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 隠密の4つの技を使い、【念動】で浮かせた侵入者と共に外へと出る。宿の前の通りに寝かせたら6人に枷をもう1つずつ着けて2分待つ。立派な聖人になったら外し、そのまま放置してスラムへ。罪を暴く腕輪をしつつ、赤く光る者を根こそぎ聖人に変えていく。


 今までの町と同じく子供も赤く光る事に何とも言えなくなるが、生きる為には犯罪をせざるを得ないので仕方ない。何より現在の時点で、まともな大人には育たないだろう。犯罪が当たり前の生き方しか出来ないのだから。


 結局のところ、矯正するには聖人にしてしまうしかないのも事実だ。そうしないと止まらないのだから、子供の頃からの当たり前というのは怖ろしい。犯罪が常識なら罪の意識すら無いからな。人を殺す事に躊躇いの無い俺だって良識が無い訳じゃない。


 殺す事も挑発する事も分かっていてやっている。腐ったモノを抹殺する為という神命があるからな。しかしそれが当たり前になると、何の呵責も無く殺すだろう。少なくとも、「それは違うだろう」という意識は俺の中にまだある。


 何も考えずに淡々と殺戮するようになったら終わりだ。そういう思いが俺自身にあるからなのか、流石にそこまで堕ちたくはないと思ってるし、思ってるからこそ歯止めは掛かっている。


 聖人にしながら考える事じゃないな、と思いながらも考え事をしつつ聖人にしていく。どんどんと枷を着けていき、終わったら回収して次の奴へと着けて聖人に。それを続け、やっと侵入者の組織へ。


 そいつらが牛耳っている区画に侵入し、片っ端から聖人に変えていく。娼婦なども居るが例外は無しだ。男娼も居るのがアレだが気にせず聖人にしていき、組織の中枢の建物へ。


 入り口近くにゴロツキがたむろしている部屋があったが、纏めて仲良く眠らせて聖人だ。部屋の中に居ようが見回りをしていようが聖人にしていき、ようやく最奥のボスと幹部だけになった。何故かドアの外をジッと見ているが……。



 「そこに居るヤロウ出てこい! 分かってんだぞ! 見えねえが何か居るだろ!! こっちはにおいで気付いてんだよ!! 聞こえねえのか、さっさと出てこいっつてんだろ!!!」



 においで気付いてるだと? そもそも俺はにおいなんて殆どしていない筈だが? 自分をこまめに【浄化】してるし、俺を辿るには温度で辿る以外に無いと思ってたが……。もう少し様子を見よう、ハッタリの可能性も無い訳じゃない。



 「クソッ!! 何か居やがる。テメェら用心しろ! 何処かの奴等が俺達を殺しに来てやがるぞ!! 他の奴等の精神がおかしい。何だか妙に落ち着いてやがる。何かをされたに違いねえ!」



 精神? ……においじゃなかったのかよ。どういう事だ? まあ、とにかく部屋の中の奴等をどうにかすれば済むんだが、警戒心が強くて【衝気】は効きそうにない。部屋の中にはボスのような奴を含めて3人だし、こいつらで終わりなんだが……。


 流石に部屋に入る際にはドアが開くし、それで何かが入ってきた事はバレる。いったいどうしたもんか? そう思っていると部下の1人が席を立ち、様子見の為にドアを開けた。当然ドアの外に俺が居るのだが見えていない。


 それはボスも変わらないようだ。においと言ったり、精神と言ったり。その割には俺も見えてないし、俺のにおいも感じていないようだ。にも関わらず、確信しているように警戒してる。訳が分からない奴だな。



 「ボス、何も居ませんぜ? いつもに比べりゃ静かかもしれませんが、別に話し声が聞こえねえ訳でもありませんし。いったい何に警戒してるんで?」


 「お前らじゃ分かんねぇよ。オレ様みてえに、心の内をにおいで感じ取れる奴じゃねえとな。それにしても変だ。先ほどおかしいにおいがしたし、近くの奴等のにおいも変わってやがる。いつもと同じじゃねえ」


 「そいつはボスに声を掛けられて慌てて逃げたんじゃありませんかい? ドアの外にも居ないようですし、特におかしな感じもしませんぜ。警戒はしますが、逃げてる可能性もありますし、そこまで警戒せんでもいいんじゃ……」


 「バカヤロウ!! そうやって甘い考えしてっから殺されるんだよ! ここはスラムだぞ! 向こうでもそうだったが、隙を見せたら殺されるんだ。甘ったれてんじゃねえ!!」


 「へ、へい……すんません。ですが、じゃあ敵は何処に居るんで?」


 「オレ様でも分かんねえから困ってんだよ! 妙なにおいに変わってやがるんだ! こんな事は今まで無かったんだから、絶対に普通じゃねえ!!」


 「「………」」



 どうやら総合すると俺が見えてたり感じ取ってる訳じゃなく、他の奴等がおかしいから逆説的に誰か居ると思っただけか。しっかし精神をにおいとして感じられるって、また変わった能力をもってる、な!! っと。


 一瞬の隙を突いて【衝気】で気絶させてやった。即座に部屋に入った俺は枷を2つ着けて安堵する。妙に警戒心の強い奴等だったが、それ以上に見破られたかと警戒して動けなくなってしまった。こういうところは修行不足というか弱点として露呈したな。


 どうするかの対策は後で立てるとして、まずは話を聞いていく。…………どうやらコイツらは、西から逃れてきた奴等らしい。つまり俺を西の奴等の手先だと思い込み暗殺を命じた奴等だ。ま、それは分かっていた事なんだが、どうやらそれだけじゃない。


 この精神をにおいで感じられるボス。コイツが町で俺を見た時にヤバいと感じたらしく、だからこそ有無を言わさず殺す事に決まったようだ。つまりボスが臆病風に吹かれたって事だな。しかもボスの個人的な能力なんで、周りは半信半疑という。


 今まではその能力で助かってきたので、今回も一応信じるという形にはなっているみたいだ。しかし幹部2人はボスの能力で今まで助かってきているにも関わらず、実は心の中ではこれっぽっちも信じていない。何とも、な結果だった。


 幹部2人に3つめの枷を着け、ボスから重点的に話を聞いていく。何となく想像はついていたんだが、やはりか。ボスは呪いで狼系の獣人みたいな姿になっている、元は人間と変わらない見た目の者だったらしい。


 幹部2人が獣人系なので、その2人を利用する形で、元の自分とは別人として生きてきたようだ。それと最初は呪いで恐れられていたようだが、2人に会う頃になると放出されていた呪いは治まったらしい。


 呪いの魔物に成りたての頃は体から呪いが噴出するように出るのだが、ある程度の時間が経つと定着するように静まるそうだ。それが何故かは知らないが、そうすると周りを怯えさせる事も無いようで、周囲を騙して生きていける。というより、そうやって生きてきたらしい。


 呪われた奴の視点での話が聞けて良かったが、そろそろ枷を4つにするか。他に聞く事も無いし。それはそうと、西の国から流入している奴の中に、何でこんなに呪われた奴が多いんだ? やはり【呪魂環】の爆心地だからだろうか?。


 おっと、3分経ったので外して帰ろう。一応【浄化】を強力に掛けて………やはり消えないな。全く別の種族に変貌してるんだろうが、こいつらが子供を残したらどうなるんだろう? ……ちょっと怖い事を考えたが、そんな想像は捨ててさっさと帰ろう。


 スラムを出たら自分を綺麗に【浄化】し、宿の前でもう一度【浄化】したら、窓から部屋へと戻ってベッドに潜る。今日も一日お疲れ様でした。


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