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 周囲で見ていた奴等が居なくなったので鬱陶しさは無くなり、その後は食事を楽しめた。食事が終わったら少しゆっくりし、後片付けをしたらカマクラへ。カマクラ内では子供達がトランプで遊んでいるが、余計な物は見せないに限る。



 「食事をしていたら突然足早に去って行ったが、あれはいったい何だったのだろうな? こちらを見ていたと思ったら急にだ。お腹でも空いていたのだろうか?」


 「さあ? 流石に調べてないんで何とも言えないな。どのみち今日の夜に聖人に変わるんだから、気にする事も無いだろう。こちらに対して何かをしているという訳じゃないみたいだし」


 「そうか、なら問題などは無さそうだな。聖人に変わる者がどれほど居るのかで、大凡おおよそこちらの荒れ具合も分かるであろう。あの村が特筆して悪かった可能性もない訳ではないしな」



 言いたい事は分かるが、国境に一番近い村だけ荒れているっていうのはおかしい。戦争中なら分からなくもないが、山が隔てているうえ争ってもいない状況だ。東の国に逃げる者が必ず通る村だから荒れてる? それも考え辛い。


 色々な事を考えても、あの村だけが酷く荒れているという理由は無いだろう。そんな事をウェルと話しつつ、俺は【空間把握】で探っている。妙な動きをしていないか、外を監視しているだけだが。


 子供達がうとうとし始めたので、すのこを敷いて、その上に布団を敷く。子供達を寝かせて左右に2匹を寝かせると、【昏睡】を使って深く眠らせる。その後は抱きついてきたウェルを貪り、大満足して気を失っているので綺麗にしながら服を着せていく。


 カマクラ内と体を綺麗に【浄化】したら、俺はカマクラの外に出て硬く閉じる。もちろん空気穴は空けてあるので窒息はしない。まだ襲ってくる気配が無いので、村の南側へと行き神水を汲みに行く。


 川の近くまで来たら水を空中に引き上げ、神水にして樽に詰めていく。【探知】を使っているものの、カマクラに近付く者はいない。神水を詰め終わり、カマクラへ戻ったが未だ襲ってくる者は近付いても来なかった。


 おかしい……昼間の行商人、あいつら間違いなく体制側であり権力者側だぞ。それが喋り難くしていた、つまりは何かおかしい力を使われたんだ。まだ決定的な情報は喋っていないだろうが、今の内に口封じをしておかなきゃマズいだろう。


 にも関わら……やっと来たか。周りの村人を起こさないように慎重を期したかな? 行商人は馬車で寝泊りしていたからこそ、俺は必ず襲ってくると思ってたんだよ。これが何処かの家を借りているなら襲撃の可能性は低かったかもしれないが、いつでも犯行可能なら襲ってくるのはバカでも分かる。


 椅子に座っている俺は隠密の4つの技を使ったままだ。当たり前だが行商人どもは気付いていない。俺はカマクラ近くまで来て様子見している奴等を【衝気】で気絶させ、枷を2つ着けたら聞いていく。まずは下っ端からだ。


 ……生憎と下っ端は碌な情報を持っていなかった。何と言うか、表向き行商人をしている凄腕暗殺者、と本人達は思っている。俺にあっさりとやられているので、あくまでも自称凄腕でしかないのが滑稽だが。


 それはともかく、町の領主に仕えて色々な所へ行き情報収集をしている連中だった。そのついでに邪魔者が居れば暗殺しているようだ。やはり思っていた通りに体制側の連中だったか。その後、俺は話し掛けてきていた男から情報を聞き出す。


 この国の地理、この国の歴史、この国の体制側の事。様々な事を聞いてようやく分かった。それが思っている以上に面倒臭い事も合わせて、だ。


 まずこの国はドーレント王国と名乗っている。旧魔導王国の東に位置していた国だったそうだ。昔の国名は知らないそうだが、厄介な事に領主が独立している国だった。分かりやすく言うと、各領主が独立しており、国はその連合体でしかないという事だ。


