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 普通の冒険者じゃ沼を越えるのは大変だろうし、怪我でもしたら帰るしか……あれ? フィーに神血を飲ませてないよな? すっかり忘れてた。俺は慌てて神血の樽を出し、フィーのコップに入れて飲ませる。


 フィーは色を見て若干困ったものの素直に飲んでくれたので、その後に神血である事と効果を教える。当然ながら唖然とした顔になり、効果の内容に溜息を吐いた。気持ちは分かるが諦めてくれ。そういう物だから。


 落ち着いたら片付けさせ、ボス部屋の中へ入る。魔法陣が輝きながら現れたのは、赤い狼10頭だった。俺は素早く戦闘を開始し、矛で正面から突き刺す。狼の攻撃など大抵が噛み付きだが、移動と攻撃を同時に行ってくるので厄介ではある。


 とはいえ俺や子供達は長柄の武器であり、フィーは盾を持っている。魔法を利用すれば複数から一斉に襲われる事もないので、勝利する事は難しくない。子供達は【風砲】で邪魔な奴を吹き飛ばしながら、刺し殺している。


 フィーはシールドバッシュでぶつかった後、右手の剣で首を刺し殺す。然したる苦労も無く、20層のボス部屋を突破した。入り口とは反対側の壁が開き、俺達は先へと進む。奥にある転移紋に乗り、21層へと移動。


 転移紋の光が止んで着いた先は、川が流れる平原であり、同時にテントが並ぶ光景だった。何だこれはと思っていると、両手を胸の高さに上げて掌をこちらに見せた男が近付いてきた。



 「よぉ、お前さんは21層は初めてか? ここは魔物の出ない層でな、野営層とも言われてる。ちなみにトイレなら向こうだ。スライムが下に居る穴でしてくれ。じゃないと臭いんでな」


 「初めてだが……ここで休んでいるのか? 何の為に?」


 「そんなもん、ここから先がキツイからに決まってるさ。その反面ここから先の魔物は実入りが非常に良いんだよ。ここまで来れたお前さん達は、実力的にはベテランと言っていいんだぜ?」


 「ふーん。まあ、水があって使って問題無いなら、遅い昼食でも作るか。情報ありがとう、相場は分からないがこんなものか?」



 俺はそう言って中銀貨1枚を渡そうとしたが、男からは「小銀貨程度だ」と言われたので支払う。男は小銀貨を手にしたら去っていったが、俺達は適当な人の居ない場所に焼き場などを作る。


 全粒粉と塩と神水を混ぜて練ってもらい、俺はオークを解体する。それが終わったら肉を【熟成】して薄切りにし、野菜と共に炒めながら塩で味付けして完成。生地が出来たら【熟成】し、饅頭を作りつつ中に具として詰める。


 最後に蒸篭で蒸せば、昼食の饅頭の完成だ。それじゃあ、いただきます。



 「うん。お塩だけだけど、いつもの美味しくない料理よりはマシだね。よく考えたら、あのスープってお肉も美味しくないんだと思う。解体の仕方が下手なのかなぁ?」


 「解体も下手だし熟成もしてないんじゃないの? どのみちアルドさんと比べちゃ駄目だと思うよ? オークの肉はそれなりの値段で売れる筈だけど、味はアルドさんが熟成してもこんな物だし」


 「”あの”肉に比べれば天と地ほどの差がありますね。肉を口に入れて意識を失うほどですから、当たり前ですけど」


 「まあ、”あれ”の肉なら当然ではあるんだけどな。それよりも遅い昼食になったが、食べたら先へと進もうか。高く売れる魔物が居るとか言ってたが、どれがそれか分からないし、ある程度は戦って実力を調べておきたい」



 俺達はささっと食べて少し休憩したら、焼き場などを壊して更地にして出発する。随分と周りからジロジロ見られたが、スルーしてさっさと転移紋に乗って進む。


 22層は山の地形らしく、斜面となっていて木々が多い。そんな地形で出てくるのは熊と狼に鳥だ。熊は普通の色の熊だが、胸の毛の一部が十字の形に白い。ツキノワグマならぬ、ジュウジカグマかな?。


