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 いつも通り、まずは宿の客から聖人にしていく。安全を確保するにはこれが一番だし、近くの者から聖人化していくのが一番手っ取り早い。【昏睡】を使って深く眠らせ、侵入しては白い枷を3つ着けていく。


 2分待ったら外して回収し、次の部屋へと移動して白い枷を着けるのを繰り返す。終わったら、次は近くの建物の中の者を聖人化していく。多くは宿の従業員の宿舎であり、ここも変わらない。


 それらが終われば更に周りの建物へと移行していき、どんどんと聖人化を行う。青く光る者を聖人にする必要は無いが、青く光る者がいない。本当にこのドーレント王国は酷いとしか言い様が無いが、仕方がないのだろう。


 東の聖国とは山で隔てられており、こちらだけ特異な事になっている。陸続きなのに陸の孤島とでも言えば良いのだろうか? そんな形になってしまったのだろうと思う。【呪魂環】が壊れてからの高濃度の呪いと群雄割拠の時代。


 それらの所為で一気に今までの常識が壊れてしまい、こんな状態になってしまったのだろう。人間30年もあれば、平和な時代を知っていても群雄割拠の戦国時代に慣れてしまうんだろうな。その結果がこの国な気がする。


 もちろんこの国に暮らしている人達は大変だったのだろうが、常識が狂うほどの事があったのなら、この結果は仕方がない。だからこそ甘んじて聖人化を受け入れてもらいたいもんだ。


 ダラダラと聖人化を続けてきたが、この町で終わりかと思うと感慨深いものがないでもない。この苦行というか苦労もようやく終わるんだからな。……と言っても、今日終わる訳じゃないんだけどね。


 さて、そろそろ部屋に戻ろう。今日の分は終わりだ。これ以上頑張っても明日が辛いだけだし、帰って寝よう。俺は宿まで走って戻り、綺麗に【浄化】した後で窓から部屋へと戻る。ベッドに寝転がったらおやすみなさい。



 <呪いの星118日目>



 おはようございます。今日も聖人化の続きを行う日です。なかなか大変だけど終わったら次の日を休みにしよう。流石に1日しっかり休んでからじゃないと、樹海に突入するのは危険だ。集中力が無くなったら、危険に対処出来ない可能性もある。


 朝の日課を終わらせて紅茶を淹れて飲みつつ、これからの事を考える。気が早いものの、ここの聖人化は滞りなく終わるだろう。そもそも苦戦するような事も無いのだし。イデアが起きてきたので見送り、戻ってきたイデアが紅茶を入れるのを【念動】で支える。


 2人で静かな朝を過ごしつつ、皆が起きるのを待っていると続々と起きてきた。朝の挨拶をし、布団などを片付けて仕舞いながら雑談をする。今日は皆で町を見回るという話を聞きながら、飲み終わったら片付け、食堂へと行く。


 大銅貨3枚を支払って朝食を頼み、席に座って待っていると、普通の人と聖人のかみ合わない話が聞こえてきた。普通の人が話している横で、聖人が善を説くという状況が繰り返されているが、それを見て回りも首を傾げている。聖人が相手の話を聞かないからだろう。


 俺達は聖人があんな者だと知っているが、この町の人はそこまで知っている訳じゃない。昨日で2日目だし、今日で3日目だ。それなりの人数が聖人になったとはいえ、まだまだ総数からすると半分に達するかどうかというところ。


 2日で半分近くなのだから早いとは思うが、それでも残っている人数を考えると大変でもある。よく分からない一般人と聖人の話は聞き流し、食事を終えたら宿の部屋へと戻る。皆にお金を渡そうと思ったら、まだまだ持っているらしく大丈夫と断られた。


 それならと俺も渡さず、皆に一言断って【浄化】した後に寝る。それじゃあ、おやすみなさい。


 ……イデアに起こされたので起きると、既に夕方だった。それなりに回復したので体を【浄化】し、皆に話すと大した物も無くて帰ってきたとの事。どうも楽しい所も売り物も無く、中途半端な人数が聖人なのか、町中がちょっとおかしな事になっているらしい。


