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 昼食を終えて神水を補充したら出発。29層の転移紋の前で熊のきぐるみを着込み、35層まで一気に走って進む。今度の最奥は普通の荒地で、出てきたのは巨大な黒いミミズだった。とはいえ【浄化】するとあっさり動きを止めたが……。


 そのまま完全に【浄化】してしまい、直径1メートル、長さ10メートルほどのミミズを倒した。何でこんなラストだったのか良く分からないが、無事に転移の魔法陣が出現し、この場所が登録されたのを確認。


 ミミズの魔物は水分を抜いて中身を取り出し、皮だけを手に入れて残りは捨てる。そもそも中身はよく分からないものの、外側の皮は思っているよりも伸縮性が高く、使い勝手が良さそうなのが判明した。蓮が触って遊んでいた事で、だ。


 ゴムみたいに使えないかと思いつつ、ある程度の大きさに分けて収納したら脱出。ダンジョンの外に出たら夕方よりは早い時間だった。俺達は朝の事など気にせずに堂々と聖都へと戻る。そもそも俺達の道を塞いだ阿呆が悪いだけだからだ。


 聖都の前の列に並ぶと門番どもがザワついており、1人が走って聖都の奥へと行った。何かを報告にでも行ったのか? 俺達はそのまま並び続け、順番が来たら登録証を出した。門番達は遠巻きにしているだけだが、俺達は興味なし。


 俺達の登録証を確認していた奴は震えていたので、どうやらトラウマを受けたらしい。治してやる気はサラサラない、自業自得なので諦めろ。そう心の中で思いつつ、聖都に入った俺達は真っ直ぐ宿へと戻る。


 このまま宿へと戻れると思っていたが甘かった。遠巻きにされながらも兵士達に囲まれた。騎士じゃないところが気になるが、俺達を囲むという事はトラウマを植えつけられても仕方がないぞ? そう思い【幻死】を使おうとすると、遠くから走ってくるのを感知した。また、料理人か。



 「ハァ、ハァ、ハァ。ま、間に合った。あ、あのですね。王太子様とお姫様が、朝の事を話し合いたいとおっしゃってまして、私の店に来てもらえませんか? お願いします」


 「別に料理人の店に行くぐらいなら構わないんだが、いちいち面倒なのと話す気は無いんだがな。まあいい、相手がどう出てくるか見極めるくらいは構わんだろう。事と次第によっては殲滅するだけだ。俺達にとっては通過する国の1つでしかないんでな」



 料理人は俺達を先導する形で歩きだし、周りを兵士達が囲んだまま歩く。こいつら囲むって事の意味を理解しているのか? 未だこっちを力で押さえつけられるとでも思っているのかもしれないが、それが甘いという事を理解していないとはな。


 王侯貴族などとの争いは、とどのつまりマウンティングの応酬となる。結局は上だと示した方の勝ちだ。これは神界に居た時に散々【魔神】が教えてくれた事だが、とにかく上から押さえつければ勝ちとなる。奴等は強い力には素直だ。だから圧倒的な暴力で黙らせればいい。


 軍という強力な力で守られているから偉そうなのであって、それを剥がしていつでも殺せるぞと見せ付けてやれば連中は黙る。それでも喚けば、この世から消えると知っているからだ。自分達も同じ事をするんだからな。むしろ身近な事になる。


 料理人の店に着いたが誰も並んでいなかった。聞くと、どうやら今日は貸しきりで、俺達がダンジョンから戻ってくるのを待っていたらしい。何でそんな事をわざわざするのやら? と思いながら店に入る。


 すると見知った青年と女性、そして料理人についてきたという女の子が居た。つまりダンジョンの中で魔法を教えた3人組だ。それ以外にも居るが、誰だこいつら? ……まあいいか。誰であろうと手出ししてきたら、殺す。


 料理人に案内された席に座ると、俺達は料理人に話しかける。結局、俺達を連れて来た理由はなんだ?。



 「先ほどもお話した通り、王太子様とお姫様がお話があるそうで……とはいえ、王族の方々ですから……」


 「成る程、相手は待たせて当たり前か。相変わらず腐った汚物の見本みたいな連中だな。帝国の皇太子はそこまでじゃなかったぞ? 第二皇子や3人の皇女達もな。聖国の名の通りに腐った王族だ」