 つまり、中央の王の権限がハッキリ言って低い。国として纏まる為のお飾りに近く、この地方の領主も独立している。地方を牛耳って好き勝手していると言えば分かるだろうか? そのうえ軍事力での乗っ取りも当たり前にあるようだ。いったいどこの三国志だよ、と言いたくなるような状況だな。


 まあ聞き出すべき事は聞き出せたので、さっさと聖人にしていこう。三国志と比べて楽なのは、兵士の数がそこまで多くない事だ。現実問題として魔物から身を守らなくちゃならないので、そこまで多く徴兵できないらしい。


 聖人化が終わったので行商人どもを馬車に詰め込み、今度は村の連中を聖人にしていく。襲ってきたのは行商人なので村人は関係ないとも言えるが、そこはそれ、建前なんぞ要らないと言えば終わる話だ。聖人にするのは犯罪者だけだし。


 罪を暴く腕輪をして赤く光る者を片っ端から聖人にするんだが、相変わらず赤く光る連中しかいない。国境の村と何も変わらないという事実があったので、俺は淡々と素早く聖人化を果たして行く。行商人どもの所為で時間を喰ったからな、早く終わらせたい。


 次々に聖人にしていき、最後の村長の家も全員終わらせた。国境の村よりも酷かった、まさか”全員”を聖人にする事になるとはな。一人も例外なく赤く光るとは思ってもいなかったし、幾ら何でも酷いと言わざるを得ない。


 カマクラに戻った俺はさっさと横になって寝るが、碌な者が居ない惨状に頭を痛める。ここから先は聖人化に時間が掛かるぞ……。



 <呪いの星91日目>



 おはようございます。今日は夏の1日目です。まだ春の陽気の内ではあるが、徐々にこれから暑くなっていくのだろう。この辺りがどこまで暑くなるのかは知らないが、ある程度の覚悟はしておこう。海が近くにはないから湿度はそこまで上がらないとは思うが。


 カマクラの入り口を壊して外に出たら、椅子に座って紅茶を淹れる。コップに淹れて飲んでいるとダリアが起きてきたので、水皿に神水を入れて出してやると美味しそうに飲み始めた。


 ある程度飲むと満足したのか足下で丸まり、そのまま二度寝を始めたダリア。胡坐の中でもないので好きにしてくれていいんだが、この陽気で眠たいのかね? そんな事を考えていると、次々に起きてきたので飲みながら待つ。


 子供達も出てきてウェルが最後だったが、朝の挨拶をしたら朝食作りを開始する。今日の朝は適当でいいやと思いつつ、全粒粉を塩と神水を混ぜて捏ねて生地にし、【熟成】したら饅頭に成形していく。


 ウェルにはサラダとマヨネーズを、イデアは蟹の身でスープ作りで、蓮には目玉焼きを焼いてもらう。俺は饅頭を蒸していき、出来上がったら皿に乗せる。今日はパンの替わりとして饅頭を作ったのでシンプルな朝食だ。


 全員の料理が出来たので、早速食べようか。それじゃあ、いただきます。



 「たまには朝から饅頭も良いな。中には何も入っていないが、パンの替わりと言われれば納得する。というか、こちらの方が柔らかく水分が多いので食べやすい。それはともかく、昨夜はどうだったのだ?」


 「予想通り行商人どもが襲ってきたぞ。返り討ちにして聞きだしたが、この国はドーレント王国というらしい。ただ、王権が弱く諸侯が勝手をしている国だった。王はあくまでも象徴でしかなく、地方領主と同じぐらいの力しか持っていない」


 「それではとても言う事を聞かせるなど無理だな。徒党を組まれたら王は何も出来んではないか。まあ、だからこそ象徴でしかないのだろうが……一応国としての体裁をとって好き勝手しておる訳か」


 「それどころか、その地方の領主すら盗賊団に攻められ、とって替わられる事もある。まさに群雄割拠の戦国時代だ」


 「………」



 閉口する気落ちも分かるが、古い時代ってこんなものだろうとしか言えないしなー。


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