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 ダンジョンを出た俺達は冒険者ギルドへと歩いて移動し、裏にある解体所へと入っていく。中にある獲物を出すスペースに移動し、そこで見ているギルドの解体職人の前で確認をとった後にアイテムバッグから出す。


 まずは56層からの虎と猪、そしてワイバーンを1頭出すと周囲がザワついた。リーダーらしき人物が「うろたえんじゃねぇ!」と檄を飛ばすが、ワイバーンというのは驚くほどの獲物らしい。


 俺はレッドタイガーが3とブルーボーアが4、そしてワイバーンが1と書かれた木札を貰い、受付の方へと移動する。そこまで人が多くない受付に並び、俺達の番が来たら木札を出す。昨日と同じ受付嬢だったが、木札の内容に目を剥いている。



 「レッドタイガーにブルーボーア、そしてワイバーン……これって本当ですか? 流石に信じがたいのですが」


 「だったら解体所に聞きに行ったら良いんじゃないか? その木札を出してきたのは解体所なんだからさ」



 受付嬢は俺の言う事も持ってきた木札も信用できなかったのか、言った通りに解体所の方へ確認しに行き、驚いた表情で戻ってきた。ワイバーンは大きいからな、見れば分かるだろう。戻ってきた受付嬢は慌てて謝罪した後、お金の用意を始めた。


 レッドタイガーが1頭で小銀貨3枚、ブルーボーアが1頭で大銀貨1枚、そしてワイバーンが1頭で小金貨1枚という値段だった。つまり小銀貨9枚、大銀貨4枚、そして小金貨1枚だ。


 小銀貨28枚に大銀貨1枚で分けて、俺達はアイテムバッグに仕舞う。小金貨1枚は小銀貨100枚だからな、4人で分ければ1人25枚となる。中銀貨5枚だが、小銀貨って割と使いそうだから数が多いのは都合が良い。


 俺は支払われた後に受付嬢に対し、ギルドマスターの部屋に行っても良いかと聞く。もちろん拒否されたが、ここでは言えない大事な話があると伝えてきてくれと頼み、ギルドマスターに確認に行かせた。


 少し待っていると戻ってきた受付嬢が案内してきたので、どうやらギルドマスターは許可を出したらしいな。これで話を聞かないのであれば、オリジナルの鍵を渡さなかったんだが……まあ、いいか。


 俺達は受付嬢が入った後にギルドマスターの部屋に入る。書類仕事をしていたギルドマスターは顔を上げた後、すぐに俺達の顔を思い出したらしい。昨日会っているので、流石に忘れてはいないようだ。



 「ふむ……昨日、鍵を渡した者達か。いったい何の話があるのか知らないが、手短に頼もう。私は暇ではないのでな」


 「俺達も暇じゃないさ。ギルドが要らないというならば、渡さなくてもいいんだがな?」



 俺はそう言って、ギルドマスターの執務机の上に鍵を置く。ギルドマスターは最初キョトンとしていたが、段々と意味が分かってきたのだろう、今は驚愕が顔にハッキリと出ている。



 「こ、これは、まさか……。ダンジョンの鍵? ……君達はいったい何処まで行ったのだ?」


 「その鍵を見つけたのは61層の野営層だった。光の玉のように発光する鍵が浮いていてビックリしたよ。鍵が光って浮いているって、訳が分からないからな」


 「成る程、間違い無い。この鍵は本物だ。31層に初めて踏み込んだ冒険者も、鍵が光って浮いていて驚いたと記録に残っている。今までで到達出来た最高記録は46層なのだ。ここの湿地帯を抜く事が出来なかった」


 「大きなトカゲとリザードマンの層だね。私達が走るより遅かったから、戦うのが面倒で逃げた層だ」


 「……普通は湿地帯に足がとられて大変な筈なんだが、君達にとっては逃げきれる程度でしかなかったようだな。ちょっと待ってくれよ……よし、46層以降のことを話してくれ。情報を纏めておきたい」


 「46~49層は湿地帯、出てくる魔物は変わらず。50層のボスは下で売ったワイバーン。51層は野営層で、52~55層が草原。大きな猪とネズミが出てくる層だった。灰色の猪と赤いネズミだ」


