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魔法の練習をしていた子供達もウトウトしてきたので寝かせ、左右に2匹を寝かせて【昏睡】を使って深く眠らせる。そのタイミングで抱き付いてきたウェルは【極幸】で沈め、ベッドに寝かせた後で部屋と体を綺麗にする。
全員に枷を1つ着けたら準備完了。俺は隠密の4つの技を使って部屋を出ると、宿の中の客から聖人化していく。それが終わったら今度は従業員を聖人化し、次は周囲の建物に移る。
それぞれの建物には起きている者も居るが、【昏睡】で眠らせて聖人にしていく。周囲の建物が終わったら、町の外に居るカロッソ村から来ている者達を聖人していくのだが酷い。町の内側で雑魚寝させているだけだ。
町の入り口入ってすぐの所に、大量に寝転がって寝ている人達が居る。聖人化するには面倒で、まずは周囲の建物に居る人達も【昏睡】で眠らせて、なるべく違和感を持たれないようにしてから始める。
カロッソ村から連れて来られたであろう人達は、補修で疲れているのかぐっすり寝ている。それを更に【昏睡】で深く眠らせ、3つの枷を着けて聖人化していく。当たり前だが赤く光る者しか聖人にしていないが、青く光る奴がいない。
子供でも赤く光るヤツばかりなのだから当然だが、それにしても罪を犯した事のある奴が多すぎないか? 幾らなんでも……と思うくらいには酷い。幾ら荒れている時代とはいえ、ここまで酷いのには何か理由があると思うんだが……。
まあ、俺が導いてやる必要もない訳だから、特に気にしなくてもいいのかもしれないが、関係ない立場だからこそ気になるのかもしれない。そんな事を考えつつも、最速で聖人化していき、カロッソ村というか雑魚寝をさせられている者達は終わった。
俺は町の外側を走り回り、他に雑魚寝をさせられている者が居ないか確認すると、宿に戻って周囲の聖人化を始める。宿の周囲から徐々に広げる気だったのだが、カロッソ村の連中だけは今日中に終わらせておく必要があったので先に済ませただけだ。
終わったので宿へと戻り周囲を聖人化していくのだが、この町でも夜に怪しい奴が歩いている事は殆どない。何と言っても町の人口がそこまで多くないのと、スラムの人数も東の国と比べれば格段に少ないからだ。
なので比較的楽に動き回る事が出来る。そこまで目撃される事に気を使う必要も無い。もちろん誰が見ているか分からないので隠密の4つの技を使うのだが、東の国で夜に動き回るよりは緊張感は薄い。むしろ危険かもしれないが、おそらく大丈夫だろう。
仮に気付いた者が居ても聖人にすれば終わりだし。……よし、今日はここまでで終わろう。カロッソ村の村人の事があって微妙に進んでないが、そこは仕方がないとして諦めよう。焦ってもしょうがないし、宿に戻るか。
宿の前で自分を【浄化】し、部屋に戻ったら自分に枷を1つ着けてベッドに寝転がる。それじゃあ、おやすみなさい。
<呪いの星98日目>
おはようございます。まだ眠たいですが、枷の御蔭で精神的には楽です。精神の浄化効果が改めて高いのが分かるが、毎日着けるのは怖いのでしない。全員の枷を外して回収したら、朝の日課を済ませて紅茶を淹れる。
煮出してコップに入れて飲んでいると、外をウロウロする者が現れた。こんな早朝に盗人かと思ったが、【空間把握】で確認すると巡回の兵士らしい。腰に剣を佩いているから兵士だと思うのだが、視線は物色中の泥棒みたいだな?。
そんな事を思いつつ監視していると、イデアが起きたらしく部屋を出た。俺は見送ってから監視に戻ると、兵士は宿の近くを離れたようだ。なので監視を解除するのだが、こういう時代だと兵士も酷いな。目つきが泥棒と変わらないなんて。
