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結局、こっちを見ていた連中は無言のまま去って行った。こっちを襲うための下見か何かなのか、それとも羨ましくて見ていただけなのか……。とはいえ、あんなに離れていたら匂いも感じないだろうし、やはりこっちを襲う気かな?。
でもなー、悪意は感じてないんだよなー。何を考えてるか余計に分からん。まあ、家々が離れているとはいえ村だ、さっさと聖人にしていけば終わる。悩むくらいならさっさと聖人にしていけばいい。
夕食後、片付けを終えたらカマクラの中に入って入り口を閉じる。子供達は魔法の練習をし、俺はダリアにブラッシングをしながらウェルと雑談中だ。ダリアは既に眠っているが、毛艶が整うまでブラッシングは続ける。
十二分に綺麗になったら、次はフヨウだ。散々撫でて精神を癒し、力が完全に抜けても続けてストレスフリーな状態へ。何もかもが抜け切ったような「でろーん」状態になったら次は子供達だ。
今日は蓮から始め、頭を固定しながら梳いていく。すぐにウトウトするものの、髪が綺麗になるまでひたすら繰り返す。髪が十二分に美しくなったら次はイデアの番であり、同じように髪が綺麗になるまで梳き続ける。
十二分に綺麗になったので終了し、すのこの上に敷いた布団に寝かせていく。子供達と2匹に【昏睡】を使ったら、我慢の限界を越えて首筋にキスしてきていたウェルを剥がし、押し倒して貪った。
ウェルは雌の本懐を遂げるが如く悦び続け、今は幸せそうな顔で気を失っている。俺は【念動】で服を着せながらウェルの髪を梳き、十二分に綺麗になったら寝かせる。カマクラ内と体を綺麗にしたら、俺以外の全員に枷を1つ着けていく。
1つならば高速で精神が回復する効果しかない。かつて前の星で俺自身も使った事があるので大丈夫だ。その状態でも普通に起きられる事は確認済みだからな。永遠に眠り続けるとかは無い。
俺はカマクラの入り口を壊して外に出たら、硬い土で入り口を閉じて準備を完了させる。隠密の4つの技を使ってそれぞれの家を回りつつ、赤く光る奴等を片っ端から聖人にしていく。相変わらず赤く光る奴”しか”居ないけどね。
そうやっていると、村の中央より入り口側に人が集まって来ているのが分かった。おそらく俺達の食事をジッと見ていた奴等だろう。まだ集まっているだけなので手は出さない。それより聖人化の方が先だ。
ある程度の連中を聖人に変えていると動きがあったので、素早く家を出て動いている奴等を追跡する。案の定カマクラの前まで来たので【衝気】を使って気絶させ、枷を2つ嵌めて確認していく。
その必要があるのかと思うくらいに襲って奪う事しか考えていないので、さっさと聖人化しながら村の中央に【念動】で運ぶ。長老の息子だとかいう奴は何故か含まれていなかったが、気にせず村の中央に下ろしたら聖人にして放置。再び家々を回り聖人化の続きを行う。
人間種の生命反応がある場所に行き、赤く光る奴を片っ端から聖人にしていく。時間が掛かったものの、ようやく最後に残しておいた一番大きな屋敷へ。中の奴を【昏睡】で眠らせてから侵入し、聖人にしていく。しかし、まさか起きてるとは思わなかったな。
おそらく長老だと思しき婆だけは、蝋燭を点けて起きていたんだ。何やら紙に書いているようだったが、それは後回しで聖人にしていく。それなりに大所帯ではあるものの12人なので、そこまで時間も掛からず終了。最後の長老を残すのみとなった。
長老が書いていた紙を読み、ついでに枷を2つ着けて確認する。やはり思ったとおりだった。この村は手前のフェデモ町とは領主が違うんだが、この長老はフェデモ町の領主に情報を売って金を得ていた。つまりこちらの領主にとっては裏切り者だ。
