1905
「静粛に! 皆様、静粛に! ………突然の事で驚かれたでしょうが、ここはサンクトルム王国でございます。そしてここにおられるは、サンクトルム第12代国王陛下であらせられます」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
俺達以外にもそれなりの人数が居るが、こいつらは何の為に俺達を召喚したんだろうか。神様からはアンデッドの勢力が強過ぎるからっていう救援要請があったと聞いているが、周りの者達を見るに【浄化魔法】が使えそうには見えないけどな。
「我々が異界召喚という術を用いて皆様をお呼びしたのは他でもない、皆様には我等を救う力があるからでございます。もちろん中には力の無い方も居るかもしれません。そんな方も御心配無く、こちらで生きていけるだけのサポートは惜しみません」
「申し訳ないが、異界人の皆さんにはこちらに来て水晶玉に触れていただきたい。それにて各々が持つ力は分かるようになっている」
あの水晶玉で鑑定するって事ね。で、力を持つ奴がいたら取り込む訳か。となると異界召喚っていうのは、必ずしも狙って力のある奴を召喚出来る訳じゃないって事になるな。俺達はどう出るのやら……。思いっきり大量に出るか、何も出ないかのどちらかだな。
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名前:ダンダグル・エッスオーレ
スキル:剣術・根性・不屈
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「おお! 剣術持ちだ。しかも根性と不屈も持つとは素晴らしい!」
剣術は分かるが、根性と不屈はどういうものなんだ? 実にゲームっぽい感じだが、もしかしてHP1で踏みとどまる系のアレか? ……そんな下らない事を考えている内にどんどんと鑑定が進んで行き、高校生っぽい感じの3人組の番になった。嫌な予感がするな。
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名前:ユウキ・トウドウ
スキル・聖剣術
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名前:カナデ・マイシマ
スキル:聖弓術
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名前:ショウリ・ミナカワ
スキル:聖盾術
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「おお……遂に現れたか!! あの不浄の者達を打ち破る英雄が! 皆の者、丁重にお持て成しせよ! これは王としての命令である!!」
「「「「「「「「「「ハッ!!」」」」」」」」」」
あの3人が一番だろうなぁ、つまり俺達が絶対に近付いちゃ駄目な3人だ。アレからはなるべく距離をとる……というか、さっさとこの王城を脱出しないとな。そう思っていたら、俺達の番が回ってきた。
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名前:アルドゥラム
スキル:なし
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名前:レン・ツチミカド
スキル:なし
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名前:イディアルマ
スキル:なし
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名前:フィーヴィライア
スキル:なし
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「これで全員終えられたようで御座いますな。それでは、それぞれの者に従って下され、ご案内いたします」
俺達の他に<スキル:なし>というのは居なかったのだが、俺達だけは何やら連れて行かれる方向が違うらしい。どうやら最上級、それなり、役立たずと分けているようだな。聖○○というスキルを欲しているのは、アンデッドに対抗する力が欲しいからか。
俺達は兵士っぽいのに案内されているが、王城を出た所で革袋を渡された。中には小中大の銅貨と銀貨が5枚ずつ入っていて、コレを持って出て行けという事のようだ。俺達としたら粛々と受け取って出て行くだけである。
俺達が何も文句を言わないのを訝しがっていたが、俺達からすれば合法的に大手を振って城から出られるうえ、手切れ金まで貰えたのだから万々歳だ。最悪は牢からの脱出も考えていたのだから、それより遥かにマシだし。
城から出た俺達はその足で町の人達に話しかけて情報収集をする。城から金もらって出されたと言うと、同情的な顔をされたので<異界召喚>自体は王都の民にすら知られているらしい。いったいどれだけの頻度で召喚という名の拉致をしてるんだよ。
呆れながらも、テンプレの冒険者と聞いてゲンナリする。とはいえ、森林や山に分け入ってまで魔物を狩る仕事だと聞けば、確かに冒険者と言えなくもないか。この名称のテンプレ感は惑星の神が関わってそうな気がする。神様も位が下がると俗っぽくなるから。
そんな事を考えつつ冒険者組合という場所に行き、とりあえず中に入る。普通のドアだった事に納得しながら開けると、中に居る奴等が一斉にこっちを見てきたが無視。そのまま受付へと行き、登録を頼んだ。
「登録は小銀貨1枚です。最初はランク1から始まって徐々にランクが上がっていきますが、それぞれのランクの仕事しか請けられません。魔物を倒す事に関しては好きにして下さい。ただし実力不足で死んでも自己責任です」
「了解だ。で、子供達の分も作れるか?」
「成人以上の方が保護者として付くなら問題ありません。……はい、小銀貨4枚受け取りました。少々お待ち下さい」
何か物凄く事務的だなぁ。思ってたのと違うが、そこは気にしなくていいか。後、周りの連中が喧嘩を売ってきたりはしないが、それも俺の予想外だ。普通は喧嘩を売ったりしないんだけど、テンプレだと普通にあるある……本当に無いな。
「この木札が登録証となります。再発行する場合はランク1からの再スタートとなりますので、お気を付け下さい」
「ありがとう」
俺達はそう言って<ランク1~3>と書かれている掲示板へと行く。見ても何かを届けろという仕事ばかりで、王都の中で済む仕事ばかりだった。魔物に関しては倒して持って来ればいいだけらしく、ギルドの裏で買い取ってくれるそうだ。
俺達にとって冒険者ランクなんて極めてどうでもいいので、ランクは1のままでいいな。何より、ランクで戦える魔物が決まる訳じゃないらしいし。そこの部分は俺達にとってありがたい事だと思う。
ギルドを出た俺達はまだ昼にもなっていない時間なので、適当に装備品を見に行く事にした。王都の中は広いものの、誰かしらに聞けば場所は分かるものだ。俺達は適当に周囲を観光しながら工房街へとやってきた。
それなりの装備でいいので買おうと思うも、それなりの装備すら結構な値段がする。当たり前と言えば当たり前だが、結構な量の金属を使っているのが武器だ。そんなに安い筈が無い。仕方なく見回っていると、妙に安い武器を見つけた。
それは大きな樽に乱雑に突っ込まれた武器の束だ。【空間把握】で確認すると、刃毀れだったり血脂がべっとり付いて錆び付いてしまっている。それらが全て小銅貨5枚という安さだった。ちなみに貨幣価値は前の星と変わっていないので分かりやすい。
小銅貨100枚で小銀貨1枚、小銀貨100枚で小金貨1枚。中は小5枚分、大は小10枚分の価値がある。つまりボロい武器の価値は中銅貨1枚分だ。俺は店主に言い、ボロい武器を全て買い取ると言った。
店主は渋い顔をしたが、それでも全てを売ってくれるようだ。武器の種類はバラバラだが、全て纏めて42本あったので購入。俺は中銀貨を1枚を払い、小銀貨2枚と大銅貨9枚をお釣りに貰って、全てをアイテムバッグに仕舞う。それを見て更に渋面をする店主。
何故かは知らないが、その店を後にした俺達は少し早いが食堂へと昼食を食べに行く。この王都ではどんな食事なのか楽しみだ。




