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聖人と関わらなくてもいいみたいなのでスルーし、俺達はさっさとカマクラの中へと入る。子供達がトランプで遊んでいるので、俺とウェルも含めて全員で遊ぶ。ダリアとフヨウは早々に布団の上に寝転がり寝てしまった。
なかなかに白熱したものの子供達が舟を漕ぎ始めた事で終わりとなり、片付けて子供達を寝かせる。既に寝ていた2匹を左右に寝かせて【昏睡】を使い、ウェルを満足させてから服を着せて寝かせた。
カマクラの中と体を綺麗に【浄化】したら、入り口を開けて外に出て硬く閉じる。罪を暴く腕輪をして確認するも、やはりこの村には赤く光る者は居ない。聖人になっているのに関わって来ないって不思議だな?。
首を傾げつつも、さっさと西へと走って行き、アリホム町へと移動する。身体強化を使えばあっさり着くので堀と門を越え、町の中へと侵入した。赤く光る者を手当たり次第に聖人にしていくものの、ここも数が多いみたいで大変だ。
それでも聖人にしていき、ある程度の時間が経ったら町を出て戻る。あまり長くは聖人化できないので、程々にしておかないと明日が大変だ。東へと走って戻り、カマクラに入る前に綺麗にしてから中へと入る。
入り口を閉じたら布団に寝転がり、おやすみなさい。
<呪いの星117日目>
おはようございます。今日はアリホム町へと移動する日ですが、ようやくドーレント王国最後の町です。昨夜、既に聖人化を開始しているものの、それでも正式に到着するのは今日だ。ここが終われば楽になるし樹海へと突入となる。
それが良いかどうかは別にして、聖人化という苦行からはやっと解放されるな。住んでいる者の大半を聖人化するって凄く大変なんだよ。人数が少ない、二足歩行の獣みたいな奴が大半の国でコレだからな。本当に勘弁してほしい。
別に二足歩行の獣みたいな姿が悪いんじゃない、それが悉く犯罪者みたいな奴ばっかりなのが問題なんだ。ついでに大半の二足歩行の獣みたいな連中は聖人になったし。それはそれで、別の意味で何とも言えなくなる。
朝の日課を終えて外に出たら、椅子に座って紅茶を入れつつ下らない事を考えていた。ボーッと出来るのが静かな朝の良いところであり、誰も起きてないからこそ下らない事も考えられる。
今日も皆はなかなか起きてこず、俺は朝食の準備にとりかかった。麦飯を炊きながら味噌汁を作り、冷凍していた秋刀魚を焼きつつアジフライを作っていく。流石にそろそろ魚も終わらせるか捨てるかしなきゃいけない。
朝で食べ切れない分は捨てていこう。それなりにアイテムバッグに入ったままだしな。【浄化】しているのでお腹を壊す事は無いが、時間が経ち過ぎて良い物でも無くなっている。そうしているとダリアが一番に起きたようだ。
魚の匂いがしたからだろうか? 神水を入れて出してやると、飲んだ後で足下をウロウロしだす。いつもなら二度寝をするのにしないって事は、俺が焼いて揚げているのが魚だと分かっているな? 朝食まで待ちなさい。
足下でウロウロするダリアを宥めながら料理をしていると、皆が起きてきたので挨拶をする。そのまま料理を続けていき、麦飯が炊き終わった段階で皆にも手伝ってもらい配膳。それじゃあ、食べようか。いただきます。
「アジフライも竜の脂で揚げると変わるね。お魚の味よりも脂の味が強いけど、でもお魚の味も風味も感じる。弱いのは時間が経ってるからかな?」
「そうじゃない? 流石にそろそろ捨てるって言ってるぐらいだから、新鮮な物に比べればどうしたって落ちるよ。美味しいのは美味しいけどね。でも新鮮な美味しさは無いし、それはしょうがない」
