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後片付けをしたらカマクラの中に入り、入り口を閉じてゆっくりと休む。子供達は雑談をしながらリバーシで遊んでいて、俺はダリアと適当に遊びながら、ウェルと雑談をしている。フヨウは隅でジッとしているが、既に眠たいのだろうか?。
時間が経ち子供達がウトウトしてきたので、敷いておいた布団に寝かせて2匹を左右に寝かせる。【昏睡】で深く眠らせたら、ウェルと外に出て大満足させてやった。体を綺麗にしてから服を着せ、カマクラの中に入って全員の体を綺麗にする。
他にする事もないので、後は寝るだけだ。今日も一日お疲れ様でした。
<呪いの星85日目>
おはようございます。今日は村か町かに移動し、そこで西に行く道を聞きだします。元々はフィオム山が越えられないから戻ったんだが、そこから色々あって随分余計な事に巻き込まれたなぁ。
そもそも連中も戻ってきた俺に絡んで来なきゃ死ぬ事も無かったっていうのに。それは横に置いといて、朝の日課を終わらせて外に出よう。このままカマクラの中に居ても仕方ない。
朝の日課を終わらせてカマクラの外に出た俺は、紅茶を淹れつつゆっくりとする。今日は誰が一番早く起きてくるんだろうと思いつつ紅茶を飲んでいると、まさかの誰も起きてこないっていうね……。
しかたなく全粒粉と神水と塩を練り生地を作る。生地は置いておき、野菜とかす肉に呪い鹿の肉を混ぜて炒め、そこに魚醤や灰持酒などを入れて味付けをしていく。完成した具を【熟成】した饅頭の生地に詰めていき量産、皆の分を完成させた。
蒸篭に入れて準備完了だが皆はまだ……っとイデアが起きたようだ。とりあえず饅頭の蒸しは皆が起きてこないと出来ないので、片付けながら待つかね。
あの後で一斉に起きてきた皆と挨拶し、紅茶を入れて飲んでいる皆に聞き、饅頭を蒸し始める。皆が起きたからといって、寝起きですぐに食べられる者ばかりじゃないしな。
饅頭が蒸し上がったので皿に乗せ、早速熱さに苦戦しながらも食べていく。中の具が野菜炒めだが、これはこれでアリだそうだ。香辛料で味付けしてあるからかな?。
「ピリ辛で美味しいよ? 後ね、いつもの野菜炒めよりちょっと味が薄いかな? でも皮だからこんなものだと思う。お米と食べるなら濃い目だけど、饅頭だとこれぐらいかなぁ」
「皮と一緒に食べるからちょっと薄めなんだと思いますけど、これはこれでアリだとボクも思います。お米と一緒に食べるより薄まらなくて、直接味が来ますから。でも野菜の水分で変わるし、難しいところですね」
「子供達が本当に相変わらず過ぎて何も言えんな。いつも通りと言えばそれまでなのだが……それはともかく、今日は村や町で聞き込みか?」
「ああ、そうだ。西のフィオム山を越えるルートというか、西に抜けるルートは聖都から北に迂回しなきゃならんらしいからな。そのおかげで聖都に戻る事になったんだし、戻ったから阿呆が手出ししてきた所為で余計な事になった」
「確かに、そういえばそうだったな。ようやく山を越えて西か。飛んでいけばすぐなのだが、そういう訳にもいかんしな。だから仕方ないが、実際に山を越えられるルートがあるのかどうか」
「【白痴】を使って聞いた以上嘘は無いんだが、誰かから聞いたという場合には、嘘じゃないが間違っているという事もあるからな。必ずしも【白痴】で聞いた情報が正しいとは限っていない」
「そこも難儀なところだな。とはいえ大半の情報など本人も聞いただけで、本当に調べて正しいと言える者など多くあるまい。そんな暇も無いしな」
食事が終わったので後片付けをしつつゆっくりし、お腹が落ち着いたら皆も準備に動き出す。トイレに行ったりしておき、準備を完全に整えたら破壊、整地してから北へと走る。
