1881
どうでもいいドラゴン3頭を真っ白にした後も南へと進み、魔物を白くしつつ昼時になったので止まって食事を作る。ゆっくりと食べた後、再び南へと進むのだが……町の堀と壁が見えてくると、喧騒も聞こえてきた。
俺は皆を止めて【空間把握】で確認するが、酷い略奪と虐殺が起きている。犯されて殺されたような死体や、バラバラにされた死体。それだけではなく生きながらに焼かれている者も居る。完全な地獄絵図だ。
「という事でアテンビー町には近寄らない方が良い。少し戻った所にカマクラを作る。【探知】で調べたら、生命反応の残りは40人以下しか居ない。夜中に全て聖人……いや、ここまでのゴミなら枷は4つでいいな」
「そうだな。あまりに酷すぎる惨状だ。流石に神々も枷を4つ使う事はお許しくださるだろう。ここまでの暴動が起きるという事自体、アルドが言っていたように地震というものに慣れていないからなのだろうな」
俺達は話しながらも道を戻り、アテンビー町から見えない所まで戻った後でカマクラを作った。椅子とテーブルを作ったら少しゆっくりとさせ、その間に俺は全粒粉と神水で練っていく。
蓮に麦飯を頼み、イデアには蟹の身と野菜のスープを作ってもらう。その横ではかす肉と野菜の炒め物をウェルには作ってもらい味噌ベースで味付けをさせる。出来た生地を薄く円状にしていき、ウェルに作ってもらった具を乗せて餃子にしていく。
ウェルにも手伝ってもらい餃子を作ったら、脂を入れたフライパンで焼いていく。十分に焼けたら神水を入れて蒸し焼きにして、火が通ったら完成だ。幾つも焼いていき餃子を焼き終わった頃には麦飯も炊けたので、後は配膳して食べるだけとなった。
麦飯とスープに餃子の準備も終わった。それじゃあ、いただきます。
「それにしても、まさかここまで来てこんな事態に直面するとはな。地震が起きなければこうはなっておらんのであろうが、たった一度の地震でここまでになるとは……」
「仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないがな、それにしても酷いと言わざるを得ない。実際、完全に町は崩壊している。元々の住民が何処に行ったかも分からんし、邪気や呪いの連中が発生していない事が驚きだよ」
「邪気……もしかしたらですけど、この町で出た邪気と呪いに汚染された者が、手前の村まで移動していたのでは? 呪われた人はその邪気と呪いに汚染されたのかも……」
「何だかそれもありそう。実際にこの町には邪気に汚染されている人は居ないけど、こういう町の方が邪気に汚染される可能性は高いと思う。だって村はスカスカだもん。東の国と違って」
「そういえば、そうだな。東は堀と柵で守るからか、村も密集している。畑は堀と柵の外側にあるうえ、育って収穫出来ているみたいだし」
「代わりに畑の外側も堀になっていたりする事も多いがな。まあ、作物を守る為には仕方ないのだが」
「こっちは堀とか柵とかが村に無いですけど、代わりに村が広くて家がポツポツとあるだけですもんね。邪気が充満しないと言えますから、溜まりにくいでしょうし……」
「そうだな。こっちの宇宙には邪気を吸い取る機構があるから、よっぽど密集してないと宇宙空間にまで吸い上げられる筈だ。それより早く人間種の体に蓄積しないと邪生にはならないだろう」
「という事は馬の人って凄く珍しい?」
「非常に珍しいと思うぞ? そもそも首から上だけ馬というのが訳が分からん。冗談でも何でもなく本当にな。私でさえ理解不能だし、意味不明に過ぎる。馬の首から上を被っていると言われた方が、まだ納得できるだろう」
そんな被り物、元の星にあったなぁ。ただそれ以前に、悪魔だったり神様だったり仏様にも馬面って居るけどさ。この星では頭のおかしい存在か。特に首から上だけっていうのが、どうしても変に思うんだろう。
