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 <呪いの星101日目>



 おはようございます。今日は次のソイルン村へと進むのですが、まさか隠れたドラゴンが住む村があるとは思いませんでした。確かにドラゴンは見た目の年齢を自在に変えられるが、よもや婆の姿で隠れているとは……。


 朝の日課を終わらせて、まずは全員の枷を外す。苦しそうな表情や声が出ている訳ではないので、おそらく大きな傷にはなっていないと思う。カマクラの入り口を開けて椅子に座り、紅茶を淹れながら考える。


 それはドラゴンの雌が逃げているという事実だ。ウェルだけでなく、それ以外にも逃げたり隠れ住んだりして人間種に紛れているドラゴンが居る。おそらくそこまで多くはないのだろうが、居るという事実がな……。


 いかにドラゴンがクソかという事を証明していると思う。正しくは今のドラゴンを纏めている連中、もしくは雄全体が腐っている結果だろう。それと、昨日の雄は何故真っ白になったのかだな。答えは出ないだろうが、アレも分かってない。


 過去に色々あった婆の姿の方は真っ白に……なってるのか? ドラゴンの姿と人間種の姿は違うだろうし、ドラゴンの姿の方は真っ白になっているのかもしれないな。そこは見てないから分からないし。


 紅茶を飲みつつ思考していると、開けっ放しのカマクラの入り口からフヨウが出てきた。水皿に神水を入れてやると「ズゾッ」と吸い上げてから定位置へ。フヨウと2人で静かに過ごしていると、次に起きてきたのはイデアだった。


 トイレに行った後で椅子に座ったイデアはコップを出して紅茶を入れる。ハチミツを入れて溶かしている最中にキョロキョロしたので、「大丈夫だ」と声をかけておく。昨日はこのタイミングで地震が来たからな。



 「大丈夫だと分かってるんですけど……」


 「昨日のはビックリするほど大きかったからな、分からなくはない。とはいえ、今のところは問題ないからそこまで気にする事はないさ。それにカマクラである以上は生き埋めとかにはならないしな」


 「そうですか……まあ、建物より安全だというのは確かにそうでしょうね。大きな建物ほど崩れた時に危ないですから。それに、カマクラだとすぐに逃げられますし」


 「そうそう。普通の家より安全だよ、色んな意味でな」



 イデアと話をしつつ過ごしていると、続々と皆が起きてきた。俺は起きてきた皆に挨拶した後、全粒粉と塩と神水を混ぜて捏ねていく。その横で野菜のスープを作りつつ、チーズを灰持酒や香辛料を混ぜつつ溶かす。


 饅頭の生地が出来たら成形して蒸していき、チーズが出来たら置いておく。野菜スープも完成したので椀に盛り、最後に蒸しあがった饅頭を皆の皿に乗せたら食べようか。溶かしたチーズの鍋はテーブルの真ん中に置いてある。それじゃあ、いただきます。



 「ん~~~!! チーズがね、トロトロで饅頭につけて食べると凄く美味しい! 熱いけど美味しい!」


 「久しぶりだけど美味しいね。チーズが灼熱だと思うくらい熱いけど、饅頭の生地と合わさって美味しい。野菜スープがほんのり甘くて優しい味だから、チーズの美味しさが味わえるよ」


 「うむ、美味い。ただ、強烈なほど熱いがな。これは仕方がないというか、熱々でなければ美味しくないのでは我慢するしかなかろう。それにしても熱いが美味い」


 「うん、時季的にはアレだが美味い物は美味い。それよりもウェル、昨日こっちを威圧してきた婆さんを覚えてるか?」


 「ああ、覚えておる。ちゃちな威圧ではあったが、きちんとした威圧でもあったな。それを使っておる年寄りが居たが、どうかしたか?」


 「あの婆さんな、実はドラゴンだった。<竜眼>を騙す訓練をしたらしく、それで同族から隠れ住んでいたんだそうだ。何でも気の波のようなものが洩れないようにすれば、人間種と誤認するらしい。あの婆さんもドラゴンの雄に酷い目に遭わされた被害者だった」


