです」
子供達ですら理解しているが、自分の実力以上の高望みなどするべきではない。それをしたところで、大抵の場合は身の破滅という結果で終わる。極稀に成功したりするが、それは運が良かったに過ぎない。
そんなものに命や人生を賭けるのは唯の阿呆でしかない。……おっと、退屈な会話過ぎたのか子供達がベッドに寝転がった。俺は子供達に【昏睡】を使い深く眠らせると、フィーを撃沈して寝かせる。
部屋と体を綺麗にしたら、俺も寝よう。今日も一日お疲れ様でした。
<実験惑星9日目>
おはようございます。今日も62層でワイバーンを倒す日です。ちょっとの間はこれが続くけど、お金稼ぎの為なので仕方ない。朝の日課を終わらせて休み、子供達とフィーが起きたら挨拶。宿を出て酒場へ。
小銀貨1枚を支払って大銅貨6枚のお釣りを貰い朝食を食べたら、ダンジョンへと移動。62層へと進みワイバーンを5頭狩る。それが終わったらダンジョンを出てギルドへと行き、ワイバーン5頭を売って小金貨5枚を得た。
俺が2枚で皆に1枚ずつ渡し、食堂に行って大銅貨2枚を支払い昼食。蓮とイデアは渋い顔をしたので、やはり美味しくない昼食は厳しいようだ。でも酒場は開いてないんだよな。昼だけは閉まってるんだよ、おそらく食堂の為なんだろうけど。
ちょっと鍛冶屋を巡り鉄を5キロ仕入れる。小銀貨3枚だったので支払い、次は食料店へ。色々探していると発見したので、紅茶の茶葉を小銀貨2枚分買う。ついでに小銀貨5枚を大銅貨50枚に両替してもらった。
紅茶を大量に買ったので嫌には思われなかったようだ。ついでに大麦を小銀貨2枚分買って宿へと戻る。子供達は不思議そうな顔をしているが気にしないでくれ。
部屋に戻った俺は、大麦に神水を【浸透】させ十分に水を含んだら、日光の当たる場所に置き【熟成】する。これで強制的に芽が出るので出させ、3センチくらいになったら【乾燥】。これで乾燥麦芽が出来た。
すっかり忘れていたので慌てて食料店に行き、ジャガイモを小銀貨1枚分買って帰る。宿の部屋に戻ったらジャガイモを【粉砕】し、神水を入れてデンプンを【抽出】。水分とデンプンだけにしたら【念動】で浮かせ、デンプンだけを【抽出】。
これでデンプンの粉が完成。面倒臭いなと思いつつゴミなどを【分解】で消し去ったら、デンプンの粉を神水に溶かす、十分に溶けたら【加熱】しつつ【念動】で混ぜる。ドロドロになったら【加熱】を止めて温度を下げていく。
ここが難しいのだが、これぐらいだろうと思った温度で乾燥麦芽を投入。そして一気に【熟成】していくと、ドロドロがサラサラになっている。最後にサラサラ部分だけ取り出して【乾燥】させ、水分量を減らしたら完成。やっと水飴が出来た。
「水飴? ……うん、ちょっと甘いね。……何でコレを作ったの?」
「うん? そりゃ簡単だ。ハチミツが無いし売ってないからな。蓮もイデアもハチミツが無いと嫌がるだろ、だから水飴を作ったんだよ。後、暇だったのもある。沢山作った訳じゃないけど、それなりに作ったから凍らせて保存しとこう」
「それより紅茶が飲みたいですから、茶葉をもらえませんか?」
「おっ、いいぞ」
俺は1回分の茶葉をイデアに渡し、鍋と神水も渡した。後は勝手にイデアが紅茶を淹れるだろう。そう思って放っておいたら、あっさり淹れてコップに移している。その後で水飴を入れて溶かしているな。ハチミツより甘くないから、どうかね?。
「確かに甘さが少ない感じですけど、これはこれで良いんじゃないですか? ボクは悪くないと思います。普通に舐めて食べられるくらいですし」
「うん。あんまり甘くないけど、これはこれで美味しいよ。それよりも紅茶が飲める方が良い。神水も飲むけど、そればっかりだと飽きるし。紅茶が売ってて良かった」
「それはそうですけど、意外に高い物ですし、小銀貨を払ったのにそこまで多くは買えませんでしたね? 貴族とかが高値にしているのでしょうか、それとも商人が?」
「どっちかは分からないな。俺の元居た星じゃ、古い時代において茶は高級品だったし……仕方ない部分はあると思う。特に貴族が高値で買い占めると、余計に値段が上がるんだと思うぞ?」
「貴族が高値で買うのであれば、商人が値段を下げる理由がありませんね。高く売れるにも関わらず、わざわざ安値にする者などいませんし」
俺とフィーはストレート、子供達は水飴を入れて飲んでいると夕方近くになっていた。水飴作りに時間が掛かった所為だが、たまには悪くあるまい。そう思いつつ、酒場へと移動し大銅貨4枚を支払って夕食を注文、席に座る。
適当に雑談をしつつ待っていると、近くから意外な話が聞こえてきた。
「何でも異界召喚で召喚された奴等、一応の訓練が終わったらしくてココに来るんだってよ」
「召喚された奴等って10日ぐらい前じゃなかったか? たったそれだけの短い訓練期間で戦わせるのかよ、ズブの素人のままじゃねえか。冒険者の新人じゃあるまいし、簡単に死んじまうぞ?」
「さあな。死んじまっても良いのか、それとも実戦で訓練させるのか知らねえけど、オレ達みたいな者にまで本当の事は伝わらねえだろ。何かしら考えがあんじゃねえの? 凄いスキルとか持ってんだろ?」
「異界召喚の奴等って、戦った事も無いのにスキルを持ってるんじゃなかったか? だとしたら凄いスキル持っててもあっさり死ぬと思うけどな?」
「オレに言われたって分かんねえよ。お偉い方々が何ぞ考えてんじゃねーの? もしくは捨て駒か。オレ達に直接関わらねーなら何でもいいさ。ダンジョン案内しろとか言われたら、ふざけんなって思うがな」
「足手纏いを連れて行くなんて勘弁してほしいからなぁ。そんなの誰も請けないだろうし、何処の有名クランであっても拒否するさ。碌に戦闘もできなきゃ実戦経験も無いんだろ? 自分達で必死に頑張りゃいいんだよ」
普通は誰だってそう思うよなぁ、好き好んで足手纏いを連れて行く奴は居ない。自分や仲間の命を危険に晒すなんてマヌケもいいところだ。自分からその程度とは誰も言いたくないだろ、恥ずかしくて。
ただし王族とか貴族から圧力を受けて、それを撥ね退けるける事が出来るのかは疑問があるけどな。俺達ならぶっ潰して逃走するけどさ。そもそも俺達のやる事はバカのお守じゃないし。




