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【空間把握】を使い一切の妥協をしない火加減で焼いていく。それだけでとんでもない暴力的な香りが周囲に広がる。これこそが竜! これこそが地上最強の生物! そう言わんばかりに暴力的な香りが広がり、子供達の動きが怪しい。
「蓮、イデア。自分の料理に集中するようにな。特に蓮、失敗したらご飯が駄目になる。集中してしっかりご飯を炊いてくれ」
「「はい!」」
返事は良いんだが、大丈夫か? そう言いたくなる程に上の空というか、俺の話を聞いていない気がする。仕方なくご飯の方も気にしながら、竜の塊肉を焼いていく。できれば竜肉のみに集中したかったんだが……。
そのままじっくりしっかりと焼いていき、最高の火加減で焼かれた肉を削いで皿に乗せていく。そうしているとご飯も炊き終わったので全員で配膳していき、終わったら早速食べよう。それじゃあ、いただきます。
「………ハッ!? 何だコレは! 一瞬意識が飛んだぞ! 信じられん、美味しすぎて意識が飛ぶなどとんでもない肉だ。メチャクチャだと思っていたが、竜の肉は更におかしい!!」
「んーーー!! おいしいーー!! あぁ~、やっぱりりゅうのおにくはさいこう! これだよね、これがりゅうのおにくなんだよ。おいしいーー!!」
「久しぶりに言葉が駄目になってるけど、本当にいつ食べても変わらずに美味しい。竜のお肉は美味しいとしか表現できません。こう、どう言葉にしていいか難しいです」
「やっぱり語彙力が低下してるな。いつも通りだから別にいいと言えばいいんだけども。それはともかくとして、久しぶりだろうが美味しいものは美味しいので味わって食おう」
皆も竜の肉を堪能し始めたので、俺も黙ってじっくりと堪能する。それにしても美味いが、頻繁に食べる事は出来ないのでやっぱり日を置いて出すしかないな。前の星でさえ竜はダンジョンの中でしか戦えなかったんだ、こっちは天然にすら存在しない。
ダンジョンの最奥では出てくるけど、そんな偶然でしか手に入らない。最奥のボスも変わるので、必ずしも最奥で竜ばかり出ると限ってないんだよなぁ。それが残念でならない。必ず竜が出るのなら通い詰めるんだが。
竜の肉を堪能し片付けもせずに余韻に浸る。本当に美味い肉だからここまで楽しむのは仕方ない。十分に余韻を楽しんだら後片付けをし、終わったらカマクラの中に入る。すのこを敷いて布団を敷き、入り口を閉じたら座って目を瞑る。
皆には言ったが、迷宮紋が未だに灰色でしかないので、もう少し【浄化】しておこうと思っている。このまま突入して呪い塗れで死亡とか嫌すぎるからな。何としても、そういう事故は避けたい。
【集中】して【浄化】していき、意識を取り戻したら【空間把握】で確認する。空間が真っ白であるにも関わらず、迷宮紋は灰色のままだった。どうも外からの【浄化】では灰色が限度っぽいな。これ以上【浄化】すると空間の方が危ない気がする。
仕方なくそこで諦め、かわりに子供達の神経衰弱の相手をする。相変わらずの嫌がらせ攻撃に四苦八苦しているが、なかなか良い頭の運動になったろう。子供達は眠たくなったのもあり、不貞寝のように寝始めた。
2匹を左右に置いて【昏睡】を使い、深く眠らせたらウェルの番だ。幸せに沈めたら綺麗にし、服を着せて寝かせる。その後は入り口から外に出て閉じ、走って西へ。近くにある集落の者を【浄化】していくのだが、こちらは体が小さい。
見た目的には愛嬌のあるゴブリンが正しいだろうか? ただし人間と変わらない背丈のゴブリンだ。オーガとは違うが、かといってこいつらも人間種に比べれば優秀な肉体をしている。筋肉の密度なども違うようで、人間種より強いのはすぐに分かった。