食事後はさっさとカマクラに入り硬く閉じる。何かの襲撃の可能性もあるので、常に地面も硬く圧縮してその上にすのこを敷く。いつもその形なので下からの襲撃も無いだろう。まず硬い地面が突破出来ないだろうし。
布団を敷くと、子供達はその上でリバーシを始める。俺は久しぶりにダリアをブラッシングし、寝ても気にせず続けて綺麗にしていく。終わったらフヨウも行い、「でろーん」となっても納得できるまで撫で続けた。
2匹が終わったら蓮とイデアを梳き、2人と2匹を寝かせて【昏睡】を使う。ゆっくりと抱き付いてきたウェルも満足させた後で梳き、眠っても綺麗になるまでブラシで梳く。納得できるまでやったら【浄化】して服を着せた。
後は寝かせてカマクラ内と全員を綺麗にしたらカマクラの外に出る。再びカマクラを硬い土壁で閉じたら、アテンビー町へと移動する。
……それにしても酷い。モラルの低い所で暴動が起きるとこうなるんだろうが、尋常じゃない。
俺は隠密の4つの技を使うと一気に移動し、アテンビー町に入ったら少数の者から狙う。【衝気】で気絶させ、枷を4つ嵌めたら次の奴に枷を嵌める。どんどんと嵌めていき、3分経ったら回収。
それを繰り返していき、無理矢理に浄化能力を持つナニカに変えていく。暴虐を行ったような連中に慈悲は必要ない。おそらく領主家はもう潰れてしまっているだろう。こういう時には権力者が真っ先に狙われるしな。日頃の鬱憤も篭めて。
手当たり次第に枷を4つ着けていると、豪華な屋敷が倒壊しているのが目に映った。どうやら領主家は地震でほぼ死んでいたみたいだな。そして統制がとれなくなってスラムの連中が暴徒と化した。
領主家のこの惨状を見たら、働いても給料が出ないと分かるからなー。兵士も暴徒になったか、それとも家族と逃げたか。大凡はそんなところだろう。それにしても碌な物は残ってないな、たぶん暴徒が奪っていったんだろうけど。
手当たり次第に引っ繰り返した跡があるし、周りに瓦礫が放り捨ててある。おそらく金目の物か食べ物を探したんだろうが、メチャクチャになり過ぎていて諦めたんだろうなぁ。考えてないで他の連中もさっさと変えよう。
罪を暴く腕輪で探るが、これ以上赤く光るヤツが居ない事を確認してから戻る。死体を見つけたら【浄炎】で燃やしていったが、それにも限度があるしな。瓦礫の下の死体は目視でないと見つからないんだよ。生命反応も魔力反応も気配も無くなるから。
俺は自分を【浄化】しながらカマクラに戻り、入り口を開けて中に入る。閉じたらもう一度全て【浄化】し布団に寝転がる。それじゃあ、おやすみなさい。
<呪いの星103日目>
おはようございます。今日は西にあるウィク村へと移動します。ただ、アテンビー町の連中も一部は西に逃げているだろうから、ウィク村がどうなっているかは分からない。場合によっては逃げた連中と争いになってるかも……。
その場合はどっちが勝つんだろうな? 暴動でおかしくなってる方は何でもしそうだが、だからといって村の連中も容赦は無さそうだ。既に騒動が終わっていればありがたいんだが、未だ争っている最中なら近付くのは危険かも。
朝の日課を終え、椅子に座って紅茶を淹れながら考えるものの、結局は行ってみないと分からないで結論が出た。当たり前だと言えばそれまでだが、色々考える事は悪い事じゃないし、何より暇なんだよ。
子供達が起きたなと思ったら、2匹もウェルも起きたので水皿と神水の用意をする。出てきた2匹が神水を飲み、足下で丸くなるのと俺の体を登って首に巻きつく。蓮は出てきたが、今はイデアがトイレだ。
蓮が紅茶を入れてハチミツを溶かしているタイミングでイデアが出てきた。ウェルもすぐに出てくるだろう。




