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王都ドレンの赤く光る連中を聖人にしているが、相変わらずと言って良い程に青く光る奴が居ない。そんな中を頑張って聖人化していく。もう慣れているつもりではあるが、それでも聖人化をしなければ行けない状況にガックリしてくる。
何度も何度も思うが、何故ここまで赤く光る奴等が多いのだろうか? 罪を暴く腕輪である以上、間違いなくこいつらが罪人である事に間違いは無い。地震からの暴動とかで赤く光るのかもしれないが、地震が起きる前から多いのは説明がつかない。
元々こちらは犯罪ありきの国なのだろうか? そんな事を考えながら聖人化していると、足音が聞こえてきた。ちょうど終わって民家から出てきたところだったので、足音の聞こえる方へと素早く移動して確認に行く。
「た、助けてくれ! いやだ、死にたグヴォエッ!? ゲベッ! ガブッ! ゴビュ!!」
【空間把握】で素早く確認すると、馬乗りになっている者がその下に居る者を殴り殺そうとしているようだった。しかし馬乗りになっている奴がアレだ、意味が分からない姿をしている。
首から上が牛であり、姿としては牛頭が近いのだろうと思う。首から下は人間だが、完全に女性なんで犯罪にでも巻き込まれて呪われたんだろうか? とにかく【浄化】して呪いを削り、苦しんでいる隙に枷を嵌める。
2つ嵌めた段階で抵抗が無くなり、4つ嵌めてから3分待つ。これでどうなるのか確認できる。前回の馬面も、もしかしたらだが枷で生かす事は出来たのかもしれない。そんな思いはある。ちなみに慈悲から言っている訳じゃない。
呪いの生き物が反転して浄化能力を持つと、非常に強力な聖人として出来上がる。俺はそう踏んでるんだが、果たしてその結果は……。どうやら成功と言っていいみたいだ。枷を4つ着けて3分待った後に【浄化】してみたが、問題なく生きている。
つまり呪われた奴でさえ上手く変えれば浄化の役に立つ事が判明した。流石にこいつら程度であれば良いが、ダンジョンの最奥の魔物は倒すしかないだろう。こいつが何処までの浄化能力者になるかは分からないが、頑張ってもらいたい。
俺は【昏睡】を使った後でそっと離れ、改めて聖人化を行っていく。呪われた奴すら浄化能力を持つ何かに変えられるんだから、流石は神様の作った物だと言うしかないな。そう思いながら、今日は宿へと帰る。
自分を綺麗に【浄化】した後で宿の部屋に戻り、部屋と体を【浄化】したらベッドに潜る。それじゃあ、おやすみなさい。
<呪いの星108日目>
おはようございます。今日もドレンの聖人化を行う日です。昨日で半分いったかな? というぐらいなので、やはり王都の人数は多い。唯一の救いは、この国が普通の王制とは違うところだろうか。
国家としては王制だが、貴族の権利が非常に強い。その所為で王でさえ地方貴族と変わらないのだ。逆に言えば、統治に携わる文官や武官の数が少ない。自分の領地を治める分ぐらいしか居ないんだ。
おかげで聖人化する人数も少なくて済むので助かっている。それでもダンジョンがあるからか人数は多いけどさ。
こういう古い時代は食料の量がそのまま国民の数になり、それが国力そのものとも言えるので、ダンジョンを持っている王はやっぱり貴族よりは強い。ただし貴族に徒党を組まれると勝てないので、その程度ではあるんだけど。
朝の日課を終えて、紅茶を飲みつつ下らない事を考えていたら、イデアが起きてきた。トイレに行くのを見送った後に続々と皆も起きてきて賑やかになる。
昨日の呪いで変貌した奴の事を話すと驚いていたが、驚いた理由が首から上が牛である事だった。呪いに汚染された奴が、別の何かに変貌した事ではないらしい。そういえば前に似たような事はやってたか。