 今までと変わらない連中と、ひたすら善を説く連中とで収拾がつかない。何だか町中がそんな感じになっているそうだ。まあ、俺に言われても困るし、夜に更に人数が増えるから気にしなくていいだろう。どのみち殆ど全員を聖人にするんだし。


 食堂に移動し大銅貨3枚を支払って食事をし、終わったら宿へと戻る。確かに皆の言いたい事も分からなくはなかったな。



 「だろう? まだ聖人になっていない者が喰ってかかるのだが、聖人は気にせず善を説き続けている。狂ったのかと心配されていたり、喧嘩になりかけてならない事とかが起きていた」


 「殴りかかってたけど避けて、そのまま神様の事とか話してたよ。また殴りかかられたら避けて、今度は善く生きるには……って話をしてた。相手が疲れて怒っても、善の道がどうとか言ってたよ。怒ってた人は「頭がおかしくなりそうだ」って言って逃げてた」


 「アレは凄かったね。最初は変な顔で見てて、その後は怒って殴りかかる。最後はおかしな者を見る目で逃げようとするんだけど、追いかけられて神様がどうとか言われてました」


 「酷いな。いや、それが聖人なんだけどさ。あまりにも酷いし、常人なら耐えられないだろう。そんな苦しんだ奴も、今日の夜には聖人の仲間入りなんだから苦しみも無くなる」


 「「「………」」」



 皆も知ってるから、それ以上は何も言えないんだろうなぁ。ある意味では苦しみから救われるんだよ、全員が同類になるから。聖人の言葉を聞いても常人はおかしくなりそうになるだけだが、聖人になれば普通になる。そうしてやるから苦しみは変わるまでで済む。


 そんな事を話して聞かせるも、何とも言えない顔をする3人と1匹。フヨウは表情が分からないので分からないが、ダリアはハッキリ表情に出るからなぁ。思っている事が分かりやすい。


 子供達が寝るまで話に付き合い、子供達が寝たら2匹を左右に寝かせ【昏睡】を使って眠らせる。ウェルを幸せに沈めて寝かせ、部屋と体を綺麗に【浄化】したら聖人化3日目の開始だ。


 この町にはスラムが無いものの、人の人数自体はそれなりに多い。なのでどうしても時間が掛かるが、それも今日と明日で終わるだろう。罪を暴く腕輪をし、赤く光る者を聖人にしていく。


 数が減ってきたからか、【探知】の生命反応で手当たり次第ではなく、赤く光る者を探して聖人化する作業に変わってきている。大きな屋敷の付近には近付いていないが、庶民区のような所は大半が終了した。


 兵士などは早めに終わらせてあるので、文官系の者がまだ残っている可能性は高い。そういう連中を聖人化しているのが分かるというか、大きな屋敷の周り以外は完了した。それを確認してから、聖人化を続ける。


 結局この日は大きな屋敷までは届かず終了。宿へと戻って寝る。部屋に戻る前に綺麗に【浄化】し、部屋に戻ったらベッドに寝転んでおやすみなさい。



 <呪いの星119日目>



 おはようございます。今日はアリホム町最後の聖人化の日です。朝の日課を終わらせて、紅茶を淹れて飲みつつゆっくりする。今日は早くからダリアが起きてきたので神水を入れて出し、終わったら膝の上に乗せて遊ぶ。


 ダリアは「急にどうしたの?」という顔で見てきたので、「今日で聖人化は終わりだ」というと納得していた。それからは膝の上のダリアと遊んで過ごしていると、蓮とイデアが同時に起きて部屋を出た。珍しい事もあるものだ。


 見送った少し後でウェルとフヨウも起きたので、見送りつつ神水を入れて出す。フヨウは飲んだ後、首まで登ってきてキュっとした後に力を抜く。ダリアは起きるのが遅いとペシペシするし、フヨウは遅いとキュっと絞めてくるんだよなー。


 まあ苦しくないから別にいいんだけど。


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