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 昼食後。少しゆっくりしてから焼き場などを壊し、綺麗に整地したら山を下る。既に村の方向は分かっているので、後はそちらの方角に進んで行くだけだ。もちろん真っ直ぐ進める訳ではないが、それでも方角が分かっているので修正は容易い。


 俺達は身体強化をしながら走り続け、なだらかな斜面になっていき、山を下りきった。そのまま頂上から見た方角に進むと村を発見。ポツポツと家が立ち並び、畑が周りに広がっている。どうやら田んぼは無いらしい。


 そうやって見ていると、鍬や鎌を持った男達が集まりこちらに声を掛けてきたので返答する。



 「お前はどこのもんだ! 村に何しにきやがった!!」


 「俺達は東から山を越えてきた。もっと東から旅を続けてきていて、こちらに国があると聞いて山を越えてきたんだ。この国は何という名前なのか聞きたい。他にも色々な情報を聞かせてもらえれば助かる。もちろん礼はするが、どうだろうか?」



 俺がそう言うと、男達は色々と話し合った後、ついてくるように言ったので大人しく従う。こちらとしては情報が得られればいいのは間違いなく、寝泊りならカマクラでするので特に問題はない。襲われるより遥かにマシだ。


 そうやってついて行くと一軒の家に連れてこられた。中に人は居るようだが……男達が妙な顔をしているな? その男達はノックをする事もなくズカズカと家に上がりこみ、中に居た女性に話しかける。



 「おい! 東から客人が来たんで話を聞きてえ。お前の家を使わせてもらうぞ!」


 「………はい、どうぞ」



 中に居たのは普通の人間の女性、もしくはそう見える女性だ。しかし男達は獣人というか獣に近い姿をしている。何だか妙な感じがするが……まあ、今はいい。それより話を聞いていくか。


 何故か男達がニヤニヤしているが、俺達には分からないのでスルーし、こちらの話を聞いていく。どうも男の一人はこの村の村長の息子らしい。時折喋り難そうにしているが、それは誇大に言おうとしたからだろう。どうやらオレSugeeeをしたかったらしい。


 とはいえ【白痴】を使われている以上はどうにもならないので、正しく伝えてくれている、しかしなぁ……村長の血筋がかつての王の系譜だとか言われても知らんよ。そもそも何で小さな村にかつての王の血筋が落ち延びてくるんだよ。おかしいと思わないのか?。


 そんな事を心の中で思いつつ、話を聞き終わったので少銀貨1枚ずつを渡して終わりだ。男どもは渋ったが、話を聞いただけで少銀貨なんだから十分だろうと言ってやった。



 「ここの家を紹介してやっただろう。ここに泊まればいい。その紹介料は貰ってないぞ」



 こんな事を言い出しやがったんで、小銀貨をもう1枚放り投げてやった。それでも納得してなかったが、俺達を泊めてやるように言って男達は去っていった。あいつら悪意を隠そうともしてなかったが、幾らなんでも頭が悪過ぎるだろう。


 皆も呆れた顔しかしていない。連中の末路が簡単に分かるからだ。狼とか狐とか猿っぽい獣人の奴等だったが、獣人になると知能が低下するとかないよな? あいつらがポンコツなだけだよなあ。流石に他の獣人に失礼か。



 「……あの、逃げた方がいいですよ。あいつら、うちに誰かを泊めては夜に襲ってくるんです。子供も居るんですから早くした方がいいですよ」


 「そうなのか、それは随分と阿呆な奴等よな。余程、聖人にされたいらしい。それとも死体か? どちらにしてもマヌケでしかないがな。私よりも強いアルドと、ドラゴンである私に喧嘩を売るのだから覚悟は出来ておるのであろう」


 「え……ドラ、ゴ、ン?」


 「そうだよ。そもそもさっきの人達は悪意も隠してなかったから、いつも通り聖人にされて終わりだけどね。聖人っていうのはねー、凄い善人の事だよ。お姉さんも大丈夫になるんじゃない?」


