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 子供達の表情を窺うも地震の影響は無さそうだった。寝た後に枷を1つ着けたり、精神を【浄化】したりと色々した成果かな。まあ、子供達が心に傷を負っていないならいいや。宿の部屋でゆっくりとしつつも、【空間把握】で町中を確認する。


 首都だけあって思っている以上に人が多いが、その反面あちこちに暴動の跡というか傷や壊れた建物が目に付く。どうやら相当のものが1回か2回あったようだ。それで血の臭いなども混じっていたんだろう。


 数は減っているが、それでも1国の首都だけあって町と言うよりは都市の規模だ。こいつらを纏めて聖人にするとなるとかなりの時間が掛かるなぁ。手早く聖人にする方法が欲しいところではあるが、そんな怖いものは駄目だろうという思いもある。


 まあ、ゆっくり時間を掛ければ出来るんだから焦る必要は無いか。それよりもダンジョンの2度攻略をいつするかだが、これは首都というか王都ドレンが終わってからになるな。食事に我慢出来ないなら、一日に一度は宿の部屋で作るかな?。



 「そうだな……難しいところだ。一日に一度だと宿の者にバレるかもしれんし、出て行けと言われかねん。なるべくは我慢したいところだな。こちらも香辛料を育てているので、東の普通の食事よりはマシなのだが……」


 「でも、そこまで美味しくないよ。やっぱり水が悪い所為だと思うけど、料理人の人達とかに枷を4つ着けたら変わらないかなぁ……」


 「美味しい物を食べたいのは分かるけど、その為に枷を4つはどうなの? 上手くいけばいいけど、上手くいかなかったら浄化能力を持つおかしな人が生まれるだけだよ?」


 「枷を3つ着けた段階で聖人という名のおかしな人は確定だからなぁ。後はどうおかしいかの違いだけであって、おかしい人になる事は間違いない」


 「まあ、そういう意味では3つも4つも変わらん……と思う。浄化能力を持つ聖人か、唯の聖人かだ。………唯の聖人?」



 俺達はウェルの疑問をスルーして宿を出た。聞いていた食堂に行き大銅貨3枚を支払って食事を注文する。値段は普通と変わらないらしいな? 特に値上げなどしていなくて助かるが、量が少なかったりとかするのかもしれない。


 そう思いつつ運ばれてくるのを待っていると、出てきたのはパンと肉のスープとステーキだ。肉、肉、肉。ほぼ肉という料理だが、野菜は申し訳程度にスープに入っているだけ。これって、もしかしなくても、もしかするよなぁ……。



 「………ダンジョンがあるから、こうなるんでしょうか? でも、ダンジョンの中にも野菜っぽい物とかありますよね?」


 「そういうのは貴族とか王族が食べておるのではないか? 何となく庶民まで回ってこぬ気がするが……。それにしても肉ばかりだな、別に嫌いではないが」


 「……このお肉美味しくない。でも、香辛料の御蔭で食べられる。……多分だけど血抜きが良くないんだと思う。血の臭いが影響してるんじゃないかなー」


 「蓮の言ってる事が正しいっぽいな。とはいえ食料があるだけ、食えるだけありがたいってところだろう。周りもそんな感じだし、地震があった後だから余計にそう思う人が多いんだと思う」


 「実際に食料の奪い合いに発展していてもおかしくないからな。ここは良くも悪くも1国の首都だ。そこで暴動を防ぎ、食料を確保出来ているのだから、優秀な王なのではないか? 家臣が優秀なだけかもしれんが」


 「そこは別にいいんじゃないか? 優秀な家臣の言を受け入れるだけマシだろ。無能はやらなくていい事をするし、やるべき事をしないもんだ。だからこそ無能なんだしさ」


 「やらなくていい事をし、やるべき事をせぬか……。強姦するうえに、悪事を正そうともせぬ。どこかの種族の雄のようなものを無能と言うのだな」



 それに関しては何とも言えないので、俺は何も言わない。もちろんドラゴンの雄は問答無用で聖人に変えるが、だからといって根っこが分かっている訳じゃないんだ。ドラゴンの雄がおかしくなったというか、何で当たり前になったのか分かっていないし。