 狼はボス層であらわれた赤い狼で、鳥は黄色い梟だ。俺達は進路上の魔物を倒しつつ進み、熊を倒したら一旦止まる。周囲を警戒してもらいつつ、俺は熊の魔物を解体していく。目的は皮だ。


 剥ぎ取って色々調べてみたものの、強度はそこまでだったので断念。解体した物を全て【浄炎】で燃やして処理し、俺は「防具には使えない」と説明。皆も納得したので進む。


 適当に倒しながら進み、26層に到着。驚いた事に一面岩だらけの岩場だった。広い採掘場みたいな感じだと言えば分かるだろうか? 上ったり下りたりする道が見える。この層、思っているより面倒かもしれない。


 俺は【探知】と【空間把握】を駆使して調べ、転移紋の位置を特定してから進む。上り道の陰のような場所に転移紋があり、見つかり難くしてある。厭らしい配置と言わざるを得ない。


 この層に出てくるのは、肌が白いトカゲや猪にハゲタカだった。俺達は適当に倒しつつ、上空から強襲してくるハゲタカは【念動】で叩き落す。肉がどうかは分からないが、少なくとも羽が使えそうなのは確認した。


 この層、普通の冒険者なら相当厄介だと思われる。何故ならハゲタカの強襲頻度が非常に高いからだ。次々と襲ってくるので叩き落として始末し、羽だけ毟って【浄炎】で纏めて焼いていく。


 結構な量を集め終わったら、今日はここまでにして脱出紋で町へと帰る。何となくこのダンジョンの傾向が見えてきた。なので明日からは本格的に挑もう。その為の準備もしなきゃいけないし。


 脱出紋で戻った俺達は町へと移動し、そのままの足で冒険者ギルドへ。裏にある解体所で獲物を出すと騒がれたので不思議に思うと、こんなに大量に持ってこられても困るという話だった。



 「普通の冒険者っつーのは大量に持てねえからな、厳選して持ち帰ってくんだよ。確かにお前さん達みたいにアイテムバッグを持つ奴等も居るが、そいつらだって厳選はする。お前さん達みたいに大量に持って帰ってきたりはせん」



 そう言って怒られ、高値で売れない物はダンジョンに捨てて来いと言われた。買い取り拒否だ。まあ、仕方がないと諦めよう。買い取ってくれるのはオークと熊と狼とトカゲに猪だった。


 それぞれクロスベア、レッドウルフ、ロックリザード、ファングボーアという名称だったので覚えておこう。こいつらが高く売れる魔物らしい。毛皮に肉に牙に角と、それぞれ使い道があるらしく殆ど全てが売れるんだそうだ。


 俺達は買い取ってもらった魔物の種類と数が書かれた木札を貰い、ギルドの方へ移動して受付へと行く。受付に出すと驚かれたが、全て纏めて小銀貨30枚、中銀貨40枚だった。


 内訳はオークが小銀貨1枚で9体、クロスベアが中銀貨1枚で7頭、レッドウルフが小銀貨3枚で7頭、ロックリザードが中銀貨2枚で8匹、ファングボーアが中銀貨2枚で7頭。トカゲと猪は持って帰ってこれる者が少ないらしい。


 それも一気に手に入れられるのは珍しいらしく、売られても1匹か2匹だけみたいだ。俺は売った金を4人で分け、割り切れない分は俺が貰う事に。俺の取り分は小銀貨9枚に、中銀貨10枚だ。


 それなりに儲かったので食料店に行って色々見回る。あまり良い物も無いので小麦と塩と野菜を買い、中銀貨1枚を支払って店を出る。夕日が出ていたので酒場に行ってメニューを見ると、色々あったので注文。


 どうやら食堂はアレでいい人達が食べる場所で、色々な物を食べたいなら酒場に行くんだそうだ。親切な酔っ払いが教えてくれたので、お礼に一杯分の小銅貨3枚を渡しておく。


 俺達は小銀貨1枚分を注文し、パンやサラダにソーセージやチーズなどが運ばれてくる。スープは頼んでないが、やっと普通の料理が食べられる。子供達もフィーも喜んでいるようで何よりだ。


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