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 何故かは分からないもののニコリと笑いかけてくる女性に対し、俺は即座に【昏睡】を使う。理由としては笑みの種類が聖人のものだからだ。女性は多少抵抗したものの、俺の【昏睡】には勝てずに寝てしまった。


 おそらく大丈夫だとは思うのだが、聖人は何をしだすか分からないからな。唯でさえ呪いの生物になった後での4つの枷だ。何が起こっても不思議じゃない。嫌な感じというか、嫌な予感はしなかったので大丈夫だとは思うのだが……。


 とりあえず俺も一人に構っている訳にはいかない。なのでさっさとスラムの連中を聖人に変えていき、終わったら他の場所の者も聖人に変えていく。そろそろタイムリミットと言える時間になったので、宿に戻って寝よう。


 宿の前で自分を綺麗に【浄化】し、窓から入ってベッドに寝転がる。部屋と体を綺麗にしたら、おたすみなさい。



 <呪いの星109日目>



 おはようございます。今日も聖人化しなきゃいけない訳ですが、昨日の蛇の女性は焦りました。まさか4つの枷を使った後にすぐ起き上がってくるとは思わず、挙句の果てには隠密の4つの技を忘れ、顔をバッチリ見られていた。


 それ自体に何か問題がある訳じゃないんだが、何故か「やっちまった感」がある。あの女性に関しては別に見られていても悪い訳ではなく、むしろ襲っていた男から助けただけだ。場所もスラムの一角で建物の中ですらない。なので不法侵入にも当たらない場所だ。


 建物と建物の間というか、分かり難い場所にあの女性は寝ていた。おそらくは襲われた場所が彼女の寝床だったんだろうが、場所はスラムだ。危険な奴はいる。それでもああいう場所で寝泊りせざるを得ないんだろう。


 朝の日課を終わらせて紅茶を淹れながら考えるも、昨日の女性に対して行った事がアレで良かったのかの結論は出ない。助けた事は正しい筈だ、それに関しては間違っていないだろう。ただバッチリと認識されたのは初めてだからなあ……。


 子供達とウェルが起きてトイレに行ったが、2匹はまだ寝ているようだ。俺はそんな2匹を見ながらゆっくりし、戻ってきた3人に話していく。



 「その女性はスラムに居て、呪いの生き物に変わっちゃったんだね? で、アルドは【浄化】しながら待って、おっきな蛇に変わったらすぐに枷を嵌めた。それで真っ白な蛇にしたら、何故か人に戻っちゃったと」


 「枷を4つ着ければ人間種の姿に戻るのか、それとも成り立てだから戻るのか。でも呪いの生き物になっても自我がある人も居ますよね。もちろん中身が本当に本人かは知りませんけど」


 「そうだな。聖人になる前、呪われた段階で本人とは違う者になってしまう。アリシアもそうだが、呪われた段階でその前の本人は消えてしまうと言って良いのだろうな。新しい自分になると言えば聞こえは良いが、元の自分は居なくなる」


 「スラムの女性はそうなったんだけど、アルドが【浄化】しても消えなかったのなら大丈夫じゃない? 聖人になっているだろうから、考えても意味無いと思う。だって聖人だし」


 「確かにね。聖人相手に何かを言っても無駄だし、意味が無いよ。アレは神様を賛美するだけだし、その神様を通してアルドさんを賛美するだけの連中ですしね。神様がそれの使用許可を出している訳ですけど……」


 「この場所というか国において、聖人化しなきゃいけない奴が多すぎるんだよな。今まではそんな事も無かったのに、異様なほど数が多いんだよ。まあ、枷を貰ったのが聖国での話だから、もしかしたら戻れば東の国も多いのかもしれんが……」


 「向こうにも腐った者は多かったが、そこまでの人数を変えなければ良くならんとは思えんぞ。こちらは群雄割拠の時代があったから、これぐらいせねば常識から変わらんのではないか?」