 歴史的な事だと分からないというか、当のドラゴンでさえ理解していない可能性が高い。それぞれの群れの長老でさえ、それが当たり前のような感じだったしな。そもそも古くからの事と言ったって、ドラゴンがそれを覚えているかと言えば……。


 不老長寿と記憶は別だからなぁ……。寿命が無いとはいえ、必要ない事なんてすぐに忘れてしまうし、長く生きるほどそれは顕著になっていくだろう。なのでドラゴンに聞いたところで何故なのかは多分判明しない。


 そんな事を宿の部屋に戻ってからウェルに話しているが、ウェルも何となく俺の言っている事は分かるようだ。



 「アルドの言いたい事は分かる。最初のキッカケというか、何故雄どもがあんな風になっていったのかは誰にも分からんだろう。歴史の片隅に埋もれてしまっておるだろうし、誰も理解しようともせんかっただろうしな」


 「それにさ、実は気になっている事があるんだよ。何故ドラゴンは数が少ないんだ? 本来は不老長寿である以上、そして強い以上は数がどんどん増えてないとおかしい。にも関わらずドラゴンの数は少ない。何故だ?」


 「………何故だ? 改めて考えてみると私にも分からん。確かにアルドの言う通り、私達には寿命が無い。寿命がない以上は何百年、もしくは何千年と生き続ければ、その分だけ数が増えねばおかしい」


 「その割にはドラゴンって数が多くないよ? どこかで死んでるのかな? だから常に数が足りない?」


 「でもドラゴンが死んだらすぐに分かりそうだけど? 同じドラゴンが騒ぎそうだし……」



 考えても分からないし、ウェルも長きに渡って群れを離れていたから分かってないんだよなー。そんな事を考えていると、久しぶりの声が響いた。何か教えてくれるらしい。



 『まあ、教えるのですけどね。貴方が知っている通りドラゴンの雄は強姦していますが、元々それは数を増やす為です。ですが、ドラゴンの雄も雌も大凡おおよそ百年ほどで子供を作る機能を失います。つまり生まれて百年ほどで子を作るのは不可能となるのですよ』


 『あらら。それを知らずに頑張ればどうにかなると思っている……あれ? でも死ななければ数は減らないですよね? 百年ほどで子供を作れないのは分かりましたけど、それと減るのは繋がりませんが……』


 『ドラゴンは永く生きられますが、同時に永く生きられないのです。生物としてのリミッターが付いており、それが破損すると死にます。ですので寿命が無くても、リミッターが破損した段階で死亡となるのですよ。後は大地に還るだけです』


 『という事はウェルも含めて、ドラゴンは突然死するという事ですか?』


 『その考えで間違っていません。ドラゴンの生物としてのリミッターは幾つかあります。よって、それらが破損しない限りは永く生きられるのです。ちなみにですが、そこにいるドラゴンは呪い生物の心臓を食べさせた所為で、リミッターによる死からは解放されています』


 『………そういう意味でも、呪いの心臓の取り扱いには注意しなければいけませんね』


 『ええ、十分に注意しなさい。竜の神が教えておいてくれと言いましたので教えておきます。竜の神いわく、「その星のドラゴンが死滅しても構わぬ」そうですよ。だから気にせず枷を4つ使いなさい』


 『わかりました』



 気配が消えたから話はあれで終了なんだろう。しかしドラゴンが突然死する生き物だとはなー、流石に驚く。俺が突然黙ったので何かあったのかと思っていた皆に、先ほどの念神からの話を聞かせる。


 皆は黙って聞いていたが、突然死というところでビックリしてウェルを見た。ウェルは何となく知っていたのか、そこまで驚いていないようだ。


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