そんな奴等を枷4つで変えていき、終わったら次の集落へ。何故かは知らないが、どの集落も100人も居ない所ばかりだ。人数調整でもしてるのかと思うが、集落ごとに争っているから増えないのだろうか?。
そんな事を考えつつ2つ目の集落を真っ白に変え、終わったらカマクラへと戻る。日中に眠れる訳じゃないし、これぐらいにしておかないと朝から辛い。
戻った俺は自分を【浄化】し、入り口を開けて入ったら閉じる。荒らされたり侵入されたりなどは無かったので安堵し、カマクラ内と体を綺麗にしたら、おやすみなさい。
<呪いの星122日目>
おはようございます。眠たさはそこまでではありませんが、少々はあります。それが致命的な失敗に繋がらないように注意しておかないとな。朝の日課を終えたら外に出て、紅茶を淹れたら飲みつつ視界に入れる。
やはり迷宮紋は灰色のままだ。もちろん最初に来た時に見たような呪いの噴出は既に無い。それだけで十分と言えなくもないが、これから突入していく事を考えると色々想定しておかなきゃいけない。
全粒粉に塩と神水を混ぜて捏ね、うどんの生地を作ったら置く。鍋で神水を沸かし、謎の魚節で出汁をとったら横でイエローボアの肉と野菜を炒める。終わったら生地に【熟成】を使い、うどんの麺に【分離】したら準備完了。
皆も起きてきているので1人分ずつ茹でていき、終わったら出汁を入れた椀に麺を入れて、その上から肉野菜炒めを乗せれば完成。朝から少々肉多めだが、今日はダンジョン探索なので良いだろう。
最後に自分の分を作り、これで終了。それじゃあ、いただきます。
「今日はダンジョン攻略だが、昨日空間が真っ白になるまで【浄化】したにも関わらず、迷宮紋は灰色のまま変わらなかった。今までのダンジョンとは違い、中がどうなっているか入って確かめた奴は多分いない。居たとしても間違いなく死んでるだろう」
「それはそうだろう。そもそもアルドが浄化するまで、おぞましいまでの呪いが噴出していたのだぞ? 幾ら高濃度の呪いに耐えられると言っても限度があろう。アレは無理だ」
「うんうん、ウェルの言う通り。だって真っ黒なのが噴き出してたんだよ? あんなの耐えるとかじゃないよ、触れたらダメ!」
「あれはねー、ボクでも耐えられないと思う。そもそも耐えられる人が居るのか疑問だよ。あれほどの濃い呪いが噴き出すなんて、この星に来る事になる筈。だってアルドさん以外、どうにも出来ないでしょ」
「無理だろうなー。だからこそ誰も近寄った形跡が無いんだし、呪いが濃すぎて近くに木どころか草も生えてない。それ程までに汚染している」
周囲を見て改めて納得せざるを得なかったんだろう、皆は周囲を見た後に溜息を吐いた。それでも昨日よりは大分マシだと言わざるを得ないけどな。昨日は濃い呪いが噴出するおぞましい場所だったんだし。
朝食が終わったので後片付けを行い、準備が完了したら迷宮紋へ。俺は魔法を使う用意をしながら転移に身を委ねた。
第1層。そこに着いた瞬間、俺は【神聖世界】を使い周囲を浄化する。安全か危険かに関係なく、先制攻撃のように浄化したのが良かったのだろう。中にあった呪いが浄化されていっている。
訳が分からないが、おぞましいほどに真っ黒な世界がそこにあった。地面も空もそれどころか空気にさえも呪いが充満しており、脱出紋の上にしかまともな空間が無い。今は一気に浄化したのである程度は見渡せるが、一定以上から先は見えない。
俺は魔法ではなく【浄化】の権能を使って浄化していく。やはり権能の方が圧倒的に強力で、次々に呪いを【浄化】して綺麗にしていく。どうも見た感じ、1層は川の流れる草原らしい。周りが真っ黒で分かり辛いが。
とにかく1層1層を掃除していくしかないな。