街道のようなものはあるので迷う事なく進み、聖都の北の村に辿り着いた。門番に登録証を見せつつ話を聞き、村に入って年寄りから話を聞く。大銅貨1枚を渡して話を聞いて回り、ようやく地理を把握できた。
聖都の北にデフォン村、パルマン村、ゴテルイ町。ゴテルイ町から西にヤテント村、アトッコ村、レッテオ町、ドンコオ村、エリューサ村、エイテシャ町、ショテーム山。そのショテーム山を越えたら西の国なんだと。
別に隠されてはいないが、かといって西の国に行く好き者もいないんだそうだ。見た目が獣に近いという事もあるんだが、それ以上なのが逃げてくるかららしい。国が駄目で逃げてくるくらいなんだから、そんな所に行きたがる奴もいない。
別に見た目だけで西の国が嫌われている訳じゃないようだ。異物感はあるのだろうが、それ以上に西の国があまり宜しくない。そう聞いているからだろう。とはいえ逃げてきた連中の言なので当てになるかは別だが。
情報としては十分だったのでデフォン村を出発する。そういえば西の国の連中を然程には嫌っていない大きな理由は、香辛料を齎したのは西の国の人達だからだそうだ。つまり聖国にも元々は香辛料は無かったみたいで、香辛料の本場は西の国だった。
逃げて来た人達が種を持っていたらしく、それを売ってもらい育てたのがキッカケで、聖国に広がっていったというのが正しい歴史のようだ。まあ、香辛料の歴史なんて学者に任せるとして、俺達は西の国に向かおう。
バルマン村の近くで昼食にし、終わったら進んで行く。少し早いもののゴテルイ町に入って宿を探す。街の人に大銅貨を払いつつ聞き出し、スラム近くの宿へ。従業員に一泊中銅貨5枚を支払って部屋をとり、今は部屋に入ってゆっくりしている。
俺はワイン樽を取り出して貨幣を数えたら、それぞれに分けて仕舞っていく。実は金貨の多い樽は全てアリシアに渡してあり、こちらは銀貨や銅貨の多い樽だ。アリシアなら、あれだけの貨幣でもあっさりと使いきるだろう。
統治には多くの金銭が必要だし、臨時収入なんて簡単に溶けて無くなるのが領地経営だからなぁ。ま、頑張ってくれとしか言えないが。
夕方頃まで適当に過ごし、夕方になったので食堂へ。大銅貨3枚を支払い夕食を注文したら、席に座って適当に待つ。周囲の話は町の噂だが、特に面白いものも無い。聖都の混乱はまだ伝わっていないようだ。
知っている俺達からすれば遅く感じるが、古い時代の情報伝達速度なんてこんなものかとも思う。隣の村が滅んでも長い間気付かなかった、何て事が本当にあるのがこういう時代だ。全滅していたら伝わらないからな。
夕食後、宿へと戻ってゆっくり休むも、後ろからつけてくる奴等が居たな? この町に来て大金を見せたり何てしていないが、つけていた連中は何故俺達に目をつけたんだ? 子供達か、それともウェルか……だとは思うんだが。
「先ほど後ろからつけている者どもがおったな? 隠そうともせん連中だから大した実力など持ってはおらんだろうが、目をつけたのは子供達か?」
「それかウェルだろうな。前にも似たような事はあったし、今回も同じ可能性は十分にある。少し前に神酒を飲んだが、その時に<浄神>に会ってな。新しい腕輪と枷は貰ったんだよ。なので聖人に洗脳できる」
「「「「「………」」」」」
「また枷を使うの? あれって本当の事を聞き出す言い訳にも使えるんだよね? 確かアルドはそんな風にも使ってたの覚えてる」
「【白痴】の言い訳用だな。まあ、それ以外にも色々出来るが、そこは気にしないでくれ。神様が作った物だからな、細かい事を考えてもしょうがない」
何故? なんて考えるだけ無駄だ。




