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「「「「「………」」」」」
「想像し辛いか? ただそうとしか言い様が無いんでな、他に説明の方法が無い。首から上が馬、首から下は人間だ。ちなみに呪いの方は全身が熊みいたいになってるな。二足歩行の熊が正しい。こっちは普通だ」
「普通……に熊が二足歩行だって事ですね? 邪気と呪いの方は首から下が人間……。訳が分かりません。邪気と呪いが混ざっておかしな事になってるんでしょうか? 前の星と比べて邪気の効果が違う?」
「こっちの宇宙というか銀河というか、この星の周囲が前の星と同じじゃないからなぁ、当然同じにはならないと思うが……。邪気の所為であんな面白状態だと思うと、何とも言えなくなるな。本人の自我は既にないだろうけど」
「まあ、それはそうだと思う。邪気に汚染されても狂っちゃうし、それに加えて呪いもだと、もうどうにもならないと思うよ? 狂い過ぎておかしなのに変わっちゃってると思う」
「まあ、馬面のヤツは発狂したように暴れてて、呪いの熊に噛み付いて喰ったりしてるな。やっぱり多少なりとも邪気を持つからか、呪いだけの奴に比べて圧倒的に強い。仕方ないんだろうけど、これはダメだ。勝負は決まったな」
「それは構わんがどうす……残っていた魔力反応などまで消えたぞ? これは生き残りが殺されたのではないのか? まさか、見捨てた?」
「ある程度の呪いに汚染されてるんで見捨てた、が正しい。既に呪いの生物に変わる一歩手前だった。あれを【浄化】したとて、もうどうにもならない。正直に言って俺達がここに到着した時には既に手遅れだった」
「とはいえ放置するのもどうかと思うがな。最後まで己の生き方をさせるというのは、分からぬではないが」
「呪いに塗れようが邪気に塗れようが、そうなった以上は取り返しがつかない。何処でどうなろうが元には戻らん。今は居ないから言えるが、おそらくアリシアも元の性格とは違うと思っている。良い意味でなのか悪い意味でなのかは知らないが、呪われた時点でおそらく別のモノになっている」
「………それって元のアリシアとは違うって事? 元々のアリシアを知らないから分かんないけど……そうなんだ」
「と、言うより、アリシアの性格って本当に王女か? 精々が市井のお金持っている家の娘ぐらいだろ。どう考えても王女の感性と価値観してない。逞しすぎるんだよ」
「アルドの言いたい事も分からんではない。王女なのだから箱入りで、何かあったらメソメソしてそうなものだからな。そういう意味ではアリシアは非常に逞しいと言える。アリシアはそういう者だと揶揄っていたが、真面目に考えると違和感があるな」
「確かに王女様という感じではありませんでしたね。自称正義のヒーローはすぐに洗脳されてしまいましたし……やっぱり大小あっても呪いの影響を受けるんでしょうか?」
「というより、受けない方がおかしいんじゃない? そして受けちゃったら、多分今までの自分じゃなくなるんだと思う。それが少し変わるのか、全く違う人になっちゃうのかは分からないけど」
「俺もそうだし皆もそうだが、寝る前に【浄化】してるし起きた後も【浄化】してる。日中にも細かく【浄化】してるから、まず呪いの影響を受ける事は無い。後イデアはそもそも呪いに強いしな」
「そういえば話をずっと続けているが、呪われた奴と邪気と呪いの奴はどうなったのだ? 何故か反応が無くなっているが……」
「既に【浄化】して倒した。死体も【浄炎】で焼いて【粉砕】したから、もう残っていない。実際に呪われていた他の連中も喰い殺されたしな。これでこの村に生き残りは誰もいない。全滅で終了だ」
「全滅するまで放っておいたのだろうが……既に呪いの者と邪気と呪いの者しか居なかったのなら、私達が到着した時には既に全滅していたと言えるか」
「ですね。アルドさんが動かなかったのが分かります。既に全滅してるんじゃ、動いたところで仕方ないですからね。それで、まだ時間はありますけど調べますか?」
「もちろん調べる。放っておいたら誰か住むかもしれないから手はつけないけど、調べる事はしておかないとな。今回は俺達関係ないから何も持って行かないように」
「はーい」
そう言った後、俺達は村の中を歩きまわる。死体があれば【浄炎】で燃やし、家の中だと外に出してから【浄炎】で焼いて、家の中を【浄化】していく。そうやって全ての家々を歩いて周り、カマクラに帰ってきた時には夕日が沈む時間になっていた。
俺達は急いで料理をし、食べたらさっさとカマクラへと入る。今のところは問題ないようだが、突然フラッシュバックする事もあるので、子供達が地震でどれだけ傷を受けたか分からないが、しっかり見ておかないといけない。
枷を使っているのでそこまで大きな傷にはならないと思うんだが……。楽観的になるのも良くないので難しいところだ。
カマクラ内で遊んでた子供達も眠たくなったのか自分で布団に寝転がり、2匹を含めて【昏睡】を使った後、ウェルを満足させたら俺も寝よう。カマクラ内と体を綺麗にしたら、おやすみなさい。
<呪いの星102日目>
おはようございます。今日はアテンビー町まで行きますが、地震の被害が思っているより深刻なので町の方もどうなっているか分かりません。場合によっては相当の被害が出ている恐れがあり、略奪や虐殺まで起きているかもしれない。
ショイル村はそうでもなかったが、アレは偶然にも被害が少なかったから、もしくは村の中ではいがみ合っていなかったからという可能性がある。町は人が多いし、当然ながらいがみ合いも憎み合いもあるだろう。そういう奴が暴走していると……かなりマズい。
町がどうなろうが構わないが、子供達が再び心にダメージを負うかもしれん。当たり前だが、知らない他人より身内の方が遥かに大事だからな。正直知らん奴が野垂れ死にしようがどうでもいいが、ウチの子が心に傷を負うのはなぁ……イヤだ。
そういうのが巡って助け合いなら分かるんだが、力があれば助けろというヤツの気がしれん。なら、お前だって少しの力はあるんだから助けろと言いたい。何もしない奴に限って五月蝿いんだよなー、かつての地球でも……っと、今はそんな事はどうでもいい。
朝の日課を終わらせて、カマクラの入り口を開けたら椅子に座り紅茶を淹れる。昨日は澱んでいたが、今日は清浄だな。昨日だいぶ綺麗にしたからかね? 紅茶を飲みながらボーッとしていると、今日は続々と起きてきた。
タコスモドキを作って食べた俺達は後片付けをし、整地したら南へと出発する。次はアテンビー町だ。のんびり歩きながら魔物を白くし、子供達の手を借りていると上空から3匹下りてきた。
あからさまにウェルが目当てなのか下卑た視線をウェルに向けている。俺が目に入っていないのは人間をゴミだと思っている証拠だろう。いつでも勝てる奴だから興味も無いってところか。
下りてきた瞬間【衝気】を使って気絶させ、皆に枷を4つ嵌めさせたら3分待つ。真っ白になったドラゴン3匹を見て呆れるウェル。枷を回収したらさっさと先へと進む。
「確かにアルドの言う通り真っ白になったが、情け容赦が一切無かったな。まあ、あの下卑た視線を向けてくる以上、一欠片の慈悲も要らんが」
「なんか綺麗に真っ白だったねー。ちょっと面白いかも」
「本当にね。ビックリするぐらい真っ白すぎて、おかしな生き物に見えたよ」
枷でおかしな生き物になってるから、間違ってないぞ、イデア。