子供達も言っているが、それなりの美味しさではあるんだ、それなりでは。しかしそれだけで、やっぱり新鮮な魚の美味しさは完全に失われている。時間が経ち過ぎているから仕方ないんだけど、これは駄目だな。許容範囲を超えている。
それでも不味い訳ではないんだから十分ではあるんだけど。そう思いつつ朝食を終え、残りの魚などは穴を掘って埋めていく。小さいのが掘り起こして食べるか、分解するだろう。何かの餌になるなら、そのまま放って行けばいい。
出発の準備を整えていき、完了したらカマクラやテーブルを壊して更地にし出発。西へと歩いていきながら、適当な魔物を白く変えていく。どんどんと白くしていきつつ、昼食を挟んで更に西へ。
歩きながら変えていると、アリホム町が見えてきた。堀と石壁で守られた町だが、ちょくちょく攻められているからか、警戒が厳しい感じがするな。夜中に侵入した時には何も思わなかったが……。
中銅貨4枚を支払い中に入り、町の人に宿の場所を聞く。ここアリホム町にはスラムが無いのだが、町の人が理由を教えてくれた。それは、スラムに落ちそうな者は全員が徴兵されているからだそうだ。
確かに樹海から攻めてくる以上は防衛しなきゃならないだろうが、そんな頻繁に襲ってくるのだろうか? そう思ったものの、そういう理由でスラムを作らせていないだけだった。ちなみに兵士は樹海に分け入って魔物を討伐してくるらしい。
自分の肉は自分で獲ってこいという方式らしく、自分達が喰う為に獲ってくるので、結果的に兵士の強化にも繋がってるという。変わったやり方ではあるものの、悪くはないと思える。とにかく聞いた宿へ行こう。
大通りからは外れた場所にある宿へと行き、小銀貨1枚と大銅貨5枚を支払い5日間とる。食堂の場所は聞いていたので移動し、大銅貨3枚を支払って食事を頼む。周りの会話にも大したものは無いので、さっさと食べて宿へと戻った。
「活気が無い町だな。まあ、辺境の町だし西は樹海だ。よほど素晴らしい素材や獲物で儲かってなければ活気が無いのは仕方がないのだろうが……。やはり呪いというのが活気が無い理由だろうか?」
「おそらくな。自分も呪われてしまうんじゃないかと思えば、活気は生まれ難いだろう。それでも長年この地で生きている者も居るんだし、そこまで呪いに対して怯えている訳でもないんだろうけどな」
「ずっと、何かあるかもって感じなのかな?」
「多分な。それでも西から攻めてくる奴が居るんだから、そいつらがおかしくなってない限りは大丈夫だと思う。とはいえ、そいつらをおかしいと思い込んでる可能性はあるが」
「あくまでも樹海に住んでいる蛮族というだけであろう? ならば呪われている訳ではないという事ぐらい、すぐに分かりそうなものだがな」
見下しや何やらは必ずあるからなぁ。呪われている蛮族なんて思っているのかもしれない。ナチュラルに見下していると、それが差別感情だという自覚も無いし。かつての魔導王国の民なら、昔はこの星で一番進んだ者達だった筈。
逆に樹海に住んでいる連中の祖先は他国の者を見下していたのかも。それが逆転しただけなら何とも言えない話だな。今を生きている樹海の連中には関係無い話だし。祖先が勝手に驕って自滅したっていうのは流石に……。
挙句の果てには高濃度の呪いに汚染されている可能性が高いんだろ? その呪いに耐えられたとはいえ、呪いに侵された時点で元の自分とは違うだろうからなー。理性の出てきた呪われた連中が樹海で生きてるって事なのか。
それそれで……っと、子供達がウトウトし始めたので寝かせよう。布団に寝かせて2匹を左右に置いて【昏睡】を使う。今日はリクエストがあったウェルを撃沈させ、綺麗にして服を着せたら【浄化】していく。
十分に部屋も体も綺麗になったら、隠密の4つの技を使って部屋から廊下に出る。聖人化の開始だ。