 「いや、名前は違うのでは?」


 「何を言ってるんだ? 自分達で”聖国”と名乗る厚顔無恥な国の王族だぞ。相当程度、己を律して正しく行動しなきゃならないのに、送ってきた騎士はポンコツだ。己らがどう見られるかという自覚すらない、頭が悪すぎるだろうよ」


 「は、はあ……私の立場では何も言えません。………ところで何をしているんですか?」


 「阿呆が来るまで時間が掛かりそうなんでな、俺達が無意味にダラダラと待ってやる義理は無い。なので腹を満たすだけだ」



 俺は土鍋に【浄化】した米と押し麦と神水を入れ、蓮に渡して後を任せる。とはいえテーブルが焦げても困るので、蟹の甲羅を加工して五徳を作り、それの上で炊いてもらう。イデアにも鍋と五徳を渡して味噌汁を作って貰い、俺は鍋でデスボーアの角煮を作る。


 俺の方は良い匂いをさせながら直ぐに終了したので、残る時間はサラダとマヨネーズ作りだ。テーブルの上で角煮の鍋の匂いを嗅いでいるダリアに落ち着くように言いつつ待っていると、入り口が開いて誰かが入ってきた。


 料理人達は立って挨拶しているものの、俺達は座ったまま。ちゃんと「お前達なぞ、眼中に無い」という態度を出す。遅れてやってきて、出迎えを受けるのが当たり前なんだろうが、俺達がそれをしてやる理由が無い。兵士達がこちらに悪意を向けてくるので潰すかどうか迷ってるくらいか。


 俺達がそのまま料理を続けていると、向こうから挨拶にやってきた。これもマウンティングの一つだ、向こうから挨拶をさせるっていうな。相変わらずだが、面倒臭い。



 「私はラミシール聖国の王太子、ヴォルド・デュー・ラミシールだ」


 「私はラミシール聖国の王女、フェレイラ・アドゥ・ラミシールです」


 「俺はアルドゥラム、このチームのリーダーをしている。人間だ」


 「私はウェルディランカ、この姿だがドラゴンだ」



 その瞬間、王太子と王女がビックリした。どうやら知らなかったらしい。……という事は、料理人達は俺達の事を伝えていない? それとも断片的に聞いただけか?。



 「私は蓮、土御門蓮。多分だけど白狼族」


 「ボクはイディアルマ。呪人族です」


 「ニャー」 「………」


 「ああ、うむ。………ドラゴンの方が居るとは聞いていないのだが、いったいどういう事なのだ?」


 「料理人。こいつらは何も理解せずに、俺達に喧嘩を売ってきたのか? どのみち喧嘩を売ってきた事に違いなどないが」


 「え、えーっとですね。魔法を教えてもらったので皆で練習をしていたんですが、それをあそこに居る片山君に目敏く見つけられましてね。それが王宮に報告されたようで、誰から教えてもらったと詰問されたので話さざるを得なかったんです」


 「は? おっさん、俺の所為にすんなよ! おっさんが喋ったなら、おっさんの所為だろうが!!」


 「いちいち大声を出すな。1つ1つ何があったか確認していかないと、真実なんて出てこないだろうが」


 「はあ? 真実なんて知らねえよ! 誰か知らねえけど、いきなり出てきて調子にの、ごぉっ!?!?!!?」



 鬱陶しいので身体強化で近付き、腹を突き上げた。その後は髪を掴んで何回もテーブルに顔を叩きつけてやる。



 「調子に乗ってるのはお前だ! クソガキが!!」



 何度も叩きつけた後に顔を引き上げてやると、鼻の骨が折れて、歯も何本か折れているうえに血だらけで気絶していた。俺はその顔を周りに見せつけながら、ハッキリと言う。



 「いちいち面倒な事をぬかすな。分かったな? 分からん奴は覚悟しておけ」



 そう言って、俺はバカの腹を膝で蹴り上げて無理矢理起こしてから、自分の席に戻った。


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