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 俺達は4人の荷物をアイテムバッグから取り出して返すと、ゾルダーク侯爵家の屋敷を後にした。執務やらと色々あるので長居する訳にもいかないし、俺達が居ても仕方ない。アリシアに予定を聞かれたので、今日1日休んだ後、明日には聖国に戻る事を言っておいた。


 何故か意味深な流し目を受けたので、おそらく昨夜と同じことをしてほしいんだろう。俺は口には出さなかったものの了承し、屋敷を出て宿へ。宿の従業員に4人の部屋が空いた事と、返金不要を言って部屋へと戻る。


 部屋に戻った俺達はゆっくりと過ごす事にした。特にここ最近忙しかった俺は神酒を飲んで寝る事に決め、樽を出してコップに入れたら準備完了。皆にも飲むか聞いたが、子供達は拒否。ウェルは悩んだ末に受け入れた。


 ウェルのコップにも入れて樽を仕舞い、ベッドの上で飲むとすぐに横になる。前回と同じく当たり前のように意識を失った。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「で、呼び出されるんですね? 別にどうこうとは思いませんが、何かありましたか?」


 「特に何もありませんよ。と言いたいところなのですが、流石に動き難そうにしていますからね。コレを与えておきます」


 「………コレは前にもあった罪を暴く腕輪と、改心させるというか聖人にする拘束具ですか。でもこれは神の金属で出来ているので、今の星では使えないのでは? そう言って取り上げられた筈」


 「これは問題ありませんよ。わざわざ<創造神>を呼んできて、何処の星でも使える物として改良しましたからね。貴方に分かりやすく言うと、超魔鉄ならぬ神魔鉄というところでしょうか? <創造神>が作り出した究極の魔銅、魔鉄、魔銀、魔金で作ってあります」


 「………それはそれで問題大有りの気もしないではないですが、分かりました。確かにコレらがあると楽ですので、ありがたくいただきます」


 「ええ。それと腐った者どもを殺すのに躊躇と罪悪感は必要ありませんよ? それは貴方が持つ必要の無いモノです。間違っていれば私達が指摘しますし止めます。だから貴方は腐ったモノを根切りにする事に集中しなさい」


 「あ、はい。分かりました。まあ、この道具を貰えば根切りにする必要もなくなりますけどね」


 「ええ。後は少々感覚がズレているようですので、鍛え直しておきましょうか」


 「へ?」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 俺はベッドから体を起こす。いやぁ、酷い目に遭った。まさか久しぶりに扱かれるとは……まあ、必要な事だったと思おう。確かに権能の扱いが若干ズレていたのは分かる。それにさっさと忘れた方がいい、思い出しても碌な事じゃなかったと思うだけだ。


 子供達がトランプで遊んでいたので聞くと、今は昼前くらいらしい。とはいえウェルがまだ寝ているみたいなので食堂には行けない、と。どうしたものかと思ったが、仕方ないので部屋で料理しよう。上手くやれば怒られない筈だ。


 俺はアイテムバッグから蟹を出し、足の身を出したら麦飯と一緒に蓮に炊いてもらう。蟹を出した段階で蓮のテンションは急上昇、今は鼻歌を歌いながら【加熱】している。イデアには野菜多めの味噌汁を作ってもらう。


 俺は呪いコボルトと呪いウサギの肉をミンチにし、呪いの魔物の脂を足してハンバーグにしていく。つなぎに多少の全粒粉と卵を混ぜたら、成形してフライパンに乗せる。全員分を乗せ終わったら【加熱】を開始し、ゆっくりじっくり焼いていく。


 熱が通ったら裏返しにし、こちらもじっくり丁寧に焼いていく。【浄化】しながら焼いている為、肉の臭味は全く出ない。ある意味で普通の人間種には出来ない反則的な料理法だが、気にする必要は無いな。使える者は何でも使え、だ。


 焼けた後は皿に盛り、魚醤や灰持酒などを使ってソースを作って上から掛けていく。ちょうど蟹飯も炊けたみたいなので早速盛り付けていこう。………よし。それじゃあ、いただきます。



