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朝食を終えた俺達は焼き場を壊し、後片付けを始めた。トイレなども済ませておき、準備が整ったらカマクラやテーブルを破壊、更地にして出発する。西へと進むのだが、昨日と同じく歩いて進んで行く。
身体強化で走ると不自然に早く着いてしまうのもあり、この戦国の地域では実力を隠したいと思っている。それと浄化能力を持つ魔物を作りだす事だ。少なくとも旧魔導王国である爆心地はここから西なのだから、俺達が居なくなっても綺麗にする者を残しておきたい。
その一環で様々な種類の魔物にも枷を嵌めて実験してみた。例えば蛇の魔物などの人型でないものも、枷を4つ付けると真っ白になったので、おそらく枷を4つ嵌めればどんな者も浄化能力を持つナニカになるのだろう。
その事が分かったのはいいのだが、体の大きさで嵌められない者もいるので、その辺りは流石にどうにもならなかった。下らないと思うかもしれないが、浄化能力を持つ聖人のような魔物は必要だ。そもそも前の星にも居たし、様々な物を浄化していた
ダリアもそうだしフヨウもそうだ。元々は浄化能力を持つ魔物だったし、そういう者が生きて浄化し続ける事で少しでも邪気や呪いが減るだろう。この星では邪気は殆ど無いが、その反面浄化能力を持つ者も今のところ見た事が無い。
これではいつまで経っても呪いが減らない気がするし、俺が【浄化】するにしたって限度というものがある。なので浄化能力を持つ魔物を生み出していく訳だ。子供達や2匹にウェルも理解したのか、妙な目を向けてくる事は無くなった。
俺だって遊んでる訳じゃないんだから、勘弁してほしいよ。まあ、遊びのように見えたのかもしれないけど、様々な実験をしてみないと分からない事も多い。前の星では色々怖くて、枷4つは殆ど使わなかったからなあ。
「怖い……というのは分からなくもないな。体が真っ白になり、敵意も何もかもが無くなるのだ。もちろん生きる為には狩りをしたり殺したりするのだろうが、それでも今までとは明らかに違う感じがする」
「何かねー、聖人みたいな怖い雰囲気がする。ダリアやフヨウとは違う感じ?」
「うん、何か分かる。聖人の人達にありがちな異様さって言えばいいのかな、そんな雰囲気っていうか、オーラみたいなものを感じるね」
「ダリアやフヨウは随分後の世代だからというのもあると思う。浄化能力を持つ最初の世代はあんな感じだったのかもしれない。まあ、俺も見た事が無いから、多分としか言えないけど」
会話をしつつも目星を付けた魔物を真っ白にしたり、向かってきた魔物を真っ白なナニカにしていく。お昼になったら足を止めて昼食を作って食べ、後片付けをしたら再び西へと歩く。
ひたすらに歩き続けていると、空堀と柵で囲まれた場所が見えてきた。おそらくあれが町なんだろう。それなりに防備はしっかりしているのかな? その割には大した事がないように見えるが、アレは人数が少ないからだろうか?。
俺達は門番に話しかけ東から旅をしてきた事を説明した。町に入るのに金などが掛かるのか聞くと、一人につき中銅貨1枚だと言われたので支払う。町の中に入った俺達は宿を探す為、町の人から話を聞く。
聞いた場所の宿に行き、大銅貨6枚で2泊する事に決めた。理由は1日で町の住人全員の聖人化は達成できないと思ったからだ。流石に村に比べれば住人の数が違う。町には少なくとも村の3倍は居るだろうし、宿の延長も視野にいれている。
その説明をしつつ、俺達は夕方までゆっくりと待つ事にした。お薦めの食堂の場所は聞いているので休み、夕方近くになったら移動して店に入る。そこまで遠い場所じゃないので気にしていなかったが、客が思っているより多いな。
