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 「今日からダンジョンですが、防具などの用意は無くて大丈夫ですか? 危険ではないかと思いますが……」


 「まあ、無くても大丈夫だと思う。そもそも売り物の防具に良い物が無かったんだから仕方ない。金属製の鎧が相変わらずあったが、あんな物を着けてもしょうがないからなー。重いし音がするし」


 「しかし敵の攻撃は防げますが?」


 「ある程度はな。ソードグリズリーどころかアーマーベアの攻撃ですら厳しいかもしれない程度だろう? 爪はともかくとしても、体重は絶対に防げないしな。結局、そこまで金属鎧って役に立たないんだよ」


 「……そうなのですね」


 「一定以上の強さになってくると、防具で守る事は無理だと考えた方が良い。回避が基本だ。受けたら死ぬと考えておかないと駄目なくらい、強力な攻撃を行ってくる。盾は流せるから別だけどな」


 「それでも流さなければ駄目なのですね? 受けたら保たないと……」


 「難しいな。魔力や闘気で強化したパワーで攻撃してくるのが多かったり、重い体重で轢き殺そうとしてきたりだ。それらをどうにかするには、軽い防具でいつでも逃げられるようにしておく必要がある。防具で防ぐと考えていたら致命的な一撃を受けて死ぬ」



 フィーが防具の事を言う気持ちも分からなくもないんだが、軽くて音がせず、かつ高い防御力を持つ素材でなければ良い防具とは言えない。ただ、そんな防具素材なぞ滅多に無い訳で……。だからこそ今までもアーマーベアの素材であり、竜の素材で作ってたんだ。


 この星にアーマーベアが居るのか、それとも竜が居るのかは知らないが、良い防具素材の魔物はおそらく居ると思う。そいつを見つけ出すのが第一だ。そう言うとフィーも納得していた。


 子供達が起きたので挨拶し、部屋の中をもう一度綺麗にしたら、宿を出て食堂へ。大銅貨2枚を支払い朝食を食べたら、街の北側へと進む。2重の塀があり、そこには落とし格子の鉄で出来た門があった。


 門番に登録証を見せて中に入り進んで行くと、お馴染みの迷宮紋があったので、こういうところは変わらないらしい。ちょっと安堵しながらも列に並び、順番が来るのを待つ。


 俺達の番が来たら少し待ってから迷宮紋に乗って中へと入る。記念すべき1層目は、何と石壁迷宮だった。十字路の真ん中に居て、どちらに行けば良いのか分からないので人の多い方向である東へ行く。


 俺が歩きだしたので皆もついてきた。人の多い方向に進んでいるが、正しい方向かは分からない事を皆に言いつつ進む。そこかしこで音がするが、どうやら魔物と戦っているらしい。大きなネズミや普通のウサギぐらいの魔物だ。


 大した魔物じゃないみたいなのでスルーし、俺達の前に出てきたのは突き刺して倒す。死体は面倒なので放置し、俺は【探知】と【空間把握】で転移紋の場所を調べていく。集中して調べていると、人が消える地点を発見。そこに転移紋があった。


 【探知】で調べてみると魔力が集束している気配が若干あるので、コレを頼りに探せば転移紋は見つかるだろう。そう思い、皆に説明して次へと進む。石壁迷宮とはいえ地道にマッピングなどすれば突破出来る訳で、そこまで難しい地形じゃない。


 そんな事を考えつつ次々と突破していると6層から地形が変わった。草原になったが、出てくる魔物は猪とゴブリンだ。なかには猪に乗っているゴブリンも居る。昨日の男達が儲けてるって言ってたのは猪の魔物だろう。


 俺達は魔力が集束している転移紋の方へと行くが、冒険者の戦いを見てみるとゴブリンを殺して放置している。そして猪から肉を剥ぎとっているようだ。まあ、肉は売れるんだろうが、10層からのオークは高く売れるんだよな?。