 「ん~~! やっぱり蟹は美味しいね! 何でこんなに美味しいんだろう? 分かんないけど本っ当に美味しい!! ハンバーグも美味しいけど、蟹の汁を吸い込んだご飯は最高!!」


 「うん、本当に美味しい。蟹って不思議だけど、出汁が沢山出てて、麦と米がそれを吸い込むと広がるんだよね。麦と米から蟹の風味と味がして、ハンバーグにも負けてない」


 「今日のは早く使わなきゃいけないコボルトとウサギの肉だからな。脂が足りないから足したが、いつもよりはサッパリしたハンバーグになってる。その影響もあるかな?」


 「でも、美味しいよ? これはこれで蓮は好き」


 「まあ、それならいいんだけど……イデアも大丈夫そうだな。ダリアとフヨウも食べてるっていうか、フヨウはもう終わったのか。相変わらず早いなあ」


 「………」



 和気藹々とした昼食も終わり、窓を開けて換気をしつつ部屋の中を【浄化】する。料理の匂いがしたら不自然だから、それを消す為にやっているのと、ウェルの分は先ほど子供達と2匹が分けて食べたからだ。


 ここでウェルが起きて気付くと揉め事の元だからな。それにしても、まだ寝てるって事はだ、相当<竜の神>に扱かれてると考えていいだろう。何だか嫌な予感もしない訳じゃないが、アイテムバッグの中身を確認しておこう。


 ………出してみて確認するが、やはり罪を暴く腕輪と聖人に洗脳する枷が入っていた。説明書が入っているが、前回の物と同じく【念力】というか意志の力で動かせるらしい。


 1つで精神の高速回復を促し、2つで意識を失いあらゆる事を喋る。3つで聖人へと洗脳され、4つで浄化の力を持った種族へと変貌。相変わらずだが、おっそろしい枷だ。前の星でも4つ全部は怖くて殆ど使わなかったんだよな。


 今回の星は呪いに塗れているし、ある程度の魔物を浄化能力を持つ者に変えておいた方が良いだろうか? 場合によってはアホの雄ドラゴンを変えておいた方が良いのかもしれん。それなら役に立つだろうし。


 まあ、兎にも角にもウェルが帰ってきてからだな。そう思うも、今のところウェルが帰ってくる感じはしないな。俺は暇潰しとして、この町を綺麗に【浄化】している。町の人に気付かれずに綺麗に【浄化】するという下らない遊びだ。


 アリシアが治めている町だし、綺麗にしておいても構わないだろう。そんな事を思いつつ綺麗にし、夕方近くになった頃にようやくウェルが起きた。目を開いたウェルは「ガバッ」と起き上がり、周囲をキョロキョロして安堵の溜息を吐く。


 気持ちは痛い程分かるぞ、相当扱かれたんだろう? 少しだけ飲んでみよう、で地獄を見るのが<神酒>だからな。とりあえずウェルに夕方だと説明し、食堂に夕食を食べに行く。大銅貨3枚を支払い夕食を注文すると、席に座り雑談を開始する。



 「本当に酷い目に遭った。<竜の神>からの戦闘訓練があまりにも大変でな。竜形態でのブレスの吐き方から尻尾の使い方、爪での薙ぎ払い方まで延々と扱かれたのだ。悪い事ではないのだが、自分の実力の低さも相まって地獄のようであった」


 「分かる、神様達は何て事もないように言うんだけど、最初から分からないこっちにとっては意味不明なんだよな。「こうするんだ」って言われるんだけど、10ある内の1も理解できないんで訳が分からないんだよ」


 「そう! 本当にそうなのだ! 何度も教えられて必死に学ぼうとして、やっと1が分かるのだ。あれ程までに理解が出来ないとは思わなんだ。挙句、理解できるまで何度もやらされる」



 うんうん。あの方々は当たり前に出来るんだけど、こっちは唯の凡人なんだ。本当にそこを理解してほしいんだよな。


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