そんな周囲を見つつ、注文して大銅貨3枚を払ったら席に着く。こちらの地域では普通の人間型の方が少ないからか、周りからジロジロ見られているが、俺達は無視して雑談をする。明らかな悪意も向けてきているが、聖人にするので問題無い。
俺達が居るからか特に気になる噂話も無く、大した情報は得られないまま宿へと戻った。子供達と雑談しながらダリアをブラッシングし、終わったらフヨウをブラッシングしていく。その後は子供達を梳いていき、布団を敷いて寝かせて【昏睡】を使う。
その時には既にウェルは全裸だったのだが、脱ぐのが早すぎる。本当に女性陣とそっくりの事をしているが、そこまで我慢できないものだろうか? ウェルが満足するまで貪り、十分に満足したら梳いてやった。これで精神も安らかになっただろう。
神獣の毛のブラシを使っているのには、そういう理由もあるからなあ。ストレスも相当量減っている筈だ。【浄化】して服を着せていき、ベッドに寝かせたら部屋と体を綺麗に【浄化】する。これで準備は完了だ。
俺は隠密の4つの技を使い、宿の部屋を順番に回りながら【昏睡】を使って眠らせつつ、罪を暴く腕輪で確認していく。その必要があるのか? ってくらいに赤く光るが、一応確認しつつ枷を嵌めて2分待つ。
もちろん待っている間に別の奴を調べ、そいつも赤く光ったら枷を3つ嵌める。それを繰り返していき、宿の中が終わったら次は従業員だ。隣の建物に従業員用の宿舎があるので侵入し、赤く光る奴に枷を嵌めて聖人にしていく。
丁度全員を聖人にし終わったタイミングで、宿の周りに怪しい連中が集まってきた。目当ては俺達の部屋かと思い、外の連中が踏み込む前に【衝気】で気絶させて確保する。7人に枷を2つ嵌めて聞き出すと、目的は間違いなく俺達だった。
余所者から金目の物を奪う。まあ、当たり前の連中というか、よく居る連中でしかなかったので聖人にし、そのまま【昏睡】を使って宿の前の道に転がしておく。夏の1日目なんで放っておいても死ぬ事はないだろう。
俺は宿の近くの建物にも侵入し、片っ端から聖人に変えていく。枷を3つ嵌めたら次へ、2分経ったら外して次へ。流れ作業の如く行い、どんどんと聖人を増やしていく。それにしても赤く光る奴が多いなぁ……。
それでも村に比べればマシで、青く光る奴も多少は居るので助かる。数は少ないけど居ない訳じゃないのは、精神的な負担が多少は和らぐ。それはともかくとして、そろそろ宿へと戻ろう。流石に疲れた。
3分の1は聖人化できただろうか? まあ、焦らずゆっくりやっていこう。じゃないと精神的な負担が大きい。ベッドに横になり、体と心を綺麗に【浄化】する。今日も一日お疲れ様でした。
<呪いの星92日目>
おはようございます。今日も町の掃除を行いますので、町には滞在を続けます。日中はゆっくり寝ようかな。そんな事を思いつつ、朝の日課を済ませて紅茶を淹れる。飲みながらボーッとするも、やはり眠気はそれなりにある。
流石に昨夜は結構な数を聖人にしたからなー。1人1人確認して聖人にしなきゃいけない以上、どうしたって時間が掛かるのは仕方ない。おっと、蓮が起きたようだ。
俺は見送り、適当な事をつらつらと考えつつ紅茶を飲む。戻ってきた蓮は紅茶を入れ、ハチミツを適当に溶かすと飲み始めた。俺も飲みつつ静かな時間が流れる。その時間は短かったが、そういう日なのだから仕方ない。
ダリアとフヨウに神水を入れて出しつつ、イデアとウェルを見送った。飲んだ後は体を登って首に巻きつくフヨウと、俺の足にじゃれついて遊ぶダリア。朝から元気だなぁ。
戻ってきたイデアとウェルも紅茶を入れたので、俺は昨夜の話を始める事にした。




