1919
<実験惑星8日目>
おはようございます。昨日は許可がとれたので、今日は61層からスタートします。俺とフィーの為のワイバーンの皮を獲りに行くんだが、大太刀を作る為に鉄を買っていかないといけない。忘れずに買いに行こう。
朝の日課を終えて、神水を飲みながら適当に過ごす。そういえば売れなかった獲物をアイテムバッグに入れたまま忘れてたな。あれも捨てないといけないし、61層に穴を掘って埋めるか。忘れないようにしよう。
起きてきた子供達に朝の挨拶をし、その後に起きてきたフィーにも挨拶をする。皆がトイレから戻ってきたら神水の樽を出し、コップに入れたら仕舞い雑談をしながら過ごす。皆の頭も覚醒したようなので、後片付けを行い、終わったら宿を出て酒場へ。
大銅貨4枚を支払い朝食を食べたら、町中の武具屋をウロウロする。運良くガラクタを売っている店があったので、樽に放り込んである物を纏めて買う。小銅貨5枚が31本で155枚なので、俺は小銀貨2枚を支払い、中銅貨1枚と大銅貨4枚を受け取った。
全てアイテムバッグに詰めたらダンジョンへと出発し、迷宮紋からダンジョンの1層へ。北西から31層へと向かい、そこから北の転移紋に向かう。そこをスルーして更に北へと行き、丘の東側へと行くと確かに扉があった。
昨日複製した鍵を取り出して鍵穴に差し込むと、あっさりと入ったので捻る。当たり前のように「ガチャッ」と音が鳴り、扉に掛かっていた鍵は開いた。扉を引いて中に入り手を放すと、閉まった後「ガチャッ」と音が鳴る。
31層の扉と同じく、やはり閉まると同時に自動で鍵が掛かるようになっているようだ。俺達は真っ暗な中を進み、地面の転移紋に乗って転移した。
転移先は野営層だったが誰も居ない。おそらく61層だと思うので、とりあえずガラクタを取り出して【浄化】し、次に鉄だけを【抽出】する。全てのガラクタから鉄を【抽出】したら、超魔鉄のインゴットにして纏めておく。
まずは自分で使う大太刀を作ったが、多少のインゴットは余ったので纏めて保管しておこう。他の皆は今のところ欲しい物は無いらしいので、穴を掘ってゴミを捨てたら先へと進む。もちろんゴミは【粉砕】して【浄炎】で焼き、更に【浄化】して綺麗にしている。
北にある転移紋へと行き、次の層へと進む。やはり予想した通り山の地形で、上空にはワイバーンが見える。俺は大太刀を取り出し、石を投げつけて1頭の注意を引く。後は昨日と同じように倒せばいいだけだ。
叩き落して首を切ったが、昨日のワイバーンの骨製よりは綺麗に切断できた。やはりワイバーンの骨より超魔鉄の方が優秀なようだ。子供達もやりたがったので、叩き落した後を子供達に任せる。
子供達は片方が【土硬弾】をワイバーンの顔面に放っている間に、もう片方が首を攻撃するという方法で出血多量に追い込んでいた。上手く連携していたので、ワイバーンは飛び上がる事も出来ずに沈んだ。
フィーに1人で戦うか聞いたら、1人で頑張ってみるとの事なので任せる。フィーも身体強化で石を投げ、ワイバーンの気を引いたら【疾風弾】でブレスを相殺。その後は【風砲】で叩き落して戦闘開始だ。
盾を構えて突進し、相手の噛みつき攻撃に対し【疾風弾】を当てて牽制、そのまま近付いて首を切った。しかしフィーが持っている剣は短いので浅く、1度の攻撃では大した傷にはならない。
ワイバーンが体を暴れさせ、無理矢理にフィーを剥がそうとするも上手くはいかない。フィーは【疾風弾】を使ってワイバーンの顔を狙い、嫌がったワイバーンの首の根元を切り始めた。どうも根元の方が同じ場所を切りやすいらしい。
連続で何度も切り裂くと、一気に出血し始めたのでフィーは離れ、そのまま出血多量で死ぬまで警戒を解かずに戦闘は終了した。
「フィー、お疲れ」
「「お疲れー」」