 「そうだね。糸がついてる道具があるから布を作ってるのかな? 多分だけど畑をやってる人達が偉そうにしてるんだと思う。とはいえ、それも今日で終わるよ」


 「………」


 「アルド、どうかしたのか?」


 「ああ、いや。何というか、古い時代の権力者の血筋だとうそぶくのは、荒れてる国の田舎だとよくある事なんだよ。まんまその通りの事をしてたんで、自分達がよくいる阿呆だという自覚はないんだろうなー、と思ってな」


 「よく分からぬ国の王の末裔とやらか?」


 「ああ。そもそもこんな辺鄙な……というのは正しくないな。他国との境にある山の近くにある村まで、王族が落ち延びてくる事なんてある訳ないだろ。仮に負けて都を追われた王族でも、都の近くで取り戻そうと潜伏する。こんな他国との境まで逃げる事は殆ど無い」


 「遠すぎるからですか?」


 「そうだ。誰かが旗印に掲げるにしても、もっと力や富のある場所を頼る。少なくとも、こんな他国との境の山近くの村に身を寄せたりなんてしない。色々考えても、あり得ないって分かるだろ? だいたい王の血筋っていったところで、もう薄まっていて何処の馬の骨とも分からん血筋になってるよ」


 「それは確かにそうだろうな。仮に古い時代の王でも、そこから長く時が経てば最早村人の血筋でしかない。王の血が一滴でも入っていたら王かといえば、そんな事はないからな。関わりのある者は腐る程おる」


 「話は変わるが、この家に泊めてもらいたい。ここに少銀貨で3枚置いておくんで頼む。こっちから手を出したら暴力行為だが、向こうが襲ってきての反撃なら何も問題はないからな。好き放題やられても文句は言えん。それと竈を借りる」


 「あ、はい。どうぞ……」



 俺は蓮に麦飯を頼み、イデアに野菜と卵のスープを頼んだ。俺は鯵を開いてのアジフライだ。久々だし冷凍だが、十分だろう。昼は秋刀魚だったが焼き魚だったし、子供達も何を作っているかは分かっているので楽しみにしてる。


 準備をしているだけで、まだ揚げたりはしない。麦飯が炊けるまでに時間がかかるしな。時間とタイミングを計って揚げるので、それまではイデアを手伝ったりしながら時間をつぶす。


 そろそろタイミングが来たので揚げ始め、「ジュワー」という音と共に呪いの魔物の脂の香りが広がる。非常に美味しそうな香りを振り撒き、女性のお腹が「ぐー」と大きく鳴った。心配せずとも泊めてもらうんだし、ちゃんと女性の分もある。


 十分に揚げあがったら皿に乗せ、後は魚醤を掛けたりして好きに食べてもらおう。麦飯も炊けたので椀に盛り、スープも入れて準備完了。それじゃあ、いただきます。



 「うん! 久しぶりのアジフライも美味しい。卵スープでさっと脂が流せるし、ご飯も美味しい。………美味しくないの?」


 「え!? い、いいえ、とても美味しいんだけど……その、すみません。私まで頂いてしまって」


 「別に構わないさ。高が1人分でしかないし、他人を無視して食べるほど恥知らずじゃないしな。その辺りは気にしなくて構わない。むしろ他人にひけらかすように食べる方が信じられん。まあ、あの連中ならやりそうだが」


 「そうなの?」


 「まあ……。そういう奴等なのは間違い無いわ。流行り病で両親を亡くしてから、母の機織りの仕事を継いでしているけど、布を売って得たお金でも売ってくれない事はあったの。私の前でこれみよがしに食べてた事もあった」


 「碌な事をせんな。怨みや憎しみを受ける覚悟もなく、下らぬ事をやる連中か。確実に今日の夜に止めを刺されるな。まあ、自業自得というものよ。そもそも勝てる道理が無い」


 「ここからどんどん聖人にしちゃえば良いんだよ。特にああいう奴等。どうせ赤く光る奴等だろうし、根こそぎやっていこ?」


 「まあ、そんな感じでも構わない気はするな。元々赤く光る奴等は許されるし。この地域に限定すれば問題ないだろう」



 他の神々も流石に怒らないとは思う。爆心地に近い地域であれば。


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