 「ああ、つまりこの国の人間種の基本や根底は、群雄割拠の国々の感覚だという事だな。だから、その根底というか常識を破壊する為にはここまでしないと変わらないと」


 「という事は、もしかしたら西の国に入ったら変わるかもしれませんね。西の国がそこまでじゃないなら、この国だけで済む筈です。それでも後どれだけあるのか分かりませんが……」


 「ま、それは仕方ないとして、とりあえず食堂に行こう」



 このままダラダラと話していても仕方ないので食堂に行き、大銅貨3枚を支払って食事にする。運ばれてきた料理を食べ、さっさと宿に戻ったら、おやすみなさい。


 ……フヨウに起こされたが、流石に背筋や首筋がゾワゾワする起こし方はされなかった。自分を綺麗に【浄化】した後、子供達もウェルもダリアも全員居たので話を聞くと、今日も町中をウロウロしていたが飽きて戻ってきたそうだ。



 「だって、見る所も別に無いし。昨日に比べて聖人が増えてたから安全だったくらいかなぁ……。安心ではないけど、安全ではあったよ?」


 「うん、安全ではあったね。安心は無理だけど。ボク達を見ると拝む人とか居て、凄く居心地が悪かったけど」


 「アレはもう諦めるしかないであろう。私まで拝んでくるし、聖人にはいったい何が見えているのであろうか……? 訳が分からないうえに、ダリアやフヨウも拝まれていたな」


 「ふーん。綺麗な奴が分かる、もしくは綺麗な奴が見えるという感じかもな。俺が綺麗にしている以上、一般人よりも綺麗なのは間違いない。そこを見て判断している可能性はある」



 話しながら片付け、準備が出来たらタコスモドキを作る。流石にそろそろ限界らしいので部屋の中で料理をし、風で窓から匂いを出しつつ調理。出来たら食べていく。久しぶりのまともな料理って感じはするが、それも仕方ない。



 「このタコスモドキにも蟹の肉は入ってますけど、とにかく肉、肉、肉ですからね。今日の昼も変わりませんでしたし、いい加減にしてほしいですよ。野菜多めで蟹のタコスで何よりです」


 「うん、やっぱり蟹は美味しいね。浄化してあるから味は良いし食べやすいし、さいこう! そろそろ不味いお肉に限界だったから、凄く美味しい」


 「うむ、私も本当にそう思う。かつての私なら気にもせなんだのであろうが、流石にな、肉ばかりも飽きを通り越して疲れてきた。肉は好きであったが、こうも美味しくない肉が続くとな……」


 「浄化すれば変わるんだけど浄化できないし、そうなると美味しい料理は諦めるしかないね。枷を4つ嵌めた女性が何とかしてくれないかなぁ」


 「流石にそれはないでしょ。浄化能力は手に入れたかもしれないけど、それを手に入れたとして使ってくれるかは定かじゃないし、何より使うならダンジョンの段階じゃない? もしくは店先で売っている段階。その段階で浄化しないと美味しくならないよ?」


 「料理になってしまったら、何故かアルドでも味を変えられんからな。浄化するなら食材の間だな。理想は獲物を殺してすぐだが、駄目でも店に売られてすぐであろう。その段階なら十分に美味しくなる」



 ウェルも舌が肥えてグルメになった……というより普通の味を知ったってところか。今までは呪いが混じっていて当たり前、その味が普通だったんだしな。浄化能力を持った連中の中には気付いた奴が居るかな? 浄化すれば美味しい事に。


 仮に今は気付いてなくても、いずれ気付くだろう。それにアリシアのお膝元で料理している奴等も居るしなぁ。あいつらの料理も知られれば、やがては浄化するのが当たり前という時代が来るだろう。それが何百年後かは知らないが。


 皆でゆっくりと神水を飲みつつそんな話をするが、そろそろ神水を補給しておかないといけないな。紅茶を始め何だかんだと結構使うし。それと今日は大きな屋敷と城だ。暴動で多少は減ったらしいが、それでも王都の数は多くない。


 どうやら地震に恐怖して逃げた奴も多くいるそうなんだが……。


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