0191
「ちなみに岩塩が取れるのは領都の南ですよ。あの辺りは古くから岩塩が豊富に取れる場所で、昔は勝手に採掘して持っていく者が沢山居た筈です」
「まぁ、人が生きていくのに必要な必須栄養素だからな。人が生きている限り幾らでも売れると言っても良いぐらいだ。盗みぐらいするだろうさ」
「ただ捕まる者も昔から多いんだけどね。塩の取れる山は北から行くしかないんだけど、東西と南は険しい山なんだ。だから北に戻るしかなく、そこで捕まるんだよ」
「成る程ねぇ。入り口と出口が同じなら、捕まえるのは難しく無いだろうさ。それよりもアルド、侯爵領の浄化はどうするんだい?」
「皆は村や町を通り過ぎた後に速度を落としてくれ、その間に悪用厳禁の技で身を隠して浄化するよ」
「そうかい? なら、そろそろ出発しようか。今日中に領都までは行きたいからね」
昼食も終わっていたので領都を出て、一路侯爵領のハウの村へ。身体強化を十分に使ったら、あっと言う間に到着した。皆には先へと進んでもらい、俺は身を隠して浄化する。
【気配消失】【誤認】【幽体】のコンボで見つかった事は無い為、恐らく問題ない。なるべく遠隔で浄化していき、体感で1時間程経った頃に全て終わった。これでも早い方だろう。
身体強化を全力で使い皆を追い駆けていく。30分程走っていると追いつく事が出来たので、そこからは全員で身体強化を行い一気に進んで行く。すると、直ぐにクレの町に到着した。
「ここがクレの町……本当に唯の町だな。もうちょっと捻るとかしないもんかね? アピールしたり特産品とか作らないと寂れていくのにな」
「そこまで考えないんじゃないかい? 特産品の塩があるから、それなりに商人なんかも来るだろうしねぇ」
「現状に胡坐を掻き始めたら転落していくだけなんだが……。楽に生きていけると疑問を感じなくなるって聞くが、本当みたいだなー」
観光のフリをして浄化をしていく。町の中に入らないというのは味気ないので、フラフラ見て回りながら浄化をしている。ある程度浄化できたので、後は戻ってきてからやればいい。
町を出て身体強化で進んで行く。多少進んだ所で隠密の3つの技を使い、町に戻って浄化をする。急いで浄化し、体感で1時間過ぎる前に終わった。その後は急いで皆を追い駆ける。
結局、追いついたのは領都の少し手前だった。もう夕方ではあるが、1日で浄化しながら来れたのは十分に早いと思う。そこまで遠くなかったという事も当然あるのだが……。
夕方なので遠隔浄化を行うぐらいで、後は深夜の時間帯にやるしかないだろう。領都に入る入り口で門番に登録証を見せる。長い間待たされ質問をされたが、中に入る事が出来た。
どうやら門番はただ不審者を調べていた訳じゃなさそうだ。宿を探して歩いているが、門の所から尾けてきている奴等が居る。当然ウチの皆も気付いているので、その程度の奴等だ。
宿は程なく見つかり、6人部屋で大銅貨8枚だった。妙に高いが支払って部屋を確保する。まずは2階の宿泊する部屋に行き、詳しく中を調べた。不審な点は無く、壁の向こうも問題なし。
1階で夕食を注文し大銅貨8枚を支払う。夕食の味は普通だったが、マズくはなかっただけマシだと思う事にした。夕食後、直ぐに部屋に戻り、皆で依頼の事を話し合う。
「先行偵察と言われたが、何を偵察するべきなのか。それと、尾行してたアホどもをどうするか……」
「どっちにしても、隠密の技を使えるアルドに任せるしかないんだけどね」
「そうですね。私達が暴れると相手に有利な状況を作られかねません」
「ディルなら秘密裏に始末できないかしら?」
「流石に、誰にも見つからずに処理するのは無理だ。その状況を作ってもらえば可能かもしれないが……」
「……という事は、私達はここで待機しているしかないね。踏み込んで来た奴等を始末するぐらいかな?」
「まぁ、浄化しに外へ出るついでに、尾行していた奴等も調べてみるよ」
「お願いね。その辺りはアルドに頼るしかないの」
「分かっているさ」
俺は隠密の3つの技を使い部屋の窓から外に出る。宿の向かいにある雑貨屋から、こっちを監視している奴等が居た。領都の入り口から尾行してきていた奴等だ。もう少し上手くやれよ。