 それはどういう事なのかと思うも、オークの肉の方が美味いのかね? それならオーク肉が売れるのも分かるんだが……。おっと転移紋も発見したし、次へと行くか。


 俺達はドンドンと進んで行き、ついに10層へと辿り着いた。広い道があり、真っ直ぐ進んで行くと扉がある。待機している人達が見えるので、俺達も一番後ろに並んで待つ。横幅10メートルくらいで、50メートルほど歩いたらボス部屋の前だ。


 他は何も無い、それがボスの居る層らしい。尚の事ゲームっぽいなと思いつつも、アイテムバッグから神水を出して皆で飲む。周りの連中はちょっと驚いているみたいだが、俺達は全く気にしない。襲ってきたヤツは全員聖人になるし。


 悪意は向けられたものの襲われる事はなく、俺達の番が来たので中へと入る。俺達が入ってきた扉が閉まり、魔法陣が地面で輝き、出てきたのはオークが10体だった。何というか……拍子抜けしたものの、さっさと倒す事に決める。



 「どうやらオーク10体だけみたいだ。とにかく足を潰せ、出来ないなら魔法で牽制。止めは後でいい」


 「「了解!」」 「はい!」



 たかがオーク10体ではあるものの、俺達が敵を侮る事は無い。確実に足を切り裂いて潰し、隙があるなら喉を突き刺すか首を刎ねる。そうやって殺していると、あっと言う間に戦えない奴等ばかりになった。


 後は苦しんでいるオークに止めを刺すだけだ。最後まで気を緩めず、敵の反撃など許さずにキッチリ止めを刺した。死体を回収していると、入ってきたのとは反対側の壁が上にスライドし、先へと進めるようになったようだ。


 俺達がスライドした壁を越えて進むと、壁が下へと下りて閉まる。更に先へと歩くと転移紋があった。それに乗って11層へ。光が止んで見えたのは平原であり、ここがどうやら11層のようだ。遠くにオークが見える。


 昨日食堂で女性達が話していた通りにオークが居るので、先ほどのオーク10体が新人卒業の証だったらしい。俺達は再び移動を開始し、転移紋を探して歩く。いちいち面倒だし、オークを殺してもあんまり儲かりそうにもない。


 ある程度は稼げるのだと思うが、多くを稼ごうと思えば大量に持って帰る必要がある。それは面倒臭いので、できれば少なくて儲かるものがいい。俺達の実力なら20層も超えられるだろう。そもそも今までのダンジョンより狭いし。


 多分だけど5キロ~7キロほどしかないと思う。それでも広いと言えば広いのだろうが、1層の大きさが10キロを超えていた今までのダンジョンに比べれば狭い。更に言えば11層に居るのに、どうも層の大きさが広がっていないっぽい。


 つまり変わらない大きさのままなんだ。ならそこまで攻略は難しくない。という事で平原の中の魔力集束地点を探して走り、見つけたら転移紋に乗って次の層へ。それを繰り返して16層。ここからは沼地のようだ。


 面倒な地形だと思いつつも、転移紋を探してサンダルで入っていく。俺達の服装は麻の服とズボン。並びに革のサンダルだ。目立たない服装と言えば分かりやすいが、一般人と同じ見た目の服装だな。


 沼地で足をとられつつ、大きな蛙や蝶のような魔物を倒して進む。蝶の鱗粉が怪しいので魔法で処理し、魔力集束の気配を頼りに転移紋へと移動する。碌に休む事も出来ずに進んでいき、ようやく20層へと到達した。


 10層のボス部屋と変わらない地形を進み、ボス扉の前で少し休憩する。誰もこの層には居ないのでゆっくりと出来るが、20層以降に進む奴は極端に少ないのだろう。特に沼地の地形が鬼門と言えるだろうし。


 殆ど休む事も出来ずに突破しなきゃならないというのは大変だ。身体強化を使う俺達ならまだしも、普通の冒険者は使えないみたいだしな。途中で疲れ果ててしまう事を考えたら、挑戦するのにも勇気が要る。


 普通の冒険者が大変なのは、この星も変わらないようだ。


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