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 多少の会話を終えると俺達は食堂へと移動した。大銅貨3枚を渡して注文すると、席に座って適当な雑談をする。周囲の連中はやはり見てくるが、イヤな見方じゃないのが微妙な気分の元でもある。


 手を合わせて祈る奴とかが居て、とてつもなく微妙な気分になるんだよ。出来得る限り視界に入れずにスルーし、食事を終えたら宿に戻る。いちいち疲れるが、それでも聖人にする事を止める訳にもいかない。


 部屋に戻って全員が安堵の息を吐くと、子供達はトランプで遊び始めた。俺はダリアの相手をしつつウェルと雑談をして暇をつぶす。子供達が舟を漕ぎ始めたのでトランプを片付けてやり、敷いてある布団に連れて行って寝かせる。


 左右に2匹を寝かせて【昏睡】を使い、俺の手をとってベッドに引っ張るウェルを【極幸】でさっさと撃沈した。部屋と体を綺麗にしたら、おやすみなさい。



 <呪いの星95日目>



 おはようございます。今日は北西に進んでいき、アモッチ村を目指します。行商人などは移動しているので全員を聖人化するのは難しいだろうが、それでも100人に1人とかだと悪さも出来ないだろう。


 なので聖人になっていない者を見つけても、昼間なら放っておこうと思っている。無理してまで全員を聖人にする必要は無いし、そこまでだとやり過ぎで俺が保たない。精神的な余裕は持ったまま熟していきたいもんだ。


 朝の日課を終えてそんな事を考えていると、紅茶を淹れるのを忘れていたのでお湯を沸かす。茶葉を淹れて煮出していると、ダリアが起きて近付いてきた。水皿に神水を入れて出してやると、飲んだ後に布団に戻って寝転がる。本格的な2度寝だな。


 俺はそれを見届けつつ、紅茶をコップに入れて飲んでいる。誰も起きていない優雅な時間を過ごしつつ、朝の爽やかな時間を堪能した。


 子供達もウェルも起き、既に部屋に戻ってきて紅茶を飲んでいる。今日の予定は既に伝えてあるので、今は紅茶を飲みつつ雑談中だ。そろそろ部屋を片付けて食堂に移動しないとな。


 部屋を綺麗に片付けて宿を出た俺達は、食堂に行って大銅貨3枚を支払って注文する。席に座って時間をつぶし、運ばれてきた朝食を食べたら町を出た。ここからは北西に進んで行くが、道のような物が続いているので分かりやすくはある。


 俺達は道の上をゆっくりと歩いて進みつつ、目に付いた魔物を片っ端から白い魔物に変えていき、多くの魔物を浄化能力持ちに書き換えていく。子供達にも枷を渡して手伝ってもらい、ウェルにも枷を渡す。


 ウェルは使い方が分からないので四苦八苦していたが、俺は1つずつ教えていき、何とか枷を嵌める程度の簡単な念力を使う事は出来るようになった。こうなると少なくとも移動中は楽になるな。


 俺がどれだけ色んな事が出来てもマンパワーには勝てないからなぁ。1人より2人、2人より3人。それだけ出来る事も増えるし早くなって多くなる。それに皆も暇じゃなくなったのか楽しそうで良かった。


 昼になり久しぶりにヘビーブルのステーキを食べたが、全員が余韻に浸るほど満足だったな。ここ最近は町の聖人化だったし、呪いの混じった美味しくない料理ばかりだった。やはり皆も不満を抱えていたか……。


 昼からも歩きながら進み、3つのグループに分かれて白い魔物を生み出していく。そんな事をしながらもちょこちょこ身体強化で走っていたからか、夕方になるよりも早くアモッチ村に辿り着いた。


 村に入る事はせず、村の入り口近くにカマクラを作っていると村人が寄ってきた。



 「おめぇら、勝手に何しとるだ! やめて壊せ!!」


 「ん? 村に泊めてくれる人も居ないだろうからカマクラを作ってるだけだ。そもそもここは村の入り口近くであって、決して村の中じゃない。村の中じゃない以上は文句を付けられる筋合いもないな。そもそも柵の中に入ってないだろう」