それなりの内情をバラして金銭を得ていたっぽい。そうやって得た金で村での地位を誇っていたようだ。長老と呼ばれているのも、村長と違い金銭で村人を助けたりして懐柔している事が理由だった。
本人いわく、最終目標は村長一家を追い出して村を牛耳る事だったらしい。村内下剋上ってところか。村長の家より大きい屋敷を構えているのも、それが理由のようだ。ようするにマウンティングの為なんだから呆れてくる。
こんな争いを繰り返しているのがこのドーレント王国のようであり、本当に名ばかりの国らしい。あっちでもこっちでも下剋上のような事が起きてるんだろう。
手当たり次第に聖人にしたし、いちいちそんな事を確認してこなかったから分かってなかった。聖人化を急がなきゃならなかったのもある。
少なくとも下らない争いに介入する気は無いので、情報を得ても聖人化しかしないけど。……さて、終わったから帰るか。
俺はカマクラに帰り、入り口を壊して中に入ったら入り口を閉じる。布団に寝転がって枷を1つ着けたら、おやすみなさい。
<呪いの星96日目>
おはようございます。今日は次の村に進む日です。村2つに町1つ。この国の領主はその程度しか持っていない可能性が高い。だから盗賊団に負けたりするんだろう。村2つに町1つじゃ、多くても50人程度の兵士しか集められない。それでどう争うんだって話だ。
もしかしたら連合を組んで戦争してるのかもしれないし、争いの時期は大半の男性を動員をするんだろうか? 戦国時代もそういう時季に戦をしていたらしいし、農民の手が空く時季に戦をするなら、もう少し人数は増えるかもしれない。どのみち思っているより少ないが。
それか、争い過ぎて村や町の数が減ってる? その可能性も十分にあるし、こっちの歴史まで調べる気もないから何ともいえないな。長老と呼ばれてる婆があんな事をしてたから気になってるだけで、首を突っ込む気は全く無い。
朝の日課を終わらせ皆から枷を外し、カマクラの入り口を壊したら外へ出る。紅茶を淹れながらも「あーだ、こーだ」と考えつつ、紅茶を飲みながら思案していく。とはいえ、結論としては関わらないが正解だし、とっくに答えとしては出ている。
気になるのは戦というか小競り合いというか、それに俺達が巻き込まれる可能性だ。とても面倒臭いので巻き込まれたくないんだが、それでも対策は考えておかないといけない。それに、両軍を聖人化するには時間が掛かる。
おっと、ウェルとイデアが起きたらしい。そろそろダラダラ考えるのは止めるか。俺は起きてきた2人に挨拶すると、2人も挨拶を返しつつ紅茶を入れる。何故か首を傾げているので、俺は聞いてみた。
「2人とも首を傾げてどうしたんだ? 何かおかしな事でもあったか?」
「いえ、何だか妙にスッキリと目覚められたといいますか、何だか晴れやかなので何があったのかと思いまして……」
「私もそうだ。昨夜が素晴らしかったのは事実だし、アルドの雌として大満足したのも事実だが……それとは違う、こう、スッキリ感がある」
「おそらく寝た後に枷を1つずつ着けたからだろうな。あの枷は1つだと、着けている者の精神を高速回復する。寝ている状態だったから更に回復したんじゃないか?」
「「………」」
「ジト目で見てくるのも分からなくは無いが、前の星で俺自身も着けて寝てるからなぁ。俺自身で実験済みな以上は、おかしな事になったりはしない」
「……そういえば、そんな事があったような………」
「あの枷を着けられた事に納得がいかない気持ちは分からなくもないが、道具は使いようでしかないぞ? <使える物は何でも使え>。それが神様達の教えだからな」
2人は嘆息したが、とはいえ精神が回復してスッキリしているのは間違いない訳だしな。決して聖人にするだけが枷の使い道じゃない。
ダリアもフヨウも回復してるだろう。2匹にも着けておいたし。