雑貨屋の前からチラチラと宿を見てるが、挙動不審過ぎて日本なら職務質問されるレベルだぞ。こいつらがポンコツなのか、そういう時代なのか、碌な技術も知識も無いみたいだな。
監視や尾行って思っているよりも難しいんだがな。何でこんな素人丸出しな奴等にやらせるんだか……。こいつらが囮かといえば、そんな事も無いし。その程度の奴等なのかね?。
「で、あの宿に泊まってる奴等がどうしたんだ? 別に怪しい奴等じゃなかったんだろ?」
「そんな事知らねぇよ。上から見張ってろって言われた以上は見張るしかねぇだろ? まさか仕事もせずに適当な報告する気か?」
「そんな事はしないさ。でもな、怪しい奴等じゃないなら一体何を監視するんだ? しかも宿の外からなんだぞ。外から見てたって何も分からないし、意味があるのか?」
「だから、知らねぇって言ってんだろ! いちいちしつこいんだよ! やれって言われた以上は、俺達下っ端はやるしかねぇだろうが」
「……ふぅ。意味のわからない仕事なんぞ、やる気が出るワケないだろうに。なんで上の奴等は分かんないんだろうな」
「下っ端の俺等のやる気なんて、考えてくれるワケねぇだろ。んな事は、今までと変わんねぇよ」
「そうだな」
見張りの命令を受けただけの奴等か。やる気が無いから素人レベルの尾行しかしなかった訳だな。……どうやら、コイツ等は放っておいて大丈夫そうだ。むしろ監視させておこう。
一旦部屋に戻って監視者の報告を皆にする。直ぐに皆は理解してくれたので、全員一致で監視者を放っておく事に決まった。それじゃ、俺は侯爵邸に行きますか。
宿の部屋を出て、浄化しながら侯爵邸へと向かう。侯爵邸は領都の中心にあるんだが、攻められたら逃げ場が無いような……。そのうえ中心だと監視しやすいし、守り難い気がする。
平地だから仕方がないのかもしれないが、石垣ぐらい作って防御力上げようぜ? 幾ら何でも、四方八方から監視出来る場所は駄目だろう。簡単に忍び込めるぞ、こうやって。
俺は見張りが居ない隙に侯爵邸の敷地内に侵入する。見張りが移動するタイミングもルートも簡単にバレる立地って、絶対に良くないと思う。暗殺者だって簡単に入って来るぞ、コレ。
裏に回って中に入れる場所を探す。王都の伯爵邸と同じく勝手口に閂がしてあったので、【空間把握】と【探知】で人が居ないか確認し【念術】で外した。鍵が付いてないと簡単だ。
まぁ、鍵が付いていても【念術】で開けられる事に変わりは無いんだが。中に入り閂を戻しておく。相変わらずキッチンと言うより竈と言うべきだな。侯爵家でも変わらないらしい。
侯爵邸の内部を【空間把握】で調べると、奥の所に3人居る場所があった。そこが当主の執務室だろうな。そこに行くのに2つの部屋を抜けて行く必要がある。非常に侵入し辛い。
1つ目の部屋には人が居ない為、素早く侵入し扉を閉める。あれだけ活躍の機会が無かった【止音】が大活躍中だ。使えないと言って申し訳ない、状況次第では使える技だった。
2つ目の部屋にはメイドが1人居る。外から【心静】と【昏睡】を使って強制的に眠らせておき、中に侵入する。中にはメイドが1人居て、水差し等が置いてある。お茶は無いようだ。
メイドは安物の机に突っ伏して寝ており、それ以外に同じ机と椅子のセットがもう1つあるな。【昏睡】は強制的に眠らせるのだが、疲れてたのかよく寝ている。まあ、騒がないなら何でもいい。
メイドが寝ている部屋から、3人居る奥の部屋を【空間把握】で確認する。【空間把握】は動かずに集中すれば会話を聞く事も可能だ。ただ、振動を拾って聞くので結構大変で面倒臭い。
面倒で疲れる為に余り使いたくない方法なんだが、しょうがないな。
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0191終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨14枚
金貨71枚
大銀貨92枚
銀貨66枚
大銅貨245枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