 「そっただ事は関係ねぇ! ワシが壊せって言うとろうが!」


 「だから、お前さんが言っている事は村の中なら通用するが、村の外じゃ通用しないの。村人の意見が通るのは、あくまでも村の中だけだ。ここは村の外だから何の関係も無い。だから俺達に聞いてやる理由は無いんだよ」


 「おめぇら……! これ以上勝手な事をするなら、容赦せんど!!」



 訛り言葉は気にしないんだが、やけに鬱陶しくてしつこい奴だな。仕方なく魔力と闘気と念力の威圧を行うと、相手は腰を抜かして漏らしてしまった。何というか、口だけの奴だったんだなぁ。



 「容赦しないなぁ……腰抜かして小便漏らしてる奴が、魔物を狩る仕事をする俺達にどうやって勝つっていうんだ? 勝てるなら教えてくれよ、なあ?」


 「ヒッ!? アァァァァァァーーーーッ!!!!」



 ………物凄い速さで逃げて行ったが、何なんだアイツは? 叫び声を聞きつけたのか鍬や鎌を持った連中が出てきたが、俺達はここにカマクラを作った事と喧嘩を売られたので威圧しただけだと話す。すると村人はすぐに気付いたようだ。



 「長老のトコのバカ息子か。自分の思い通りにならねえと喚き散らすんだが、喧嘩は驚くほど弱いからなあ。あいつは口だけの奴なんだよ。とはいえ、長老が五月蝿いから面倒臭い奴でな。あんたらも明日になったら出てった方がいい、長老がいちいち五月蝿く言う筈だ」



 そう言って集まった連中は去っていった。相当鬱陶しがられてるんだな、その長老とバカ息子は。さっき喧嘩を売ってきたバカ息子は30近くに見えたから、長老って事は合議制なのかね? 普通は村長が決めると思うのに長老だからなあ。


 まあ、村の政治形態に興味なんて無いんだけど、それにしても村の外で文句をつけてくるとは思わなかったな。どれだけ狭量なのか、それとも単に八つ当たりしようとしたのか、はたまた勝てると思い込んだのか。どれにしても雑魚の見本みたいな奴だった。


 とりあえずカマクラ横のテーブルを囲う椅子に座り、神水を飲みながら雑談をして時間をつぶす。夕方近くなってきたので料理を開始し、今日は蟹の出汁のうどんに決め、麺を打っていく。


 生地が出来たら休ませ、その間に謎の魚節と少しの魚醤と野菜で出汁を取り、かす肉を別の鍋で甘辛く煮込む。生地を麺の形に【分離】したら、鍋で茹でていく。麺が茹で上がったら出汁の注がれた椀に入れ、上からかす肉と野菜を乗せれば完成。


 皆には先に食べてもらい、最後に自分の分が出来たので食べよう。いただきます。



 「うん、かす肉と野菜がアクセントになっていて美味い。それに何といっても蟹の出汁が出ていて味が濃厚だ。殻ごと入れたのが正解だな。それにしても呪いの蟹は驚くほど美味いが、確定で出てこないからなぁ。食べたら終わりなところがちょっと……」


 「言いたい事は分かるが諦めるしかあるまい。それにアレが再び出てきたらと考えるとな、あまり乗り気にはならん。次も勝てるとは思うが、私は防御で精一杯だろう」



 蟹の話はいいし、うどんも美味しいんだが、村人が遠く離れた所からこっちを見てるんだよ。子供達は気になるのかイマイチ食事に集中出来てないようだ。聖人に注目されるのは多少慣れたみたいだが、この村はまだ聖人化していない。


 あの村人達はいったい何がしたいんだ? まさか俺達の食事を羨ましがってる訳じゃないよな? ………流石にそれは無いと思いたいが、他に思いつく理由も無いし困った。まあ、無視して食事を終わらせるか。


 黙ってジッと見てるだけなんで【空間把握】を使っても分からないんだよ。せめて喋ってくれれば分かるんだが……。


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