 「それは串刺し猪と火ネズミだ。高く売れない割には危険な魔物として知られていて嫌われているが、どうやって突破した?」


 「落とし穴に落としたんだよ。上半身さえ落とせば、後はもがくだけだ。そうやって落としている間に無視して進み、次の層へと駆け抜けていった」


 「言いたい事は分かるが、何故駆け抜けていける? どこに転移紋があるかが分からねば、走り回る羽目になるだろう。何故そんなに早く進んでいけるのだ」


 「ん? もしかして誰も気付いてないのか? 転移紋には周囲から魔力が流入している、その魔力反応を辿れば何処に転移紋があるかくらいは分かる。別に難しい事じゃないし、頑張ればウチの子達でも出来る事だぞ?」


 「「………」」



 蓮とイデアをジッと見るギルドマスターと受付嬢。そもそも俺が連れて行っている時点で、並の冒険者より遥かに優秀だと分かると思うけどな。それはともかく続きを言うか。



 「話を戻すぞ? 56~59層は平原で、さっき下で聞いたレッドタイガーとブルーボアが出てくる層だ。こいつらスキルを使ってくるんで鬱陶しかったが、それ以外にはどうこうという事はなかったな」


 「レッドタイガーもブルーボーアも名前こそシンプルだが、シャレになっていない強さを持つのだがな。お前のいうスキルの所為で、一流の冒険者ですら戦いたがらないほど危険な魔物だ」


 「スキルを使う前に体に魔力が集まるんだから、使ってくるタイミングは分かるだろうに。むしろ、これから使いますよって教えてくれてるぞ? それでも面倒な事に変わりはないが」


 「君達ならばそうなのだろう。そもそも転移紋の位置を把握するなど、誰にも思いつかなかったか、それとも出来る者達が居ても秘匿する事だぞ。ダンジョンの地図も高額で売買されているしな」


 「ギルドが売り出してるんじゃないのか? 金儲けできるだろうに」


 「詳細な素材の分布や転移紋の場所が書かれた地図などは、冒険者同士で売り買いされていてギルドはノータッチだ。単純にギルドでは調べられないのと、本当かどうかが分からない。責任が持てない以上は、冒険者に任せるしかない」


 「成る程なぁ、間違ってたら大恥掻くから責任は持てないか。おっと横道に逸らしてすまん。60層のボスは黒い何かを噴出するスケルトンで61層が野営層。そこで鍵を発見した」


 「黒い骨ならブラックスケルトンなんだが、黒い何かを噴出しているというならシャドウサイスだな。かなり高位のアンデッドだ。その黒い何かを大鎌の形にして切り殺しに来る。一流の冒険者でも震え上がりかねない相手だぞ。よくもまあ、勝てたもんだ」


 「開幕すぐに全力の浄化魔法をお見舞いして浄化してやったからな。先手必勝で何もさせずに勝った。だから相手のスケルトンがどういう奴かは知らないんだ」


 「………まあ、それが出来るなら、それが一番良いだろうさ。それより62層には行ったのか?」


 「62層は山の地形で、ワイバーンがそこら辺りを飛んでいた。明日からはワイバーンを狩ろうと思ってるんだが、どれぐらいなら怒られないんだ? あまり狩ってきすぎても迷惑だろう?」


 「それ以前にワイバーンを複数狩れるのか? 普通の冒険者であれば人数を多く掛けての死闘だぞ」


 「そもそも50層のボスがワイバーンだって言ったろうに。そこで勝たないと先に進めないぞ?」


 「そう言えば、そうだったな。50層のボスがワイバーンか。一応未確認情報として下のダンジョン情報には貼り出しておくが、一流のクランでも突破は不可能だろうな。むしろ君達のような少数精鋭でないと無理だ」



 まあ大人数じゃ湿地帯を越えるのは大変だろうな。それより鍵がどうなるのか聞いておかないと、それとついでに作った合鍵の事も聞いとくか。


 この調子だと大丈夫そうだし。


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