「ありがとうございます。それにしても大型の魔物は倒すのが大変ですね。ここまで厄介だとは思いませんでした。武器の長さが足りませんが、あまり長いと使い勝手が悪いですし……剣以外を持った方が良いでしょうか?」
「さてな。それもどうだろうか? 本人に合っていればいいが、大型の魔物に合わせて武器を持つっていうのも良い事とは思えないけどな。それよりは今の武器で頑張るか、大型用の武器を別に持つか……どっちかだな」
「私も大型の魔物用の武器を持った方がいい? 例えば……おっきい剣とか」
「切り裂く方向で考えてるなら斧か鉈の方が良いと思うけど、大型の魔物用となると結構な大きさになるから多分持てないぞ? 長くなればその分重いし、それだけ持ち上げる力が必要になる。まだ子供達の体じゃ無理だろう」
「そうですね。ボクも持てるとは思えませんし、使うのはもっと無理だと思います。仮に剣を持つなら、体にあった長さの剣で相手に近付くしかないのでは? フィーのように何度も切るしか方法がないと思います」
「まあな。もともと大型の魔物と戦う際は弱点狙いをするんだが、ワイバーンのように首の長い系統は頭を狙い難いんだ。どんな生物でも、生き物である限りは脳を潰されれば死ぬ。超魔鉄の武器で脳を潰してやればいいんだが、あの首の長さがなー……」
「あんなにブンブン動いてたら攻撃出来ないね」
「だからこそ私も根元を攻撃するのに切り替えた訳ですし、首が長い生き物というのは面倒臭いです」
そんな会話をしている横で、俺はフィーの皮鎧を作っていた。ソフトレザーなので革鎧というよりは皮鎧というのが正しいだろう。それはともかくとして、フィー用の皮鎧と指貫グローブを作ったら次は自分の分だ。それもパパッと作って身につける、
その後、ワイバーンの皮で剣帯を全員分作り、元の剣帯は穴を掘って放り込む。更にワイバーン皮を使い子供達のブーツを作ったら、翼膜でジャケットとズボンを作成して着させる。これでかなりの防御力になった筈だ。
3頭分の様々な素材を使いきったので、穴の中に入れて【粉砕】し【浄炎】で焼いて埋めた。次のワイバーンも落として首を斬って終わらせ、俺とフィーの分のブーツとジャケットとズボンを作成。身につけて、ようやく終了となった。
これで当分装備を変える必要も無いだろうし、落ち着いて金稼ぎが出来る。装備品も整った事で細かな傷を負う可能性も減ったし、これからは適当に戦うだけで済むだろう。
その後は俺が3頭、子供達とフィーが1頭ずつ倒して脱出。昼過ぎだったので食堂へと行き、大銅貨2枚を支払い食事にする。久しぶりのパンと肉入りスープとサラダだが、そこまで気にならないのは久しぶりだからかな?。
昼食後は冒険者ギルドの裏に行き、ワイバーン5頭を出して木札を貰う。昼に持ってきたからか、5頭全てを買い取ってもらえた。そもそも解体所が混むのは夕方近くなので、この時間に持って来てくれると助かるらしい。
「昨日売られた分も今日に解体してたりするが、ワイバーンなんてもんは出来るだけ新鮮なうちに解体したいんでな、早めに持って来てくれると助かるんだ。そのうえオレ達の手が空いてる時間なら尚良しってな」
「じゃあ、丁度良い具合の時間だった訳だな。了解した。金稼ぎの間はこの辺りの時間で持ってくるよ」
「おう! 頼むぜ!!」
俺はワイバーン5頭と書かれた木札を受け取り、ギルドの建物に行って受付嬢に精算を頼む。昼過ぎだからか受付嬢1人しか居なかったが、どうやら他の受付嬢は昼食に行ったらしい。シフトは決まってるんだそうだ。
俺は小金貨5枚を受け取り、皆で分けて俺が2枚を貰う。小金貨で売れる魔物は珍しいのだろう、ギルド内に屯している連中から悪意が飛んでくる。どうしてこう、狩りにも行かずにギルドに居るんだろうな?。
俺はギルドを出つつ、【探知】と【空間把握】で警戒しながら宿に戻った。