イデアが戻ってきて不思議そうに見てくるので説明すると、何とも言えない顔をしながら溜息を吐いた。まあ、気持ちは分かる。酷い兵士というのはそれなりに居るが、泥棒が物色するかのような目つきは駄目だ。不審に過ぎる。
イデアも何とも言えなくなったんだろう。口に出したくもないらしく、黙って紅茶を飲んでいる。2人で静かな時間を過ごし、起きてきた蓮とウェルに同じ話をすると2人も溜息を吐いた。
「泥棒のように物色する兵士な。民心も荒んでいるから分からんでもないが、治安を守る兵士がそれでは……治安が良くなる筈も無い。兵士がそんな怪しい目つきをしておれば、尚の事、町の者は警戒するだろうに」
「酷い兵士なんてそんなものだと思うけど、こっちは本当に酷いね。それでも住民同士で殺し合いをしないだけマシなのかなぁ。本当に酷いと町中で殺し合いとか始めそう」
「まあ、無い訳じゃないだろうが、逆に東より数が少ないから大丈夫だとは思う。東の国の場合はスラムの連中の抗争で殺し合いがあるからな。こっちではスラムの人数が少ない。盗賊となるならまだしも、スラムの人数はな」
「こっちではスラムに居られるだけ、まだマシなのかもしれんな。スラムにすら居られん者は魔物の腹の中かもしれん。盗賊団にならないと生き残れないのかも……」
「町の外で生きるとなればそうだろうな。東の国でも洞窟の中に住んでる盗賊団の一部とか居たが、ああいうのも実力が無ければ喰われるだけだ。移動してきた場所では盗賊団なんて見つからなかったし、やっぱり昔の話なのかもしれない」
「それが何処かは知りませんが、成功したのなら自分も続こうとする輩が現れそうですけどね?」
「でも上手くいかないんじゃない? むしろ自分がって思う人多いだろうし、内部で裏切りとか当たり前にありそうだよ? 盗賊だし結局は纏まらないんじゃないかなー」
「まあ、そうだろう。盗賊団となれば脅威かもしれんが、纏まりが無ければ素人集団と変わらん。村人が徒党を組んでおる程度なら町の兵士だけで蹴散らせよう」
紅茶を飲み終わった俺達は食堂に行き、大銅貨3枚で朝食を食べる。その後は宿に戻ってゆっくりするも、俺はさっさと寝かせてもらう。それじゃあ、おやすみ。
「ん……分かった、起きるから止めてくれ。肉球でペシペシするの止めなさい。顔だから」
「ニャ!」
「はいはい、起きますよっと」
今日はダリアが起こしてくれたようだが、全員寝ているようだ。布団は俺のアイテムバッグから勝手に出したらしい。それ自体は構わないんだが、俺と違って日中に寝ると、夜寝られなくなるぞ? まあ、起きてても問題ないけども。
明かりを点ける必要も無いし、真っ暗でも遊べるから問題ない。ただ、夜中起きてると朝が辛くなるだけなんだが……。まあ、最悪は【昏睡】で強制的に眠らせるか。
流石にこのままでは駄目なので、【覚醒】で強引に皆を起こし部屋と体を綺麗にしたら、布団などを片付けて食堂へと移動する。大銅貨3枚を支払って注文したら、席に座ってゆっくりと待つ。
「入り口の田舎者、なんだか今日は元気に働いてたな? 昨日はやる気もなくノロノロしてたけど、今日はやたらにキビキビしてたぜ? いったいどういう風の吹き回しだろうな」
「早く終わらせて帰りたいんじゃねえの? オレ達からすりゃ早く直れば何でもいいから、お互いにちょうど良いだろうさ。余計な事言ってやる気無くさせるのもアレだし、黙ってりゃいい」
「まあな。それにしても、あの魔物の群れはいったい何だったんだろうな? 結局兵士達が倒してくれたみたいだけどよ、大きい蟻みたいなので大量に来たが……今まであんな事あったか?」
「分からねえ。昔はあったのかもしれないけど、古い時代の事なんて知らないから何とも言えないな」
蟻の魔物ねえ……また厄介なタイプだな。