 「……<竜眼>を騙す訓練とは驚きだが、そこまでしても雄どもから逃げたかったのであろうな。気持ちは分かる。私もアルドに会えねば、今も逃げているだけだっただろう。それにしても雄どもは……」


 「その雄もカマクラに戻る最中に下りて来たがな。【衝気】で気絶させた後、枷を4つ着けてやったら真っ白になっていた。ちなみに婆さんの姿のドラゴンにも枷を4つ着けてある。その後、どうなったかは知らんが」


 「……かなり雑に変えたのだな? 枷を4つ着けた割には適当とは……」


 「ドラゴンだという事はあるだろうが、他の者とそこまで変わるとは思えないしな。結局は浄化能力か何かを持つだけだろうし、中身が聖人になるだけだ。真っ白になっている以上、それ以外になれる訳でもないし」


 「まあ、それはそうか……。それにしても我らドラゴンからも白くなった者が現れたか。リョクディマのような者が減るとよいのだが……それは雄ども全てを聖人にでもせねば無理か」


 「分からないぞ? 半数いかないぐらいを聖人にすれば、後は勝手にドラゴン内で処理してくれるかもしれん。そもそもドラゴンは不老長寿というか寿命が無い。駄目な奴は全て始末して、一から数を増やしていくかもしれないし」


 「案外その方が良いのかもしれんな。今の腐り方を考えると、根こそぎにせねばドラゴンは変わらんかもしれん。腐った考えが長くあり過ぎた……今さら全て忘れろと言ったところで、あの雄どもは聞くまい」



 しかし、どうしてドラゴンがあれ程おかしな考えになったのやら? 普通はあそこまで極端な事にはならない筈だけどなー。祖先が食われたと主張するが、それが原因でもないだろうし。そもそも殺されて食われたのは古い時代だしさ。


 朝食後、後片付けをして準備を整えると、カマクラなどを全て壊して整地し歩いて南へ。この辺りは森が近くて開けているのが南側しかない為、南に領地を作っていったんだろうか? 別に東西に真っ直ぐなければいけない訳でもないし。


 見つけた魔物を片っ端から真っ白にしつつ先へと進み、昼食を挟んで南下していると村を発見。入り口付近にカマクラを作ると、何だか妙な感じがした。不浄の気配というか、コレは……。



 「何だか凄くイヤは感じがするよ? 村の中からかなぁ……」


 「ああ、蓮の言う通りだ。そしてこの気配はアンデッドだな、ゾンビではないみたいだが……」


 「アンデッドって事は、不浄ですか。アルドさんが浄化すれば終わる筈ですけど……しないんですね?」


 「しないと言うより、ちょっと面倒な事になってるっぽい。なんか微妙に邪気を纏ってる。ここまで邪気を殆ど見なかったから問題ないと思ってたんだが、邪気と呪いが混じったヤツが居て暴れてるんだ。まあ、それ自体はいいんだが……」


 「いや、良くないであろう。何故良いと思ったのか理解に苦しむがな」


 「良いというか何と言うか……。分かりやすく言うと、呪われた奴と邪気と呪いの混ざったヤツが戦ってる。それ以外の生命反応が僅かしかないから、おそらくは喰われたんだろう。どうなっているのやら?」


 「どうにかしなくていいの?」


 「特に問題ないな。呪いのヤツが死んでもどうにでも出来るし、邪気と呪いのヤツが倒れたら真っ白にすればいいだけだし。どっちにしたところで助太刀してやる理由が無い。これが普通のヤツが戦ってるなら分かるんだが、戦っているのは二足歩行の馬だしな」


 「二足歩行の……馬?」


 「正しくは馬頭みたいな感じだ。首から上が馬で、首から下が人間だと言えば分かりやすいか?」



 何故こんな姿なんだろうな? 今までの奴は……今までにも人間型のヤツはいたな。それにしても、あんな見た目じゃなかったが。


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