呪いの奴が3人ほど居て変えたことがあったな。すっかり忘れていたが、暴れている奴じゃなかったからか、そんな意識が無かった。前に変えた奴は冷静さを持っている奴等、今回変えたのは呪いで暴走している奴。うん、同じじゃない。
納得した後で皆と共に食堂に行き、大銅貨3枚を払って食事にする。多少だが聖人っぽい話が聞こえてきたので、順調ではあるんだろう。聖人の話も聞きたくないのでスルーし、宿に戻って今日も寝る。おやすみなさい。
………今日はウェルが起こしてくれたので起き、体を綺麗に【浄化】した後で今日の事を話す。
「特にどうこうという事は無かったな。私達も外に出て色々と見て回ったが、あまり物が無い感じだった。普通に売ると買占めなどが起きるので、店は何処も売り出してはいない。食堂に均等に売る事で、誰かが買い占める事を防いでおるようだ」
「成る程な。やり方としては正しいし、そっちの方が公平だろう。こういう災害の時は、料理に入っている肉がほんの少し他人より小さいというだけで、喧嘩を始めるバカとか居るんだ。暴れるだけ無駄な体力を使うというのに不満から暴れるバカがな」
話をしつつも準備をし、食堂に移動する。大銅貨3枚を支払い夕食を注文し、席に座って運ばれてくるのを待つ。出てきた料理を食べたら、すぐに店を出て宿の部屋へと戻る。またもや肉尽くしだったけど、ちょっと疲れてきたな。
宿の部屋に戻り、今日も野菜スティックをボリボリしながら適当に雑談をして過ごす。子供達はトランプで遊びながら話し、間違えた札を出して困っていた。
眠たくなってきた子供達を寝かせ、2匹を左右に寝かせて【昏睡】。襲ってきたウェルを反撃で撃沈し、寝かせたら部屋と体を綺麗に【浄化】して準備完了。聖人化3日目の開始だ。
それなりに遠くからやっていくのだが、流石に今日はスラムを終わらせる。ここはまだ手をつけていなかったんだが、そろそろ手をつけなきゃいけなくなった。理由は出入りが妙に多いからと、夜中なのに動きがあるからだ。
昨日は殆ど動きなんて無かったのに、今日は活発に動いている。暴動を起こす可能性がある以上、捨て置く事はできない。寝ている者を【昏睡】で寝かせつつ枷を3つ着けて聖人に変えていく。
それらを繰り返しスラムの連中を変えていくのだが、人数が多くて時間が掛かる。その間も出入りしている一角を監視しているんだが……。【探知】で監視をしていたので分からなかったが、【空間把握】で調べると娼館かコレ?。
もしかしたら娼館が営業を再開したから人が多い? 俺の勘違いだった可能性があるが、別に聖人にする事は悪い事じゃないのでさっさとしていこう。そうやって聖人化していると、襲われている女性を発見した。
すぐに襲っている男を【衝気】で気絶させたんだが、女性はパニックを起こしているのか冷静にならない。声を掛けようかを迷っていると、女性に対し猛烈な勢いで呪いが集中し始めた。コレって呪いの生き物に変わっているのか。
俺は女性に吸収されていく呪いを【浄化】するが、ドラゴンのリョクディマの時と同じく吸収速度の方が速い。それでも【浄化】していると、女性の姿は完全な蛇へと変わった。
胴の直径が50センチを超えている巨体であり、長さは10メートルを超えているだろうか。女性は寝る場所も無く、スラムの一角の地面で寝ていたので良かったが、建物の中だったら破壊されていただろう。
俺は【浄化】の力を強め、動けなくしたら枷を1つずつ嵌めていく。4つの枷を嵌めて3分を待っていると、3分を超えた頃に変化があった。白い蛇に変わった後みるみる体が変化していき、元の女性の姿へと戻ったのだ。
どうやら呪いに汚染されてすぐだと、元の人間種の姿に戻れるんだな。そう思って枷を外すと、女性は即座に目を開けた。隠密の4つの技を解除していたので目が合うと、何故か女性はニッコリと笑顔で俺を見てくる。
どういう事?。




